内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ラオス通貨を使った詐欺
2017-03-11 Sat 16:41
 「ラオスに融資すれば金利によって利益が得られる」などともちかけ、80代女性にラオスの紙幣300万キープ相当(日本円で4万円弱)を渡して、日本円150万円をだまし取っていた男4人が、きのう(10日)、大阪府警に逮捕されました。男らは、同様の手口で、京都府や兵庫県に住む60-90代の男女約100人から計約1億2000万円をだまし取ったと見られています。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      ラオス・改値加刷(2014)

 これは、2014年7月22日にラオスで発行された1万1000キープ切手で、1984年に発行された国章図案の1キープ切手に新額面を加刷しています。元の額面の1万倍以上の高額加刷ですが、日本円に換算すると146円前後。2013年(今回ご紹介の切手が発行される前年)に僕がラオスを訪れた時の物価では、ミネラルウォーターのペットボトルが2000キープでしたから、1万1000キープ(日本円で146円前後)だと5本半。物価感覚からすると、日本では5-600円といった感じでしょうか。

 さて、旧仏領インドシナのうち、現在のラオスの地では、第2次大戦末期の1945年3月、日本軍によっていわゆる明号作戦が発動され、同年4月、日本の影響下でシーサワーンウォン王がラオス王国の独立を宣言しました。

 ところが、第二次大戦後、インドシナ支配の復活をもくろむフランスが再進駐してくると、シーサワーン・ウォンは独立を撤回。これに不満を持つ民族主義者は、1945年10月、ラオ・イサラ(自由ラオス)を結成し、従来の仏印ピアストルに代わる新通貨として“キープ”を導入し、自らの支配地域で流通させました。

 これに対して、フランスはシーサワーン・ウォンに内政の自治権を与えて懐柔するとともに、ラオ・イサラを攻撃。このため、ラオ・イサラの指導者たちはタイに亡命政府を樹立し、ラオスの地ではふたたび、仏印ピアストルが使用されるようになります。

 1946年の第一次インドシナ戦争勃発を経て、1949年にラオスはフランス連合内のラオス王国として名目上独立し、1953年10月22日に完全独立を達成します。これに先立ち、1952年、カンボジア・ラオス・ベトナム国立発券局は独立に向けた移行措置として、仏印ピアストルとキープの両通貨を発行しました。両通貨は等価で、ラオス王国の独立後も1957年まで両通貨併記の紙幣が使われていました。その後、1957年にラオス王国は両通貨併記の紙幣を廃止し、新通貨として“王国キープ(ヴィエンチャン・キープとも)”を導入。以後、1975年まで、王国キープがラオスの法定通貨となります。

 1975年12月、王制が廃止され、ラオス人民民主共和国が成立した後も、当初は王国キープが使用されていましたが、内戦中のインフレに対応すべく、1976年6月13日、新通貨として“解放キープ(パテート・ラーオ・キープとも)”が導入されました。新旧通貨の交換レートは1解放キープ=20王国キープです。

 しかし、その後も社会的な混乱に伴い急激なインフレが進行し続けたため、1979年12月16日に100分の1のデノミを伴う通貨改革が実施され、現行通貨としてのPDRキープ(ラオス人民民主主義共和国 キープ、国立銀行キープとも)が導入され、現在に至っています。

 ちなみに、1979年の現行キープ導入後、1980年のラオスのインフレ率は188.82%(同時期の日本は7.81%)で、その後も20世紀中はおおむね2ケタの高インフレ率を記録していましたが(特に、1985年は114.70%、1999年は128.41%と3ケタを記録しています)、2005年以降のインフレ率はおおむね5-7%程度に収まっています。

 今回ご紹介の切手が発行された2014年のインフレ率は5.50%でしたから、この切手も、急激なインフレに対応するためというよりは、純粋に、郵便局の在庫不足を補うため、インフレで使い道がなくなり、大量に余っていた低額切手を持ち出して加刷したものと思われます。なお、加刷には“2014年3月5日”の日付が表示されていますが、これが何を意味するのかは調べきれませんでした。

 当初、改値加刷は機械で印刷されることも検討されましたが、現場スタッフの間では手押し加刷の方が望ましいという声が強かったため(おそらく、印刷所からの大量の横流しを恐れたものと思われます)、1枚ずつ、手押しの印が押されました。ちなみに、手押し加刷に要した経費は、加刷用の印顆の製作費や人件費など、米ドル換算で580ドルでした。また、加刷に使用された台切手の額面合計は米ドル換算で 41.13でしたが、加刷切手の額面合計は28万6675.80ドルと大幅に上昇しました。

 なお、加刷切手の製造は、2014年9月4日に終了し、それにあわせて、ラオス当局は、加刷に用いた印顆を公開の場で焼却するセレモニーを行い、以後、新たな加刷切手の製造はないことを国民の前でアピールしています。


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