内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手歳時記:ホタルイカ
2017-03-07 Tue 10:47
 ご報告が遅くなりましたが、公益財団法人・通信文化協会の雑誌『通信文化』2017年3月号ができあがりました。僕の連載「切手歳時記」は、今回はこの1点を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      ホタルイカ

 これは、1966年7月1日に発行されたホタルイカの35円切手(普通切手)です。

 ことしも、3月1日、富山湾のホタルイカ漁が解禁になりました。

 ホタルイカの水揚量が日本で最も多いのは浜坂漁港をはじめとする兵庫県ですが(富山県は第2位)、富山湾のものは身が大きく、ミソも詰まっていて美味なので、人気があります。

 富山湾の常願寺川の河口左岸から魚津港までの15 km、満潮時の沖合1260 m までの海域では、毎年春の宵、 ホタルイカの雌が産卵のため深海200-600 m から浮上して浅瀬に密集し、翌未明には沖へ帰っていきます。これが、国の特別天然記念物に指定されている“ホタルイカ群遊海面”です。ちなみに、天然記念物に指定されているのは、ホタルイカそのものはではなく、ホタルイカのいる海面なので、ホタルイカを食べることはなんら問題ありません。

 富山湾のホタルイカ漁は、こうしてやってきたホタルイカを、夜間、定置網で獲るため、網にかかるのはほとんどが雌になります。ちなみに、ホタルイカは雄よりも雌が大きく、味も雌が美味。また、定置網漁だと、小さく繊細なホタルイカの身が他の魚に傷つけられることも少ないというメリットがあります。

 一方、他の地域のホタルイカ漁は、日中、底引き網でごっそり獲るので、雌雄が半々になるだけでなく、他の魚が網に入ってホタルイカの身が傷むことも少なくありません。

 富山産のホタルイカが人気を集めているのは、こうした事情によるものです。

 ホタルイカはすぐに傷んでしまうため、産地以外でも春の味覚として楽しめるようになったのは、冷蔵・運搬技術が発達した近年のことです。このため、かつてのホタルイカは肥料として使われることも多く、富山地方では、このイカを松の肥料として使っていたため“マツイカ”と呼んでいたとのだとか。ちなみに、ホタルイカとの名前は、1905年、生物学者の渡瀬庄三郎が命名したもので、学名は渡瀬にちなんでWatasenia scintillansといいます。

 僕が子供の頃は、東京でホタルイカというと、沖漬けの瓶詰くらいしか手に入りませんでした(少なくとも、わが家ではそうでした)から、大学生になって、居酒屋で初めてホタルイカの酢味噌和えを食べたときは、今回ご紹介の切手の印象とだいぶ違うことに、ちょっと面食らった記憶があります。切手のイカは、いかにもイカらしくスリムな体型で、画面の印象からも、スルメイカ程度の大きさがあるような雰囲気ですが、実際に出てきたイカはかなり小ぶりで、ぷっくらと丸みを帯びた胴が印象的でしたから…。いまから思うと、あるいは、切手のイカは富山湾で獲れた雌ではなく、他の地域で獲れた雄がモデルになっていたのかもしれません。

 切手ではわかりづらいが、ホタルイカの触手の先には、それぞれ、3個の発光器がついていて、なにかに触ると光る仕組になっています。また、体表の海底側(腹側)にも細かい発光器がありますが、これは海底側にいる敵に対して光る姿を見せ、海面からの光に溶け込んで敵の目をくらますためのものです。

 海中のホタルイカは月の光を目印に自分の位置を把握しているらしく、月明かりのない新月の夜は、方向を見失って、棲家である深海へ戻ることができなくなります。このため、産卵を終えて力尽きた雌は光を放ったまま砂浜に打ち上げられ、“ホタルイカの身投げ”と呼ばれる光景が見られます。

 もっとも、ホタルイカを肴にちょっと一献のつもりが、ついつい杯を重ねすぎ、風呂も入らずテカリ顔のまま、自宅の玄関先でひっくり返っている僕の場合は、さしずめ“ホタルイカ身投げ”ということになりましょうか。


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