内藤陽介 Yosuke NAITO
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 朝鮮人民軍創建の日について
2017-04-25 Tue 08:01
 北朝鮮では、きょう(25日)、“朝鮮人民軍創建85周年”ということで、各種の記念行事が予定されているそうです。というわけで、きょうはこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      北朝鮮・朝鮮人民軍創建6周年記念絵葉書  北朝鮮・朝鮮人民軍創建6周年記念絵葉書裏面

 これは、1954年に北朝鮮で発行された“朝鮮人民軍創建6周年記念”の絵葉書です。チェコスロヴァキア宛の書留実逓便なので、裏面の画像も隣に貼っておきました。

 北朝鮮における軍事組織は、解放直後の1945年10月、ソ連占領軍による旧日本軍の武装解除を受け、2000名からなる“保安隊(隊長は金日成)”が創設されたのが最初です。その後、同年11月、占領下の地域行政機関として北朝鮮五道行政局が設置されると、その一部局として「保安局」が設置されましたが、これに先立ち、10月には早くも新義州で航空隊が創設されています。

 さらに、1946年1月には、五道行政局の傘下に鉄道施設の保護を目的とした鉄道保安隊(同年7月、鉄道警備隊に改編)が組織されたほか、同年7月には水上保安隊が、翌8月には海岸警備隊が、それぞれ組織されました。これらが、後の朝鮮人民軍の母体となります。

 一方、1946年2月には幹部養成のための平壌学院(1945年11月創立説もあり。1949年に第2軍官学校と改称)が、6月には保安訓練所が、7月には軍事指揮官を養成するための中央保安幹部学校(1949年に第1軍官学校と改称)が、それぞれ創設され、政府・軍隊の正式発足前に軍幹部の養成も開始されました。

 さらに、解放1周年にあたる1946年8月には、実質的な軍司令部として保安幹部訓練大隊部が創設されるとともに、北朝鮮労働党の創立にあわせて「民族軍隊組織と義務的軍事徴兵制を実施すること」が確認されました。

 1947年に入ると、ソ連からの軍事援助が本格的に到着するようになり、5月には全将兵に階級章が付与軍されるとともに、保安幹部訓練大隊部も人民集団軍に改編されます。そして、1948年2月4日、北朝鮮人民委員会の下に民族保衛局が設置されると、これを受けて同月8日、人民集団軍は“朝鮮人民軍”に改称され、同年9月の朝鮮民主主義人民共和国の正式な成立以前に“国軍”が誕生しました。

 こうした経緯から、朝鮮人民軍の創立記念日は、ながらく、(1948年)2月8日とされ、節目の年には記念切手・絵葉書などが発行されてきました。今回ご紹介の官製絵葉書もその一例で、1948年を起点にしていますから、発行年の1954年は朝鮮人民軍の6周年という勘定になります。

 ところが、その後、金日成から金正日への権力世襲の過程で、満洲での金日成の抗日武装闘争の経歴が誇張して宣伝されるようになると、1978年以降、朝鮮人民軍のルーツは“朝鮮人民革命軍”(金日成の抗日遊撃隊)に求められるようになり、建軍記念日も、本来の1948年2月8日から、朝鮮人民革命軍が結成された(と北朝鮮当局が主張している)1932年4月25日に変更されました。北朝鮮側が、“朝鮮人民軍創建85周年”と主張しているのはこのためです。ただし、1932年に朝鮮人民革命軍が創建されたというのは、北朝鮮当局がそう主張しているだけであって、これを歴史的事実として裏付けるための、信頼に値する資料は報告されていません。

 まぁ、北朝鮮当局が史実を捏造したプロパガンダにより、自らの体制維持を図ろうとするのは勝手ですが、日本のメディアなどがそれを鵜呑みにして「朝鮮人民軍創建85周年の25日、北朝鮮では…云々」と報じてしまうのは、結果的に、彼らのそうした宣伝工作に加担していることになるわけで、やはり問題ではないでしょうかね、少なくとも、「北朝鮮当局の主張によれば、朝鮮人民軍創建85周年とされる25日…」というような、留保をつけた表現にした方が良いのではないかと思います。

 なお、このあたりの事情につきましては、拙著『朝鮮戦争』でもいろいろとご説明しておりますので、機会がありましたら、ご覧いただけると幸いです。 


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 4月27日(木)16:05~  NHKラジオ第1放送で、内藤が出演する「切手でひも解く世界の歴史」の第2回目が放送予定です。今回は、23日のフランス大統領選挙の第1回投票と5月7日の決選投票の間の放送ということで、フランスの初代大統領と切手についてのお話をする予定です。みなさま、よろしくお願いします。番組の詳細はこちらをご覧ください。


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 「韓国/北朝鮮」の出発点を正しく知る!
 日本からの解放と、それに連なる朝鮮戦争の苦難の道のりを知らずして、隣国との関係改善はあり得ない。ハングルに訳された韓国現代史の著作もある著者が、日本の敗戦と朝鮮戦争の勃発から休戦までの経緯をポスタルメディア(郵便資料)という独自の切り口から詳細に解説。解放後も日本統治時代の切手や葉書が使われた郵便事情の実態、軍事郵便、北朝鮮のトホホ切手、記念切手発行の裏事情などがむしろ雄弁に歴史を物語る。退屈な通史より面白く、わかりやすい内容でありながら、朝鮮戦争の基本図書ともなりうる充実の内容。

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