内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手でひも解く世界の歴史(4)
2017-06-15 Thu 08:05
 本日(15日)16:05から、NHKラジオ第1放送で、内藤が出演する「切手でひも解く世界の歴史」の第4回目が放送される予定です。(番組の詳細はこちらをご覧ください)。今回は、先日開幕したアスタナ万博にちなんで、こんな話をする予定です。(画像はクリックで拡大されます)

      カザフスタン・ナザルバエフ(2016)

 これは、2016年にカザフスタンで発行されたヌルスタン・ナザルバエフ大統領の切手シートで、シートの余白には黒川紀章のマスタープランに沿って建設が進む首都アスタナの景観が取り上げられています。その右下には、新首都のシンボルとして建設された塔“バイテレク(カザフ語で、遊牧民の伝説に登場する正名の木とされる「ポプラ」を意味します)”が見えますが、その高さ105mの展望台上るためのエレベーターは日本製です。 
 
 さて、切手に取り上げられたナザルバエフ大統領は、1940年7月6日生まれの現在76歳。1979年、ソ連時代のカザフ共産党中央委員会書記となり、1980年代、ペレストロイカを推進したゴルバチョフ政権下で中央アジアの代表として台頭しました。 1989年、カザフ共産党中央委員会第一書記に就任し、翌1990年4月にはカザフ・ソビエト共和国大統領に就任します。

 ソ連末期の1991年12月8日、ロシアのボリス・エリツィン大統領、ウクライナのレオニード・クラフチュク大統領、ベラルーシのスタニスラフ・シュシケビッチ最高会議議長がベラルーシのベロヴェーシの森で会談し、これら3国のソ連からの離脱とEUと同レベルの国家の共同体の創設が宣言されます。これを受けて、カザフスタンも12月16日に独立を宣言。12月21日には、カザフスタンの当時の首都、アルマ・アタでソ連を構成していた共和国の首脳が会談し、独立国家共同体(CIS)の創設が決定されました。これが、いわゆるアルマ・アタ協定です。

 こうして、ソ連が完全にその存在意義を失ったことを受け、12月25日、ソ連のミハイル・ゴルバチョフ大統領が辞職し、ソ連は消滅します。したがって、しばしば、カザフスタンはソ連崩壊後独立したと言われますが、実際には、カザフスタンなどが独立したことでソ連が崩壊したというのが正確なところです。

 カザフスタンの独立とともに、ナザルバエフは新国家の大統領に横滑りし、その後も、大統領として当選を重ねます。そして、2007年5月18日、カザフスタン議会はナザルバエフを終身大統領とする決議案を圧倒的賛成多数で可決しました。同日採択された憲法改正案で大統領任期を7年から5年に削減し3選は禁止するとの規定がありましたが、ナザルバエフは“独立国家カザフの創始者”として、その例外とされています。

 その後、2010年、大統領の任期を2020年まで延長するための国民投票実施を求める署名運動が行われ、カザフスタン議会も国民投票を可能にする憲法改正案を可決。実は、その背景には、ナザルバエフには反対しないが、重要な事柄について国民投票を可能にしてほしいとの暗黙の民主化要求があったのですが、大統領側はこれを逆手に取って任期延長提案を拒否。2011年に大統領選挙を行い、得票率95.5%で4選を果たしています。ちなみに、この時の大統領選挙の立候補者はナザルバエフ以外に3人いましたが、3人ともナザルバエフの2020年までの任期延長に賛成しており、そのうちの1人はナザルバエフに投票したそうです。

 こうしたこともあって、ナザルバエフ政権に対しては独裁批判も強いのですが、その一方で、ナザルバエフは「安定と経済発展」のスローガンの下、カザフスタン=中国石油パイプラインを建設するなど、潤沢な天然資源を積極的に輸出して急激な経済成長を実現。国民の生活水準は中央アジア随一となっています。

 日本との関係では、2008年に来日時して当時の福田康夫首相と会談し、原子力の平和的利用などエネルギー分野での二国間協力協定に調印したほか、2016年には核軍縮への取り組みが評価され、日本政府の招待を受けて、カザフスタンの大統領として初めて(といっても、歴史上、カザフスタンの大統領は彼しかいないのですが)広島・長崎を訪問。旧ソ連時代、セミパラチンスク核実験場で行われた核実験で延べ120万人が被曝し、現在なお健康被害に苦しんでいることを踏まえ、「日本とカザフスタンは核兵器の大被害を受けた意味では運命が似ている。」と記しています。


 ★★★ NHKラジオ第1放送 “切手でひも解く世界の歴史” 次回 は15日! ★★★ 

 6月15日(木)16:05~  NHKラジオ第1放送で、内藤が出演する「切手でひも解く世界の歴史」の第4回目が放送予定です。今回は、6月10日に開幕したばかりのアスタナ万博にちなんで、開催国のカザフスタンにスポットを当ててお話をする予定です。みなさま、よろしくお願いします。なお、番組の詳細はこちらをご覧ください。

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 【出版元より】
 「韓国/北朝鮮」の出発点を正しく知る!
 日本からの解放と、それに連なる朝鮮戦争の苦難の道のりを知らずして、隣国との関係改善はあり得ない。ハングルに訳された韓国現代史の著作もある著者が、日本の敗戦と朝鮮戦争の勃発から休戦までの経緯をポスタルメディア(郵便資料)という独自の切り口から詳細に解説。解放後も日本統治時代の切手や葉書が使われた郵便事情の実態、軍事郵便、北朝鮮のトホホ切手、記念切手発行の裏事情などがむしろ雄弁に歴史を物語る。退屈な通史より面白く、わかりやすい内容でありながら、朝鮮戦争の基本図書ともなりうる充実の内容。

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