内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ロッキード事件と切手
2006-07-27 Thu 00:35
 1976年7月27日にロッキード事件で田中角栄が逮捕されてから30年だそうです。あの日、小学生だった僕は、母親に連れられて新潟に住んでいた伯父の家に遊びに行ったのですが、新潟駅で出迎えに来た伯父が「こっちは角さんの逮捕で朝から大変な騒ぎだよ」と興奮気味に話してくれたことを今でも鮮明に覚えています。

 さて、ロッキード事件を直接取り上げた切手というのはないのですが、ロッキード事件が産み落とした切手しては、こんなものがあるのでご紹介しておきましょう。(画像はクリックで拡大されます)

在位50年・馬車

 ロッキード事件当時の首相だった三木武夫は党内基盤が弱く、常に党内の非主流派による“三木おろし”の攻撃にさらされていました。このため、三木は反対派を抑え込むために衆議院を解散しようとしましたが、これには自民党内の反対論も強く、両者のにらみ合いが続いていました。ただし、1976年12月5日には、衆議院議員の任期が満了するため、どちらにせよ、年末には総選挙を行わなければならないという事情もありました。

 こうした中で、ロッキード事件で田中が逮捕されたことから、総選挙では自民党の金権体質が争点となることは必至で、自民党の議席は大幅に減ることが確実視されるようになります。

 このため、政府・与党としては、事件の総選挙への影響をいかに食い止めるかということが最重要課題となり、そのための手段として、急遽、7月に入り、1928年に即位の大礼が行われた11月10日にちなんで、11月10日に昭和天皇の在位五十年の記念式典を行うことを決定します。

 当時の野党は、いわゆる“革新勢力”が主流を占めており、彼らは天皇制に否定的な姿勢を明らかにしていました。ところが、“革新勢力”の支持者たちの中には、政府・自民党に対する批判ないしは不満から“革新勢力”に一票を投じてはいるものの、素朴な国民感情として、天皇や皇室に対しては親愛の情を持っているという人も少なくありませんでした。

 このため、在位50年の記念式典を大々的に祝い、天皇と共に日本社会が歩んできた激動の時代を回顧し、あわせて天皇の長寿を祝うことで、“革新勢力”の天皇制批判がいかに一般の国民感情からかけ離れているかを白日の下にさらすことは、自民党政府にとって、非常に魅力的な選挙対策だったというわけです。

 記念式典の実施が決定されると、国家のメディアとしての切手もその周知宣伝の一翼を担うこととなり、式典当日には二種類の記念切手とそれらを収めた小型シートが発行されました。今日ご紹介しているのは、そのうちの1種で、1928年の大礼の際に用いられた儀装馬車が大きく取り上げられています。

 さて、記念式典は予定通り、1976年11月10日、日本武道館で行われましたが、これに対して“革新勢力”は「戦後の三十年はともかく、戦前の暗黒時代二十年が同じ天皇の下にあったことを思うと、とても祝う気にはなれない」としていっせいに反発。特に、いわゆる過激派が式典の実力阻止を叫んでいたため、当日の会場周辺は、五百人の警官と装甲車が警護し、上空にはヘリコプターが飛び交うという物々しさだったということです。

 なお、この辺の事情については、昨年(2005年)刊行の拙著『皇室切手』で詳しくまとめてみましたので、ご興味をお持ちの方はご一読いただけると幸いです。
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