内藤陽介 Yosuke NAITO
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 満洲帝国ビジュアル大全
2017-04-16 Sun 14:28
 ご報告が遅くなりましたが、洋泉社から『満洲帝国ビジュアル大全』(辻田真佐憲監修)が刊行されました。僕も、同書には「切手に見る『五族協和』の理想」と題する文章を寄稿していますので、きょうは、その中から、この切手をご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)

      満洲国・建国10周年(五族協和)

 これは、1942年9月15日、新京郊外の南嶺総合競技場での建国十周年記念式典に合わせて、満洲国が発行した“慶祝建国十周年”の記念切手のうち、“五族の少女”を題材とした一枚です。

 今回ご紹介の切手は、満洲国が建国の理念として知られる“五族協和”を視覚化したものとして有名な岡田三郎助の「民族協和図」が元になっています。

 「民族協和図」は、1936年11月、満洲国の国務院庁舎の完成にあわせて作成されたもので、大きさ200号の大作。新京の国務院庁舎の正面玄関を入って正面の二階に向かう階段の踊り場の壁面に嵌め込まれていました。「慶祝建国十周年」の記念切手では、壁画の右側の部分が「農夫と漁夫」として三分切手に、中央からやや左側にかけての部分が「五族の少女」として今回ご紹介の切手に取り上げられています。ただし、どちらもオリジナルの作品をそのまま忠実に再現したわけではなく、3分切手は李平和が模写したうえで農夫と漁夫の服装の一部を修正しており、6分切手も山下武夫が模写したうえで蒙古女性の服装部分にも若干の修正を施しています。

 満洲国の建国の理念とされる“五族協和”は、1912年に中華民国が建国を宣言した際に、中国国内の主要五民族である漢族・満州族・蒙古族・回族(西域のイスラム系民族)・チベット族が協同して新国家の建設に当たるという意味で用いた“五族共和”に倣い、そこから回族とチベット族を外して、代わりに日本民族と朝鮮族を入れ、新国家建設の理念として掲げたものです。

 もっとも、満洲国内の五族が実際に平等の待遇に置かれていたわけではなく、明らかに、日本人が優先されていました。

 たとえば、満洲国の国語は中国語(北京語)・モンゴル語・日本語の3言語でしたが、このうち第一国語の地位を占めたのは、人口の圧倒的多数を占めていた漢族の中国語ではなく、人口の5%未満に過ぎない日本人の言語、日本語でした。こうした状況を反映して、たとえば、1941年5月2日、葉書の下部に各種の標語を入れた葉書が発行された際にも、その標語の言語構成は、中文16種類、和文12種類の計28種類となっており、国語の一角を占めていたはずのモンゴル語のものは発行されていません。

 ちなみに、満洲国が発行した全159種の切手のうち、モンゴル語の表示がある切手は、1940年9月10日に「臨時国勢調査」の周知宣伝のために発行された4分切手のみで、“五族”を構成する満州族の満洲語や、朝鮮人の朝鮮語に至っては、満洲国の切手に表示されることは一度もありませんでした。

 なお、満洲国とその切手については、拙著『満洲切手』でもいろいろと分析しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。
 

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 日本からの解放と、それに連なる朝鮮戦争の苦難の道のりを知らずして、隣国との関係改善はあり得ない。ハングルに訳された韓国現代史の著作もある著者が、日本の敗戦と朝鮮戦争の勃発から休戦までの経緯をポスタルメディア(郵便資料)という独自の切り口から詳細に解説。解放後も日本統治時代の切手や葉書が使われた郵便事情の実態、軍事郵便、北朝鮮のトホホ切手、記念切手発行の裏事情などがむしろ雄弁に歴史を物語る。退屈な通史より面白く、わかりやすい内容でありながら、朝鮮戦争の基本図書ともなりうる充実の内容。

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