内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手でひも解く世界の歴史(3)
2017-06-01 Thu 09:01
 本日(1日)16:05から、NHKラジオ第1放送で、内藤が出演する「切手でひも解く世界の歴史」の第3回目が放送される予定です。(番組の詳細はこちらをご覧ください)。今回は、先日、サミットが行われたシチリアにちなんで、こんな話をする予定です。(画像はクリックで拡大されます)

      イタリア・シチリア切手150年

 これは、2009年にイタリア発行された“シチリア切手150年”の記念切手です。

 1861年にイタリア王国が建国される以前、イタリアは小国分裂の状態にあり、シチリア島とナポリを中心とする南イタリアは両シチリア王国を構成していました。もともと、両シチリア王国に相当する地域はノルマン人の王朝(オートヴィル朝)が支配していましたが、後にシチリア島とイタリア半島南部の領土が分裂。この2つの王国はどちらも“シチリア王国”を名乗っていました。ただし、半島側の王国は次第に“ナポリ王国”という名が定着します。18世紀になると、ナポリとシチリアはともにハプスブルク家の、ついで、スペイン・ブルボン家の支配下に入ります。

 ナポレオン戦争の時代、ナポリ王国はフランスに占領され、ナポリ王(にしてシチリア王)のフェルディナンドはシチリア島に退避しましたが、ナポレオンの失脚後、1815年6月にナポリに帰還。翌1816年12月、フェルディナンドはナポリとシチリアを両シチリア王国の名の下に合併します。これに伴い、フェルディナンドは、“ナポリ王フェルディナンド4世”と“シチリア王フェルディナンド3世”のふたつの称号をまとめて“両シチリア王フェルディナンド1世”と称することになりました。

 こうして、両シチリア王国として統合されたナポリとシチリアでしたが、切手に関しては、1858年にナポリ王国として独自の切手が発行され、これとは別に、翌1859年にはシチリア王国として独自の切手が発行され、ナポリとシチリアで別々の切手が使われることになります。

 このうち、今回ご紹介のシチリア最初の切手には、両シチリア王・フェルディナンド2世の肖像が描かれていました。

 フェルディナンド2世は、1810年、先王フランチェスコ1世の子として生まれ、1830年に即位しました。青年期は自由主義にも一定の理解を示し、税制改革で減税路線を推進しつつも、王都ナポリ内での実験的な鉄道設置、ナポリ・パレルモ間の電信設備の完備、蒸気船の造船などの近代化政策を推進しました。

 ところが、1837年にシチリアで立憲君主制への移行を求める大規模なデモが発生すると、王は態度を硬化させて、これを軍で鎮圧。その後、1848年1月のシチリアでの農民反乱をきっかけに、自由主義革命がシチリア全域に広まると、自由主義者との妥協を迫られた王は、いったんは1848年憲法の制定を認めます。ところが、王は議会に対する監督権を手放さなかったため、これに抗議する国民がさらなる暴動を起こすと、王は軍を動員して暴動を徹底的に弾圧するとともに、議会を解散しました。また、1848年4月13日、シチリアで自由政府による独立が宣言されると、王は2万の兵をシチリアに上陸させ“反乱軍”を打倒するとともに、報復として、海軍を用いて海沿いの町を徹底的に破壊しました。このため、王は反対派からは憎しみをこめて“砲撃王(= bomba)”と呼ばれています。これにちなんで、シチリア最初の切手は、“ボンバ・ヘッド”と呼ばれることもあります。

 ところで、19世紀の欧米諸国では国家元首の肖像切手が多かったのですが、自らの肖像に消印が押されることを全く気にしない元首がいる一方、それを嫌がる君主もいました。シチリアのフェルディナンド2世は後者の1人で、国王の意向に配慮して、切手の再使用を防ぐための抹消印は、肖像を汚さないように、アーチ型のものが使用されました。今回ご紹介の切手は、そうした消印とその印顆も描かれているので、イメージしやすいのではないかと思います。

 その後、イタリア統一運動(リソルジメント)が進む中で、1860年、両シチリア王国はガリバルディ率いる赤シャツ隊に占領されます。ガリバルディはフェルディナンド2世を廃位し、占領した両シチリア王国の領土をサルデーニャ王ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世に献上。これを受けて、翌1861年にイタリア王国が成立しました。

 ちなみに、イタリア王国が発足すると、旧両シチリア王国の支配下にあった南イタリアは冷遇されます。このため、1880年代以降、南イタリアから、故郷に見切りをつけて米国に渡る移民が急増。彼らの中から、映画『ゴッド・ファーザー』に見られるような在米イタリア・マフィアが生まれてくるのです。


 ★★★ NHKラジオ第1放送 “切手でひも解く世界の歴史” 次回 は1日! ★★★ 

 6月1日(木)16:05~  NHKラジオ第1放送で、内藤が出演する「切手でひも解く世界の歴史」の第3回目が放送予定です。今回は、5月26-27日にG7サミットが行われたシチリアにスポットを当ててお話をする予定です。みなさま、よろしくお願いします。なお、番組の詳細はこちらをご覧ください。


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 日本からの解放と、それに連なる朝鮮戦争の苦難の道のりを知らずして、隣国との関係改善はあり得ない。ハングルに訳された韓国現代史の著作もある著者が、日本の敗戦と朝鮮戦争の勃発から休戦までの経緯をポスタルメディア(郵便資料)という独自の切り口から詳細に解説。解放後も日本統治時代の切手や葉書が使われた郵便事情の実態、軍事郵便、北朝鮮のトホホ切手、記念切手発行の裏事情などがむしろ雄弁に歴史を物語る。退屈な通史より面白く、わかりやすい内容でありながら、朝鮮戦争の基本図書ともなりうる充実の内容。

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