内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手に見るソウルと韓国:憲法裁判所
2017-01-07 Sat 11:08
 ご報告が遅くなりましたが、『東洋経済日報』2016年12月16日号が発行されました。僕の月一連載「切手に見るソウルと韓国」は、今回は、朴槿恵大統領の弾劾訴追が国会で可決された直後の号でしたので、この切手をご紹介しました。(画像はクリックで拡大されます)

      韓国・憲法裁判所1周年

 これは、1989年9月1日に発行された“憲法裁判所開設1周年”の記念切手で、『経国大典』(朝鮮王朝の法体系がまとめられた法典)をバックにした正義の女神像が取り上げられています。

 韓国の司法制度は三審制が採られており、日本の最高裁判所に相当する大法院(ソウル特別区瑞草区)の下、ソウル、光州、大邱、大田、釜山の5大都市に高等法院(日本の高等裁判所に相当)が、ソウル(4ヶ所)、釜山、大邱、仁川、光州、大田、蔚山、水原、議政府、春川、昌原、清州、全州、済州の各都市に地方法院(日本の地方裁判所に相当)が置かれているほか、家庭法院(日本の家庭裁判所に相当)も置かれています。

 これに対して、憲法裁判所は上述の通常の司法制度とは別に、1987年10月の憲法改正によって設置が決められました。

 現行の大韓民国憲法では、第6章(第111-113条)が憲法裁判所についての規定となっています。

 それによると、憲法裁判所は、①法院の提請による法律の違憲性の審判、②弾劾の審判、③政党の解散の審判、④国家機関相互間、国家機関と地方自治団体間又は地方自治団体相互間の権限争議に関する審判、⑤法律が定める憲法訴願に関する審判、を管轄する、とされています。(第111条1)

 裁判官は、法官の資格を有する9人で構成され、大統領が任命します(第111条2)が、このうちの3人は国会が選出した者を、また別の3人は大法院長(日本の最高裁長官に相当)が指名した者を、大統領は任命しなければいけないことになっている(第111条3)ほか、憲法裁判所の長は国会が同意しなければ大統領が任命できない(第111条4)とされています。

 ちなみに、ここでいう“法官”の資格とは、15年以上の経験のある40歳以上の者のうち、①裁判官、検察官、あるいは弁護士である者、②弁護士資格を有し政府または公定機関で法律問題に従事した者、③弁護士資格を有し大学の助教授以上の地位にあった者です。

 また、憲法裁判所の裁判官の任期は6年で再任は可能(第112条1)で、弾劾または禁錮以上の刑が確定しない限り罷免されない(第112条3)が、政党に加入し、又は政治に関与することはできません。(第112条2)

 さらに、憲法裁判所で、法律の違憲認定、弾劾、政党解散の決定、又は憲法訴願に関する認容決定をするときは、裁判官6人以上の賛成が必要(第113条1)とされており、そのために、憲法裁判所は、法律に抵触しない範囲内で、審判に関する手続き、内部規律及び事務処理に関する規則を制定することができる(第113条2)とされています。

 この規定からもわかるように、憲法裁判所は、理念としては、国民の権利・自由を擁護し、国家権力の濫用を牽制する独立の機関、端的に言えば、大統領の暴走を食い止めるブレーキ役という性質の機関という位置づけになっています。その背景には、長年、軍事独裁政権下で国民の権利と自由が制限されてきたという事情があるのはいうまでもありません。

 実際、憲法裁判所が発足する以前も、3権分立の建前から、大法院には違憲立法審査権が認められていましたが、実際に大法院が違憲判決を下した例は10件程度でした。

 ところが、憲法裁判所の設置後は違憲判決が急増し、2010年までに違憲判断は350件以上にも上っています。なかには、拘置所において腰板しかないトイレは違憲との判決が出るなど、我々の感覚からすると首をかしげざるを得ないようなものもありました。
 
 さらに、憲法の上に“国民情緒法(韓国人の国民情緒に合うという条件さえ満たせば、行政・立法・司法は実定法に拘束されない判断・判決を出せるという概念)”が存在していると揶揄される韓国社会では、憲法裁判所が司法の範囲を大きく超えて“(通常の近代国家の感覚からすると)暴走”し、政治的・外交的にも大きな影響を与えるケースもみられます。2011年に憲法裁判所が出した、韓国政府が“元慰安婦”と原爆被害者らの賠償請求権問題を解決するために具体的な努力をつくさないのは憲法に反するとの決定などは、その典型的な事例と言ってよいでしょう。

 いずれにせよ、今回ご紹介の切手に描かれている正義の女神像は、先入観にとらわれず万人に平等に法を適用するものとして目隠しや目をつぶった姿で表現されていますが、その目隠しが、歴史的事実や国際条約の常識を無視し、“国民情緒法”におもねるためのものになっているとしたら、なんとも困った話ですな。


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