内藤陽介 Yosuke NAITO
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 世界の国々:パナマ
2017-03-31 Fri 22:46
 ご報告が遅くなりましたが、アシェット・コレクションズ・ジャパンの週刊『世界の切手コレクション』2017年3月29日号が発行されました。僕が担当したメイン特集「世界の国々」のコーナーは、今回はパナマの特集(2回目)です。その記事の中から、この1点をご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)

      パナマ・反麻薬キャンペーン

 これは、1988年にパナマで発行された反麻薬キャンペーンの宣伝切手です。

 1968年、パナマではオマル・トリホスが軍事クーデターを起こして権力を掌握。その際、パナマ国家警備隊(国軍)の中尉だった マヌエル・アントニオ・ノリエガ・モレノ(以下、ノリエガ)は、トリホスを支援して反トリホス派を制圧し、その論功で1969年には一挙に中佐にまで昇進。諜報機関G2の責任者を務め、CIAがG2の訓練を行なっていました。ちなみに、当時、CIA長官としてパナマに関わっていたのが、後に大統領になるジョージ・ブッシュ(父)で、ノリエガはCIAから年間11万ドルを受け取り、各地のパナマ大使館から得た情報をCIAに流していました。

 一方、トリホスは1972年に新憲法を制定して独裁体制を構築。以後、ペルーのベラスコに影響を受けた左派民族主義の色彩が強い政策を打ち出し、パナマ運河地帯の主権を回復すべく、キューバのカストロ政権にも接近するなどして米国に揺さぶりをかけるとともに、1973年の国連安全保障理事会では、パナマ運河の主権はパナマにあることを確認させ、パナマの主権を尊重した新条約の成立を勧告する決議案を提案させました。この決議案は米国の拒否権で否決されましたが、1977年、パナマは米国と運河返還を約束する条約の締結に成功します。

 反米自主路線を採るトリホスに対して、アメリカが強く反発する中で、1981年7月31日、トリホスを乗せた飛行機が離陸後10分で墜落事故を起こし、トリホスは死亡。事故原因は現在なお不明ですが、米国の意を受けて、ノリエガが仕組んだものとみるパナマ国民は多いようです。

 トリホスの死後、国家警備隊のフロレンシオ・フローレス・アギラール大佐が後継者となりましたが、1982年3月3日、ルベン・ダリオ・パレーデス大佐がクーデターを起こして実権を掌握。ノリエガは、パレーデスの下で国家防衛軍(国家警備隊から改組)の参謀総長に就任します。しかし、1983年8月、パレーデスを追い落として軍内を掌握し、最高権力者にのし上がり、独裁体制を構築しました。

 1984年、パナマでは16年ぶりに直接選挙による大統領選挙が行われ、トリホスのクーデターで失脚した元大統領、アルヌルフォ・アリアスが実際には最多の得票を得たものの、ノリエガは選挙結果を操作し、親米派エコノミストのニコラス・アルディト・バルレッタが当選。さらに、1985年9月には、ノリエガ批判の急先鋒だったウーゴ・スパダフォラ元厚生次官が誘拐され、コスタリカとの国境地帯で虐殺されました。さすがにスパダフォラ殺害事件を許容できなかったバルレッタは大統領を辞任しましたが、反共を優先した米国はノリエガの専横を黙認していました。

 ところで、米国との関係が良好だった時代、ノリエガは米国の麻薬対策への“協力”が評価され、1978年から1987年まで、アメリカ麻薬取締局は彼に感謝状を送っていました。ノリエガによる麻薬密輸疑惑が浮上した後も、ノリエガの意を汲んだパナマ政府はこれを否定し、1988年には今回ご紹介のような“反麻薬キャンペーン”の宣伝切手を発行しています。

 しかし、1986年、ノリエガが米国への麻薬の輸出とマネーロンダリングに関与しているとの疑惑が浮上。さらに、1987年6月には元国家防衛軍参謀総長のトリホス・エレーラが、1984年の大統領選挙における不正工作、スパダフォラ殺害、麻薬密売への関与でノリエガを告発したのを機に、ノリエガ退陣・民主化運動が発生しました。これに対して、パナマ政府は、非常事態を宣言し、反政府系メディアを閉鎖するなど民主化運動を抑圧したものの、最終的に、ノリエガもパナマから排除されることになります。

 さて、『世界の切手コレクション』3月29日号の「世界の国々」では、パナマの独裁者、ノリエガについて扱った長文コラムに加え、パナマ運河鉄道、コイバ国立公園、サン・ロレンソ要塞、パナマ初の女性大統領となったミレーヤ・モスコソの切手などもご紹介しております。機会がありましたら、ぜひ、書店などで実物を手に取ってご覧いただけると幸いです。

 なお、 「世界の国々」の僕の担当回ですが、今回のパナマの次は、29日に発売された4月5日号でのガイアナの特集(2回目)になります。こちらについては、発行日の5日以降、このブログでもご紹介する予定です。     


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