内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手に見るソウルと韓国:サムスン創業者・李秉喆
2017-03-28 Tue 15:36
 ご報告が遅くなりましたが、『東洋経済日報』2016年3月10日号が発行されました。僕の月一連載「切手に見るソウルと韓国」は、今回は、韓国最大の財閥、サムスン・グループの事実上のトップ、サムスン電子の李在鎔副会長が逮捕・起訴され、司令塔としてグループ経営を統括してきた“未来戦略室”が解体されて間もない時期の号でしたので、この切手をご紹介しました。(画像はクリックで拡大されます)

      韓国・李秉喆

 これは、2015年8月26日に韓国で発行された“現代韓国の人物”の切手のうち、サムスン・グループの創業者、李秉喆の肖像が取り上げられています。

 李秉喆は、大韓帝国末期の1910年2月12日、慶尚南道宜寧郡正谷面でコメ千石の農地を所有する大地主、李纉雨の二男二女の末っ子として生まれました。

 1928年10月、18歳で渡日し、翌1929年に早稲田大学専門部政経科に入学したものの、1931年9月、脚気を患って帰郷。その後、1934年10月、父親から事業資金として300石分の土地を譲り受けました。これを元手に、1936年3月、李は、鄭鉉庸、朴正源と3人で、日本向け米国の輸出港だった馬山に協同精米所を設立。3人は1万ウォンずつ投資し、不足分は朝鮮殖産銀行馬山支店からの借り入れで賄ったそうです。

 さらに、同年8月、李は日本人経営の日出自動車会社を買収し、新たに購入した10台のトラックとあわせて計20台のトラックで運送業を開始。また、朝鮮殖産銀行馬山支店の融資で土地も買収しています。

 ところが、翌1937年、いわゆる日中戦争(支那事変)が勃発し、軍需産業以外への銀行の一般貸出が中断されたことに加え、土地の価格も急落したことから、李は資金難に陥ります。このため、、彼は土地を売却するとともに、精米所と自動車会社を清算せざるを得なくなりました。

 そこで、李は再起を期して、38年3月、資本金3万ウォンで大邱に“三星商会”を設立。同商会は、日本の鉄道網を使って朝鮮の果物や乾魚を満洲と北京に輸出する貿易会社で、これが現在のサムスン・グループの原点とされています。

 三星商会が大きな利益を上げたことから、1939年、李は朝鮮醸造会社を買収し、醸造業にも進出。しかし、1941年末に太平洋戦争が勃発し、酒類は朝鮮総督府による統制の対象となったため、日本統治時代には朝鮮醸造が継続的に利益を上げることはありませんでした。

 解放後の1947年5月、李は家族とともにソウルに移り、翌1948年11月、三星物産公司を設立。同社は、香港、シンガポールなど向けイカ・寒天の輸出と綿糸の輸入から始めて取扱品目を拡大し、米国との貿易にも手を広げ、大きな利益を上げました。

 その後、1950年に朝鮮戦争が勃発すると、ソウルは戦場となり、三星物産公司は壊滅的な打撃を受けましたが、李は大邱の朝鮮醸造に残されていた余剰資金を投じて、1951年1月、釜山に三星物産を設立。砂糖、肥料、紙、ウール、ナイロン、アルミ、医薬品を輸入し、日本と東南アジアに屑鉄、イカ、コメを輸出し、そこから得られた資金を元に、1953年7月の休戦以降、商業資本から産業資本への転換も成功しました。

 その先駆けとして、休戦直後の1953年8月、李は第一精糖工業を設立(砂糖の生産開始は同年11月)し、1954年9月には第一毛織工業を設立して服地の生産を開始。両社は当時の花形産業を代表する企業として、休戦後の復興を牽引し、サムソン財閥の基盤を固めていくことになりました。

 さて、李在鎔副会長の逮捕・起訴について、検察側の見立ては以下の通りです。

 すなわち、グループ内企業の第一毛織工業の大株主だった副会長は、サムスン電子株を多く保有するサムスン物産と第一毛織の合併を進めることでグループ内での経営支配を強化しようとしたものの、サムスン物産の株主である米ヘッジファンドの強硬な反対にあいました。そこで、グループとして、崔順実の財団に255億ウォンの資金を拠出し、崔の働きかけを受けた大統領府がサムソン物産の大株主だった国民年金公団に対して影響力を行使。その結果、年金公団が合併に賛成したため、2015年7月、サムスン物産と第一毛織の合併が成立したことで、副会長の贈収賄事件が成立するというものです。

 上述のように、サムスン物産と第一毛織は、いずれも、グループの創業者、李秉喆が設立した企業ですが、今回ご紹介の切手が、両社の合併とほぼ時を同じくして2015年8月26日に発行されたというのも、今にして思えば、何かの因縁だったのかもしれません。
      

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