内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手でひも解く世界の歴史(5)
2017-06-29 Thu 07:36
 本日(29日)16:05から、NHKラジオ第1放送で、内藤が出演する「切手でひも解く世界の歴史」の第5回が放送される予定です。(番組の詳細はこちらをご覧ください)。今回は、7月1日の香港“返還”20周年にちなんで、こんな話をする予定です。(画像はクリックで拡大されます)

      1994年・香港切手展シート

 これは、1994年に香港で発行された“香港切手展”の切手シートで、当時の香港島・ヴィクトリア湾のウォーターフロントが取り上げられています。

 香港で年々増殖し続けている高層ビル群は経済発展にあわせて無秩序に林立していったようにも見えますが、その背後には、香港の人たちが心の拠り所(の一つ)としている風水が色濃く影を落としています。

 たとえば、今回ご紹介のシートでは、エリザベス女王の切手の左上に1990年に完成した中銀タワー(香港の中国銀行ビル)がそびえたっていますが、当初、この建物を見た香港の風水師は仰天したそうです。というのも、ビルの形状が包丁のように見えるだけでなく、その刃の面が、一方は英総督府の方向に、他方は香港上海銀行(香港金融界の支配者とされる英国系の銀行)の方向に、それぞれ、向けて建てられていたからです。

 はたして、中銀タワーができてから総督府の敷地内の大木が枯れ、当時のウィルソン総督も怪我をしてしまいました。このため、香港社会は、中国政府が返還前に英国の香港支配の拠点に殺気を送るためにこのようなビルを建設したと大騒ぎになり、総督府側もこれを放置できなくなり、総督府構内の中庭の池は四角形から円形に改められ、その側に柳の木を三本植えるという風水上の対抗手段が取られています。

 一方、総督府同様、中銀タワーから刃先を向けられることになった香港上海銀行の新社屋は、中銀タワーに先立ち1986年に完成していましたが、こちらは、1階部分が4本の柱に支えられて空洞になっており、地に足がついていないことから、返還後、銀行の金をイギリスへ持ち出すには最高の風水といわれました。じっさい、香港上海銀行は1990年にロンドンにグループの持株会社、HSBCホールディングスを設立し、その傘下に入っています。

 こうした風水戦争は、その後も続けられ、中銀タワーの殺気をそぐため、中環にはエンターテインメント・ビルが、湾仔にはセントラルプラザ(切手シートでは、資格に囲まれたロゴマークのビルです)が、それぞれ建てられました。この2つのビルは、いずれも、刃物に対抗するためにヤスリの形を意識して造られています。そうした返還直前の香港の町並みは、当時の切手シートにもはっきりと描かれています。

 なお、このあたりの事情については、拙著『香港歴史漫郵記』でもいろいろ解説しておりますので、機会がありましたら、ぜひ、こちらも併せてご覧いただけると幸いです。 


 ★★★ NHKラジオ第1放送 “切手でひも解く世界の歴史”  次回は29日!★★★ 

 6月29日(木)16:05~  NHKラジオ第1放送で、内藤が出演する「切手でひも解く世界の歴史」の第5回目が放送予定です。今回は、7月1日の香港“返還”20周年を前に、香港にスポットを当ててお話をする予定です。みなさま、よろしくお願いします。なお、番組の詳細はこちらをご覧ください。

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 日本からの解放と、それに連なる朝鮮戦争の苦難の道のりを知らずして、隣国との関係改善はあり得ない。ハングルに訳された韓国現代史の著作もある著者が、日本の敗戦と朝鮮戦争の勃発から休戦までの経緯をポスタルメディア(郵便資料)という独自の切り口から詳細に解説。解放後も日本統治時代の切手や葉書が使われた郵便事情の実態、軍事郵便、北朝鮮のトホホ切手、記念切手発行の裏事情などがむしろ雄弁に歴史を物語る。退屈な通史より面白く、わかりやすい内容でありながら、朝鮮戦争の基本図書ともなりうる充実の内容。

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