内藤陽介 Yosuke NAITO
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 母の日
2017-05-14 Sun 12:00
 きょうは“母の日”です。というわけで、毎年恒例、母と子を題材とした切手の中から、この1枚です。(画像はクリックで拡大されます)

      パレスチナ・ナクバ(2014)

 これは、2014年5月15日にパレスチナ・ガザ政府が発行した“ナクバ66周年”の記念切手で、子供を抱き、哺乳瓶代わりに鍵を咥えさせている母親が描かれています。

 “ナクバ”は、もともとはアラビア語で大災厄ないしはカタストロフを意味する語ですが、中東近現代史の文脈では、1948年5月のイスラエル建国とそれに伴う第一次中東戦争の結果、70-80万人のアラブが“パレスチナ難民”となったことを意味しています。

 第二次大戦後の1947年2月、パレスチナを委任統治領としていた英国はアラブとシオニストの対立を解決する責任を放棄し、国際連合に問題の解決を一任すると一方的に宣言。これを受けて、同年5月、国連にパレスチナ問題特別委員会が設立され、同委員会によるパレスチナ分割案(パレスチナにアラブ、ユダヤの二独立国を創設し、エルサレムとその周辺は国連信託統治下に置くという内容)が11月29日に国連決議第181号として採択されます。

 国連決議をめぐってパレスチナがアラブ対シオニストの内戦に突入する中、1948年3月、シオニストたちは、パレスチナ分割の国連決議を受けて、テルアビブにパレスチナのユダヤ人居住区を統治する臨時政府「ユダヤ国民評議会」を樹立し、新国家樹立に向けて動き出しました。同時に、シオニストたちは、英国の撤退後の軍事的空白を利用して、軍事的にパレスチナを制圧するダレット計画(パレスチナのアラブ社会を破壊してアラブ住民を追放し、パレスチナ全土を制圧してユダヤ人国家創設を既成事実とすることをめざす計画)を発動します。

 これにより、1948年4月の時点で、生命の危険を感じたアラブ系住民約10万人がパレスチナから脱出。こうした中で、シオニスト側は着々と建国準備を進め、パレスチナにおけるイギリスの委任統治が終了する1948年5月14日午後4時すぎ(現地時間)、テルアビブの博物館でユダヤ国民評議会が開催され、イスラエル初代首相となったベングリオンが、“ユダヤ民族の天与の歴史的権利に基づき、国際連合の決議による”ユダヤ人国家イスラエルの独立を宣言。これを認めない周辺アラブ諸国はイスラエルに宣戦を布告。イスラエルの独立戦争ともいうべき第一次中東戦争が勃発しました。

 一連の経緯を経て大量のパレスチナ難民が発生することになりましたが、その大半は、ユダヤ側軍事組織による大量虐殺や攻撃、銃器による脅迫等が原因で、パレスチナ域外に逃れた難民たちが故郷に残した資産の多くは没収されました。

 着の身着のままで難民となった人々は、いつか故郷の自分が元住んでいた家に帰還するという意思を込めて、鍵を“ナクバ”のシンボルとしており、今回の切手でも、祖国を知らぬままに生まれた子供の口に哺乳瓶ではなく鍵を咥えさせることで、そうした“民族の悲劇”を子々孫々に語り継いで一行という意図が示されています。

 さて、ことし(2017年)は、英国がパレスチナに“ユダヤ人の民族的郷土”を作ることを支持するとしたバルフォア宣言(1917年)から100年、イスラエル国家建国の根拠とされる国連のパレスチナ分割決議(1947年)から70年、中東現代史の原点ともいうべき第三次中東戦争(1967年)から50年という年回りになっています。これにあわせて、懸案となっている「ユダヤと世界史」の書籍化と併行して、本のメルマガで連載中の「岩のドームの郵便学」に加筆修正して書籍化する企画も現在進行中です。具体的な内容や発売日などが決まりましたら、このブログでもご案内いたしますので、よろしくお願いいたします。


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 【出版元より】
 「韓国/北朝鮮」の出発点を正しく知る!
 日本からの解放と、それに連なる朝鮮戦争の苦難の道のりを知らずして、隣国との関係改善はあり得ない。ハングルに訳された韓国現代史の著作もある著者が、日本の敗戦と朝鮮戦争の勃発から休戦までの経緯をポスタルメディア(郵便資料)という独自の切り口から詳細に解説。解放後も日本統治時代の切手や葉書が使われた郵便事情の実態、軍事郵便、北朝鮮のトホホ切手、記念切手発行の裏事情などがむしろ雄弁に歴史を物語る。退屈な通史より面白く、わかりやすい内容でありながら、朝鮮戦争の基本図書ともなりうる充実の内容。

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