内藤陽介 Yosuke NAITO
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 泰国郵便学(48)
2017-04-28 Fri 10:51
 ご報告が遅くなりましたが、財団法人・日本タイ協会発行の『タイ国情報』第51巻第2号ができあがりました。そこで、僕の連載「泰国郵便学」の中から、この1点をご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)

      タイ・パッタヤービーチ(1975)

 これは、1975年の国際文通週間の切手のうち、パッタヤー(パタヤ)のビーチを取り上げた75サタン切手です。

 パッタヤーは、バンコクの東南165km、タイランド湾に面したリゾート地で、行政上はチョンブリー県に属しています。

 パッタヤーの名が最初に歴史に登場するのは、1767年、プラヤー・ターク(タークシン)の遠征時のことです。

 アユッタヤー王朝の滅亡以来、国土回復のために奔走していたプラヤー・タークは、チャンタブリー遠征へ向かう途中、現在のパッタヤーの地で、その地方を治めていたナイ・クロームの軍と対峙。当初、プラヤー・タークの軍を撃退するつもりだったナイ・クロームは、プラヤー・タークの威厳ある振る舞いと、部下たちの軍紀が厳正に保たれていることに深く感銘を受け、戦わずして降伏し、プラヤー・タークの軍に加わったといわれています。ここから、両者が相見えた地は“タプ・プラヤー”と呼ばれるようになり、後にそれが転訛して雨季の初めに南西から北東方向に吹く風を意味する“パッタヤー”と呼ばれるようになりました。

 かつてのパッタヤーは小さな漁村にすぎませんでしたが、1959年6月29日、コーラート駐留の米軍関係者500人が、1週間ほど、パッタヤーで休暇を過ごしたことがきっかけで、リゾート地としての開発が進められることになります。その後、ヴェトナム戦争が本格化すると、1965年以降、ラヨーン県バーンチャーン郡のウタパオ空軍基地が北爆に向かう米軍の重要拠点となり、ウタパオから車で1時間の距離にあるパッタヤーは保養地としての開発が急速に進みました。

 さて、今回ご紹介の切手を含め、1975年の国際文通週間の切手には、タイを代表する4ヵ所のビーチ・リゾートの風景が取り上げられています。

 タイの国際文通週間の切手において、観光資源となる景勝地が取り上げられたのは、1972年以来のことですが、1975年の切手の題材が選択されるにあたっては、同年3月のヴェトナム戦争終結という事情が大きかったのではないかと思います。

 すなわち、タイの観光産業、特にビーチ・リゾートを中心とした保養地に関しては、上述のパッタヤーの事例にみられるように、ヴェトナム戦争に従軍する米軍関係者が好んで利用したことで、彼らを通じて、ひろく欧米人に注目されるようになったという経緯があります。実際、1964年8月にトンキン湾事件が発生し、米軍がインドシナへの関与を強めていく傾向をみせると、翌1965年、タイ政府観光局(現観光庁)はニューヨーク事務所を開設して、米軍の保養地としてのタイの魅力を積極的なアピールを開始しています。その甲斐もあって、1967年にタイを訪れた外国人は、一般の観光客が33万6000人、インドシナの前線から休暇期間に訪タイした米軍関係者が5万人にものぼっていたほどです。

 その後もタイの観光産業はヴェトナム戦争の長期化にあわせて順調に発展し、欧米人観光客が落とす外貨は、タイの国家財政にとっても重要な財源となっていました。

 そうしたタイの観光産業にとって、ヴェトナム戦争の終結は、上得意であった米軍関係者の需要激減につながる事態でしたから、彼らとしても、より広く欧米の観光客に向けて、毎年恒例の国際文通週間の題材として、1975年はビーチ・リゾートを取り上げ、その存在を世界にアピールしようとしたものと考えられます。

 * 昨日の放送は無事に終了しました。お聞きいただいた皆様、ありがとうございました。5月は連休と大相撲がある関係で、僕の次の出番は6月1日の予定です。ちょっと間が開いてしまいますが、引き続き、よろしくお願いいたします。 

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 日本からの解放と、それに連なる朝鮮戦争の苦難の道のりを知らずして、隣国との関係改善はあり得ない。ハングルに訳された韓国現代史の著作もある著者が、日本の敗戦と朝鮮戦争の勃発から休戦までの経緯をポスタルメディア(郵便資料)という独自の切り口から詳細に解説。解放後も日本統治時代の切手や葉書が使われた郵便事情の実態、軍事郵便、北朝鮮のトホホ切手、記念切手発行の裏事情などがむしろ雄弁に歴史を物語る。退屈な通史より面白く、わかりやすい内容でありながら、朝鮮戦争の基本図書ともなりうる充実の内容。

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