内藤陽介 Yosuke NAITO
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 太陽節
2017-04-15 Sat 10:29
 きょう(15日)は、1912年4月15日に金日成が生まれたことにちなんで、北朝鮮では“太陽節”の祝日です。特に今年は、朝鮮半島情勢が緊迫の度合いを強める中で、北朝鮮が何らかの対外的なアクションを起こすのではないかとの観測もあり、“太陽節”という単語が一般のメディアでも使われているほどですので、ストレートにこの切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      北朝鮮・太陽節

 これは、1998年に北朝鮮が発行した“太陽節”の記念切手です。この時発行された記念切手は8種セットで、いずれも、太陽をイメージした円形の金日成切手(年代ごとの異なる肖像が入っています)を中央に配し、シートの余白には切手の肖像の年代に対応した写真などを入れたスタイルになっています。今回ご紹介の切手は、その最後にあたるもので、晩年の金日成の肖像と“永世”をイメージした花園が組み合わされています。

 さて、(北朝鮮国家によると)”民族最大の祝日”としての太陽節は、金日成の没後3周年にあたる1997年7月8日、朝鮮労働党中央委員会、同中央軍事委員会、朝鮮民主主義人民共和国国防委員会、同中央人民委員会、同政務院の連名による決定書「偉大なる首領・金日成同志の革命生涯と不滅の業績を末永く輝かせるために」により、彼の生まれた1912年を元年とする“主体年号”の使用とともに決定されました。

 金日成はソ連占領下の北朝鮮で権力を掌握し、早くも、1946年には肖像入りの切手も発行されていますが、彼の誕生日が国家的規模で祝われるようになったのは、ソ連派・延安派の粛清を通じて彼が独裁的権力を掌握した1960年代以降のことで、切手としては、1962年に発行された“金日成元帥誕生50周年”の記念切手が最初の事例となります。

 その後、しばらく金日成誕生日の切手は発行されませんでしたが、1968年、突如、彼の誕生日に際して彼の肖像を描く切手と彼の幼年時代を題材とする切手が発行されます。これは、中国の文化大革命での金日成批判に反応した北朝鮮当局が、対抗措置として金日成の神格化を進めたことの一環として行われたものと推測されます。以後、1977年まで、原則として毎年4月15日には“金日成”に関する記念切手が発行されるようになりましたが、これらの記念切手は、いずれも、実質的には彼の誕生日を記念する切手であるものの、形式的には“金日成誕生日”ではなく、一応、別の題目が付けられました。ちなみに、金日成の誕生日が“全民族最大の祝日”として正式に決定されるのは、1974年のことでした。

 1978年から1981年までは、北朝鮮は金日成の誕生日に金日成関連の切手を発行していません。この時期は、党大会の開催が1980年10月までずれ込むなど、北朝鮮の経済不振は深刻さを増しており、金日成誕生日の記念行事も規模が縮小されていたため、それに伴い、記念切手の発行も見送られていたのでしょう。

 しかし、1980年の党大会で金日成の後継者としての地位を確保した金正日が、1982年の金日成古希記念事業を積極的に推進するようになると、1982年に金日成古希の記念切手が発行されます。そして、1984年以降、毎年4月15日には“金日成誕生日”の記念切手が発行されるようになりました。

 ちなみに、1960年代末から1970年代にかけて金日成の誕生日に発行されていた切手の場合、金日成の生涯やその事跡が題材として取り上げられる場合が多かったのですが、1980年代以降の誕生日記念切手は、万景台の彼の生家や発行当時の彼の肖像を取り上げたものが主流となっています。これは、前者が、純粋に金日成個人崇拝を強化する目的で発行されていたのに対して、後者は、金日成神格化の余徳により金正日の権威を強化することに力点が置かれていたことによるものでしょう。

 なお、1994年7月、金日成は亡くなりますが、彼の死後もその誕生日には記念切手が発行されつづけ、1997年7月、「太陽節」が制定されたことで、今回ご紹介の切手を皮切りに、1998年以降は“太陽節”の記念切手が毎年発行されています。

 ちなみに、金日成と北朝鮮国家の成立事情については、先日、重版出来となったばかりの拙著『朝鮮戦争』でも詳しくご説明しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。


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 日本からの解放と、それに連なる朝鮮戦争の苦難の道のりを知らずして、隣国との関係改善はあり得ない。ハングルに訳された韓国現代史の著作もある著者が、日本の敗戦と朝鮮戦争の勃発から休戦までの経緯をポスタルメディア(郵便資料)という独自の切り口から詳細に解説。解放後も日本統治時代の切手や葉書が使われた郵便事情の実態、軍事郵便、北朝鮮のトホホ切手、記念切手発行の裏事情などがむしろ雄弁に歴史を物語る。退屈な通史より面白く、わかりやすい内容でありながら、朝鮮戦争の基本図書ともなりうる充実の内容。

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