内藤陽介 Yosuke NAITO
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 こどもの日
2017-05-05 Fri 16:47
 きょう(5日)は“こどもの日”です。というわけで、“こども”が描かれた切手の中から、この1枚を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      モルディヴ・パレスチナとの連帯

 これは、1983年にモルディヴが発行した“パレスチナ人民との連帯”と題する切手の1枚で、左側に老人に抱きかかえられる子供(パレスチナ難民のイメージと思われます)を、右側には岩のドームをバックにVサインをする子供が描かれています。

 モルディヴは国民のほぼ100%がムスリムですが、1965年の独立当初、イスラム諸国の中では例外的にイスラエルと良好な関係を築いていました。実際、イスラエルは英国、セイロンについでモルディヴを3番目に国家承認した国であり、共和制への移行後は、モルディヴ大統領に対して大使の信任状を奉呈した最初の国となりました。

 “ムスリム国家”モルディヴの親イスラエルの姿勢に対して、当然のことながら、アラブ諸国は不快感を抱いていましたが、モルディヴがインド洋上に孤立した最貧国であることから、その存在は事実上、無視されていたのが実情でした。

 ところが、1973年、第4次中東戦争が勃発し、アラブの産油国が石油戦略を発動すると、“親イスラエル”と認定されて石油の輸入が途絶することを恐れたモルディヴは、突如、イスラエルと断交し、ムスリム国家として、パレスチナ人民の抵抗を支持すると主張し始めます。

 さらに、1968年以来、開発独裁政策を展開していた初代大統領のイブラヒム・ナシールが、1978年7月の大統領選挙で敗れ、スンナ派イスラム世界の最高権威とされるカイロのアズハル大学を卒業し、同大で助手経験のあるマウムーン・アブドル・ガユームが新大統領に就任。ガユームは、1980年に前大統領のナシールによるクーデター計画を未然に防ぐと、ナシール時代に勝るとも劣らぬ強権政治を展開します。その一方で、経済開発のために中東産油国との関係を強化し、経済援助を獲得することを目指し、1980年にはバハレーンと、1981年にはサウジアラビアとの正式の外交関係が樹立されました。

 今回ご紹介の切手は、こうした文脈に沿って1983年に発行されたもので、パレスチナ問題を通じてのアラブ諸国との連帯(とその余得による産油国からの支援の要求)をアピールする意図が込められていたと考えられます。

 ただし、この切手が発行された後も、モルディヴが世界最貧国のひとつであるという状況に長らく変化はなく、同国の経済成長が軌道に乗り始めるのは、2001年7月、20年間で工業化促進を目指す「2020ビジョン」がスタートしてからのことでした。

 さて、ことし(2017年)は、英国がパレスチナに“ユダヤ人の民族的郷土”を作ることを支持するとしたバルフォア宣言(1917年)から100年、イスラエル国家建国の根拠とされる国連のパレスチナ分割決議(1947年)から70年、中東現代史の原点ともいうべき第三次中東戦争(1967年)から50年という年回りになっていますので、現在、「本のメルマガ」で連載中の「岩のドームの郵便学」を書籍化すべくの作業を進めています。具体的な書名・発行日などが明らかになりましたら、このブログでもご案内いたしますので、よろしくお願いいたします。

 
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      朝鮮戦争表紙(実物からスキャン) 本体2000円+税

 【出版元より】
 「韓国/北朝鮮」の出発点を正しく知る!
 日本からの解放と、それに連なる朝鮮戦争の苦難の道のりを知らずして、隣国との関係改善はあり得ない。ハングルに訳された韓国現代史の著作もある著者が、日本の敗戦と朝鮮戦争の勃発から休戦までの経緯をポスタルメディア(郵便資料)という独自の切り口から詳細に解説。解放後も日本統治時代の切手や葉書が使われた郵便事情の実態、軍事郵便、北朝鮮のトホホ切手、記念切手発行の裏事情などがむしろ雄弁に歴史を物語る。退屈な通史より面白く、わかりやすい内容でありながら、朝鮮戦争の基本図書ともなりうる充実の内容。

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