内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ヴェネズエラが国境封鎖
2016-12-13 Tue 15:36
 南米ヴェネズエラのマドゥロ大統領は、12日(現地時間。以下同)、13日に予定されている新紙幣の導入を前に、隣国コロンビアとの国境を72時間の間封鎖すると発表しました。というわけで、きょうはこの1枚です。(画像はクリックで拡大されます)

      ヴェネズエラ・航空(1930年)

 これは、1930年にヴェネズエラで発行された航空切手で、同国の地図が隣国との国境を含めてしっかり描かれています。

 現在のヴェネズエラ国家の領域は、スペイン統治時代の1777年に成立したヴェネズエラ総督領がベースになっています。その後、シモン・ボリヴァルの指導の下で1821年にスペインからの独立を達成し、一時期、現在のコロンビアパナマエクアドルとともに“大コロンビア”を形成しましたが、1830年に分離して独立国になりました。

 ちなみに、1830年の分離独立時、ヴェネズエラは東部国境に関しては、エキセボ川までのグアヤナ・エセキバの領有権を主張して英領ギアナと対立。その後、いったんはグアヤナ・エセキバの地を両国の中立地帯とすることで妥協が成立したものの、19世紀後半に金鉱が発見されたことで対立が再燃したため、1899年、米英露三国の調停により、係争地の大半は英領ギアナに属するものとされ、ヴェネズエラもこれを受け入れましたが、1966年にガイアナが英国から独立すると、ヴェネズエラは再びグアヤナ・エセキバの領有権を主張。現在にいたるまで対立が続いています。

 さて、ヴェネズエラとコロンビアの国境地帯は、1999-2013年のチェヴェス政権時代、しばしば緊張状態になっていました。
 
 すなわち、反米・社会主義路線を鮮明にしていたチャヴェス政権に対して、ヴェネズエラ国内の既存のエスタブリッシュメントは強く反発し、2002年にはCIAが関与するクーデター未遂事件も発生しました。

 米国をはじめとする西側諸国は武器禁輸措置によって、反米に舵を切ったチャヴェス政権を封じ込めようとしましたが、かえって、その穴を埋めるように、ロシア製を中心に、中国製、スウェーデン製の兵器がヴェネズエラへ大量に流入。具体的には、2006年のプーチン=チャヴェス会談の結果、ヴェネズエラはロシアのスホーイ30多用途戦闘機24機の購入契約を結び、陸軍の制式自動小銃をベルギーのFN FALからロシアのAK-103に変更。この結果、スホーイ戦闘機24機とヘリコプター53機も含め、2005-06年の間に両国間で交わされた兵器の売買契約は総額およそ30億ドルにものぼりました。

 ヴェネズエラが急激に軍備を増強させれば、当然のことながら、近隣諸国との軍事バランスは崩れ、地域の不安定化につながります。

 はたして、2008年、隣接する親米国家のコロンビアが国内の反政府左翼ゲリラ“コロンビア革命軍”討伐のため、エクアドルに対して越境攻撃を行い、両国関係が緊張すると、チャヴェス政権はコロンビアを非難し、コロンビア国境に軍を集結させ、“アンデス危機”と呼ばれる一触即発の状況が到来しました。

 このときは、米州機構の仲介により、コロンビアが謝罪することで事態は一応収拾されましたが、ヴェネズエラはロシア大統領のドミトリー・メドヴェージェフ(当時)をカラカスに招き、ロシアとの合同軍事演習を行い、コロンビアの背後にいる米国を牽制しています。

 また、2009年7月、コロンビアはコロンビア革命軍に対してヴェネズエラ政府がスウェーデン製の対戦車砲を転売したと公に指摘。これに対して、チャヴェスは即座に否定し、報復措置として、コロンビアとの外交関係凍結を発表しました。

 さらに、コロンビア革命軍は麻薬カルテルとも深いつながりがあるとされていますが、コロンビア政府は、2009年8月、麻薬組織対策のために駐留米軍の増強を計画していることを発表。その背景にはヴェネズエラを牽制する意図があるのは明白でしたから、チャヴェスはこれをヴェネズエラに対する“敵対行為”であるとして激昂。ロシア製の戦車を多数調達すると発表して対抗しています。

 実際に、同年8月14日、米・コロンビアの軍事同盟が発効すると、チャヴェスはこれに対して“宣戦布告”と猛反発し、コロンビアとの断交も辞さないとの姿勢を明らかにします。このとき、チャヴェスは、「コロンビアと米国はヴェネズエラ攻撃をたくらんでおり、両国政府が一緒になって世界を欺こうとしている」と主張しました。

 このように、反米左派の姿勢を鮮明にしていたチャヴェス政権でしたが、結果的に、財界との対立は経済の低迷を招いたほか、深刻な格差・貧困問題、特に治安の悪化を抜本的に解決することができないまま、2013年、チャヴェス本人は癌のためにより死亡。後継のニコラス・マドゥロ政権も、有効な打開策を講じることができず、ヴェネズエラ国内ではインフレが昂進し、深刻な経済危機が続いていました。

 急激にインフレが進む中、ヴェネズエラの原稿最高額紙幣の100ボリヴァルは、公定レートでも米ドル換算で15セント、市中の実勢交換レートでは2セントにしかならなくなったため、マドゥロ政権は、11日、72時間以内に現行の100ボリヴァル紙幣を撤廃して硬貨に入れ替えるとともに、500-2万ボリヴァルの新紙幣を発行すると発表。このため、100ボリヴァル紙幣が廃止される前に米ドルなどに交換すべく、ヴェネズエラ市民が国境を越えてコロンビアに殺到するという状況となっていました。

 今回の国境封鎖に関して、マドゥロ大統領は「マフィアがヴェネズエラの通貨をコロンビアに移動させている」と述べ、国境封鎖は「我が国の通貨を攻撃する犯罪への対抗措置」と主張しています。もっとも、仮に一部でマフィアが暗躍していたとしても、そもそも、突如、現行の最高額紙幣を撤廃しなければならない状況に追い込まれたということは、そのこと自体、現政権の経済失政が原因だったわけで、そのあたりの問題が根本的に解決されない限り、混乱はまだまだ続きそうです。


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