内藤陽介 Yosuke NAITO
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 第三次中東戦争勃発50年
2017-06-05 Mon 12:10
 1967年6月5日に第3次中東戦争が勃発してから、今日(5日)でちょうど50周年です。というわけで、きょうはこんな切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      イスラエル・再統一50年

 これは、今年(2017年)4月4日にイスラエルが発行した“再統一50年”の記念シートです。ここでいう“再統一”とは、第三次中東戦争の結果、それまでヨルダン領だった東エルサレムをイスラエルが占領し、戦前からのイスラエル領だった西エルサレムと統合したことを意味しています。ちなみに、イスラエルでは“(エルサレム)再統一”の記念日(ヨム・イェルシャライム:エルサレム記念日)は、毎年、ユダヤ暦イヤール月(第8月)28日に祝うことになっているため、一般的なグレゴリオ暦では毎年、日付が異なっており、今年は5月25日がその祝日にあたっていました。

 1956年の第二次中東戦争(スエズ動乱)は、英仏の侵攻に屈せず耐え抜いたという点で、エジプトは政治的に勝利を収め、ナセルの権威は絶頂に達したものの、純粋に軍事的な見地から見ると、英仏との密約によりエジプト領内に侵攻したイスラエル軍は、いともたやすくシナイ半島を横断してスエズ運河地帯まで進軍し、エジプト軍はそれを阻止することができず、惨敗に等しい状況でした。

 このため、イスラエルとの全面戦争になればエジプトには勝ち目はないことをナセルも思い知り、イスラエル打倒の勇ましいスローガンとは裏腹に、本音では、イスラエルとの戦争を回避しなければならないと考えるようになりました。そこで、ナセルは、対イスラエル闘争の統一司令部として“パレスチナ解放機構(PLO)”を作り、その傘下にパレスチナ人の武装組織を組み込むことで、強硬派の暴走を抑え、イスラエルを決して本気で怒らせない(=全面戦争には突入しない)程度に“抵抗運動”を継続して、パレスチナ解放の大義は維持した体裁をとりながら、アラブ世論のガス抜きをするという戦略を立てます。

 ところが、現実には、パレスチナ人武装勢力の中には、ナセルの微温的な姿勢を拒否して、PLOには参加せず、イスラエル領内での武装闘争をエスカレートさせるものも少なくなくありませでした。その代表的な存在が、ヤーセル・アラファート(以下、アラファト)ひきいるファタハです。

 1957年に創設され、反イスラエルの武装闘争(イスラエル側から見ればテロ活動)を展開していたファタハは、武装闘争/テロ活動をエスカレートさせてイスラエルの報復攻撃を引き出せば、アラブ諸国も対イスラエル全面戦争に参加せざるを得なくなると考えており、ソ連、東欧はもとより、中国を含む反西側諸国から武器を調達し、シリアの庇護下で戦闘能力を強化していました。

 一方、イスラエルの政府と国民にしてみれば、PLO傘下の団体であろうとなかろうと、国内の治安を乱すテロリストは駆逐すべき存在ですから、その討伐を求める世論が高揚。イスラエル=シリア国境では緊張感が高まっていきました。

 こうした中で、1967年4月、シリア、イスラエル両国の空軍が空中戦を展開し、シリアのミグ戦闘機6機が撃墜される事件が発生。これを機に、軍事的緊張は一挙に高まり、“アラブ世界の盟主”ナセルにイスラエルへの実力行使を求めるアラブ諸国の世論が沸騰します。

 当初、ナセルは慎重姿勢を保っていましたが、同年5月14日、アラブ諸国からの要請を拒否しきれずに、シナイ半島に兵力を進駐させ、第二次中東戦争の終結以来駐留を続けていた国連緊急軍に撤兵を要求。同月22日、チラン海峡(紅海につながるアカバ湾の出口)を封鎖しました。

 アラブ諸国はナセルの決断を歓迎し、5月30日にはヨルダンとエジプトとの間で相互防衛条約が調印されたほか、エジプトとシリア、ヨルダンの間では軍事同盟が結成された。さらに、イラク、クウェート、スーダン、アルジェリアの各国も有事の際の派兵を約束。イスラエルは周囲を完全に包囲されます。

 このため、イスラエルはアラブ諸国軍に対する戦闘準備を急ぎ、先制攻撃を計画。当初、米国はイスラエルの先制攻撃に反対し、問題の政治的解決を求めましたが、最終的には、和平解決のための具体的行動をとる用意がないことをイスラエルに通告します。これを受けて、6月5日、イスラエルはアラブ諸国軍に対する先制攻撃を開始しました。

 こうして、いわゆる第三次中東戦争の勃発します。

 戦争の勝敗は、開戦後まもなく、イスラエル空軍が、エジプト、ヨルダン、シリア、イラク各国の空軍基地を壊滅状態に追い込んだことによって、早々に決せられました。イスラエル軍は早くも6月7日には東エルサレムを占領し、同月10日にはゴラン高原のシリア軍が潰滅。この間、6月8日には国連安保理の勧告を受けて、エジプトが無条件停戦に応じ、シリアも10日には停戦に応じました。このため、イスラエル側は、この戦争を誇らしげに“6日戦争”と呼んでいます。

 第三次中東戦争の結果、イスラエルの占領地は一挙に戦前の3倍に拡大します。しかし、理由はどうあれ、戦争がイスラエル側の先制攻撃ではじまったことから、イスラエルによる占領地拡大の正統性については、アラブ諸国はもとより、社会主義諸国や中立諸国なども否定的で、同年11月22日の国連安保理はイスラエルの占領を無効とする安保理決議242を全会一致(中華民国、フランス、イギリス、アメリカ、ソビエト連邦、アルゼンチン、ブラジル、ブルガリア、カナダ、デンマーク、エチオピア、インド、日本、マリ、ナイジェリア)で可決。ただし、同決議では撤退期限は定められず、経済制裁などの具体的なイスラエルへの対抗措置も行われなかったため、イスラエルは決議を無視し、現在でも、東西エルサレムはイスラエルの“不可分の永遠の首都”であるというのが彼らの主張です。

 ちなみに、今回ご紹介の切手では、シートは中央のタブを挟んで左右に1枚ずつ切手が収められていますが、エルサレムを象徴するものとして左側の切手にはヘブライ大学の時計塔を、右側の切手には嘆きの壁を、それぞれ取り上げています。

 さて、ことし(2017年)は、英国がパレスチナに“ユダヤ人の民族的郷土”を作ることを支持するとしたバルフォア宣言(1917年)から100年、イスラエル国家建国の根拠とされる国連のパレスチナ分割決議(1947年)から70年、中東現代史の原点ともいうべき第三次中東戦争(1967年)から50年という年回りになっています。

 これにあわせて、懸案となっている「ユダヤと世界史」の書籍化と併行して、本のメルマガで連載中の「岩のドームの郵便学」に加筆修正した書籍『パレスチナ現代史:岩のドームの郵便学』(仮題)の刊行に向けて、現在、制作作業を進めています。発売日などの詳細が決まりましたら、このブログでもご案内いたしますので、よろしくお願いいたします。
 
 
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      朝鮮戦争表紙(実物からスキャン) 本体2000円+税

 【出版元より】
 「韓国/北朝鮮」の出発点を正しく知る!
 日本からの解放と、それに連なる朝鮮戦争の苦難の道のりを知らずして、隣国との関係改善はあり得ない。ハングルに訳された韓国現代史の著作もある著者が、日本の敗戦と朝鮮戦争の勃発から休戦までの経緯をポスタルメディア(郵便資料)という独自の切り口から詳細に解説。解放後も日本統治時代の切手や葉書が使われた郵便事情の実態、軍事郵便、北朝鮮のトホホ切手、記念切手発行の裏事情などがむしろ雄弁に歴史を物語る。退屈な通史より面白く、わかりやすい内容でありながら、朝鮮戦争の基本図書ともなりうる充実の内容。

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