内藤陽介 Yosuke NAITO
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 朝鮮戦争で届かなかった葉書
2017-06-25 Sun 12:10
 今年もまた、朝鮮戦争の始まった“ユギオ(韓国語で625の意)”の日がやってきました。というわけで、毎年恒例、朝鮮戦争ネタのなかから、こんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      朝鮮戦争・米→釜山宛返戻

 これは、朝鮮戦争初期の1950年8月18日、米オハイオ州から釜山宛に差し出されたものの、戦争により、朝鮮宛の郵便物が取扱停止となっていたため差出人戻しとなった葉書です。

 1950年6月25日、南侵を開始した北朝鮮の朝鮮人民軍は、3日後の6月28日、首都・ソウルを陥落させた後も破竹の勢いで南侵を続け、7月4日には水原(京畿道)を、同20日には大田(当時は忠清南道)を、それぞれ占領しました。

 その後、7月7日、国連安保理が国連派遣軍(以下、国連軍)の創設を決議し、7月13日には米第8軍司令部が横浜から大邱(慶尚北道)に進出したものの、朝鮮人民軍の南侵は止まず、16日に大邱に撤退した韓国政府は、早くも翌17日にはさらに釜山に移転。その後も、朝鮮人民軍は南侵を続け、7月27日には河東・咸陽・安義、30日には晋州(いずれも慶尚南道)を占領します。

 こうした事態を受けて、8月1日、米第8軍司令官のウォルトン・ハリス・ウォーカー中将は、洛東江陣地線への後退を指令。以後、いわゆる釜山橋頭堡(朝鮮半島南東部の馬山=洛井里=盈徳を結ぶ南北153キロ、東西90キロの防御線)の攻防をめぐり、激戦が展開されることになりました。今回ご紹介の葉書は、まさに釜山橋頭堡をめぐる攻防戦最中の釜山宛に差し出されたものです。

 なお、1950年8月の時点では、戦局は全体として北朝鮮側が圧倒的に有利ではあったものの、すでに北朝鮮の補給能力は限界を超えており、朝鮮人民軍は2度にわたって猛攻をかけたものの、結局、釜山橋頭堡を制圧できませんでした。一方、国連軍側は緒戦段階から制空権・制海権を掌握していましたが、米本土からの弾薬船が釜山に到着するようになったのは8月下旬以降のことで、それまで、第8軍は日本本土に備蓄されていた弾薬で急場をしのがざるをえず、苦境が続いていました。

 こうした中で、8月以降、釜山には兵員・物資が続々と陸揚げされていったことで、ようやく国連軍は徐々に戦力を回復。北朝鮮側の戦力が釜山橋頭堡攻略に集中している機会をとらえて、9月15日、国連軍総司令官のマッカーサーは朝鮮人民軍の後背地にあたる仁川上陸作戦を敢行。これにより、戦況は一挙に逆転し、朝鮮人民軍は敗走していくことになります。

 なお、朝鮮戦争と関連の切手・郵便物については、拙著『朝鮮戦争』でもいろいろご紹介しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。
 

 ★★★ NHKラジオ第1放送 “切手でひも解く世界の歴史”  次回は29日!★★★ 

 6月29日(木)16:05~  NHKラジオ第1放送で、内藤が出演する「切手でひも解く世界の歴史」の第5回目が放送予定です。今回は、7月1日の香港“返還”20周年を前に、香港にスポットを当ててお話をする予定です。みなさま、よろしくお願いします。なお、番組の詳細はこちらをご覧ください。

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      朝鮮戦争表紙(実物からスキャン) 本体2000円+税

 【出版元より】
 「韓国/北朝鮮」の出発点を正しく知る!
 日本からの解放と、それに連なる朝鮮戦争の苦難の道のりを知らずして、隣国との関係改善はあり得ない。ハングルに訳された韓国現代史の著作もある著者が、日本の敗戦と朝鮮戦争の勃発から休戦までの経緯をポスタルメディア(郵便資料)という独自の切り口から詳細に解説。解放後も日本統治時代の切手や葉書が使われた郵便事情の実態、軍事郵便、北朝鮮のトホホ切手、記念切手発行の裏事情などがむしろ雄弁に歴史を物語る。退屈な通史より面白く、わかりやすい内容でありながら、朝鮮戦争の基本図書ともなりうる充実の内容。

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