内藤陽介 Yosuke NAITO
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 本家フライドポテトはどっちだ?
2017-05-28 Sun 12:02
 米ファストフード大手のバーガーキングが、同社とベルギーのフィリップ国王と対比し「どっちがキングかな?」と問う広告をインターネット上に掲載(下の画像。以下、画像はクリックで拡大されます)。広告では、どちらか選ぶよう促したうえで、“フィリップ国王”を選ぶと「いいのか?  この男はフライドポテトを作れない」と問い掛けてくるようになっていました。

      バーガーキング

 これに対して、昨日(27日)、ベルギー王室は「国王のイメージを利用するには許可が必要だ。この特殊な件に関し、王室は何も聞いていないし、商業目的なのは明白で、許可することもない」と強い不快感を表明しました。というわけで、今日はこんな切手を持ってきました。

      ベルギー・フライドポテト

 これは、2015年にベルギーが発行した外信用無額面永久保証切手で、同国発祥の料理としてフライドポテトが取り上げられています。

 現在のフライドポテトは、1600年頃、(ワロン地域)のナミュールで、農民たちが作り始めたフリッツ(Frietjes)が起源とされています。当時、ナミュールを含む南ネーデルランドはスペインの支配下に置かれていましたが、その後、ハプスブルク(1713-94年)、フランス(1794-1815年)、ネーデルランド連合王国(1815-30年)の支配を経て、1830年、ベルギー王国として独立しました。このため、ナミュールが属する国ということで、現在、ベルギーはフライドポテト発祥の地とされているわけです。

 もともと、ナミュールにはムーズ川で釣った魚をフライにして食べる習慣がありましたが、冬の間は川が凍結して魚が獲れないため、魚の代わりに細く切ったジャガイモをヘット(牛脂)で揚げて食べていました。これがフライドポテトの原型です。ただし、当時のヨーロッパではジャガイモは主として家畜の飼料にされ、人間の食用とされることは稀でしたので、ナミュールのフリッツが広く普及することはありませんでした。

 その後、フランス革命の混乱でパンおよび原料の小麦が不足すると、革命政府はその代用としてジャガイモを配給。これを機に、ジャガイモ食がヨーロッパで広まり、フリッツも普及します。

 一方、米国では、1802年、トマス・ジェファーソンがパリからフリッツのレシピを持ち込みましたが、民間の家庭料理としてはあまり普及しませんでした。しかし、第一次大戦中、多数の米兵が欧州戦線に派遣されると、彼らを通じてベルギーの国民食となっていたフリッツが米国でも普及するようになります。なお、現地でフリッツに出会った米兵たちは、地元の住民がフランス語を話していたため、これを“フランスのポテト”と誤解。それがし“フレンチ・ポテト”の由来となったといわれています。

 第一次大戦後、“フレンチ・ポテト”の可能性に目を付けたクラレンス・バーズアイは、1920年代に急速冷凍の特許を取得し、冷凍ポテトの販売を始めましたが、当時は冷凍庫の普及率が低く、商品としてはほとんど売れませんでした。その後、1950年代に冷凍庫が家庭にも普及するようになると、第二次大戦中に乾燥野菜を米軍に納入して巨額の利益を上げたジョン・リチャード・シンプロットがバーズアイの技術に着目。1950年代にアイダホ州でジャガイモの大農場と巨大な加工工場を使り、大々的にフライドポテトを販売。さらに、1965年にはマクドナルドがシンプロットの冷凍ポテトを導入したことで、フライドポテトは全世界的に普及していくことになりました。

 ちなみに、今回、問題となった広告を出したバーガーキングがフロリダ州マイアミのハンバーガーレストランとして創業したのは1954年のことですから、当初から現在と同じようなフライドポテトを作っていたとしても、ベルギーのフリッツからは300年以上も後発ということになります。したがって、僕だったら、今回の同社の広告への対抗措置としては、「どっちが本家かな?」のタイトルで同じデザインのサイトを作り、バーガーキングを選ぶと「いいのか? こちらのフライドポテトは“元祖”の味じゃない」と国王陛下の声で流れるような仕掛けにしてやりたいですな。


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