内藤陽介 Yosuke NAITO
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World Wide Weblog
 世界の国々:キューバ
2017-07-05 Wed 07:50
 ご報告がすっかり遅くなりましたが、アシェット・コレクションズ・ジャパンの週刊『世界の切手コレクション』2017年6月28日号が発行されました。僕が担当したメイン特集「世界の国々」のコーナーは、今回はキューバの特集(2回目)です。その記事の中から、この1点をご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)

      キューバ・ゲバラ没後15年

 これは、1982年にキューバで発行されたチェ・ゲヴァラ没後15周年の記念切手で、彼の肖像とチェ(Che)のサインが取り上げられています。

 アルゼンチンなどで日常的に用いられているリオプラテンセ・スペイン語は、他の地域のスペイン語とは異なる独自の語彙が少なからずありますが、呼びかけの「やぁ」「おい」、愛称の「お前さん」に相当する「チェ(che)」は、その中でも最も世界的に知られた単語でしょう。

 アルゼンチン出身のエルネスト・ゲヴァラは、メキシコでカストロに“Che, Ernest Guevara(やぁ、俺はエルネスト・ゲヴァラだ)”と自己紹介しましたが、その場に居合わせた面々は、当初、“チェ”の意味が理解できませんでした。その後も、アルゼンチン出身のゲバラは、“チェ”の語を連発したため、“チェ”が彼のあだ名として定着し、ゲヴァラも自分の署名に“チェ”を用いるようになりました。

 さて、エルネスト・ラファエル・ゲヴァラ・デ・ラ・セルナは、1928年6月14日、アルゼンチン第2の都市、ロサリオの裕福な家庭に生まれました。幼少時から持病の喘息に悩まされていた彼は、アレルギーの研究を志し、1948年、ブエノスアイレス大学医学部に入学します。

 在学中の1951年、高校時代からの友人、アルベルト・グラナードと2人で南米大陸をオートバイで縦断。途中、ハンセン氏病の医師であるかのように振舞って宿と食事、旅費をくすねたり、密航がばれて船員の仕事をすることで勘弁してもらったりする一方、中南米諸国の絶望的な貧富の格差やアメリカによる経済支配の実態などを目の当たりにして、社会変革の必要を痛感。次第にマルクス主義に傾斜していきます。
 
 1953年の大学卒業後、ペロン独裁政権下の軍医として徴用されることを嫌ったゲヴァラは出国し、ボリヴィア、ペルー、エクアドル、グアテマラなどを経てメキシコにいたり、1955年6月、亡命中のキューバ人革命家、フィデル・カストロと出会いました。

 反政府組織“7月26日運動(M26)”を率いてバティスタ独裁政権の打倒を目指すカストロと意気投合したゲヴァラは、すぐに革命への参加を表明。軍事訓練を受け、1956年12月、カストロらとともにヨット“グランマ号”でキューバに上陸します。しかし、上陸を事前に察知していた政権側の迎撃を受け、革命派が命からがらシエラ・マエストラ山脈に逃げのびたときには、彼らの兵力はわずか17名にまで減少。革命の成就は絶望的とも思われました。

 しかし、彼らはキューバ国内のさまざまな反独裁勢力に支えられ、農村から集まってくる志願兵を受けいれて徐々に勢力を拡大。1958年8月には、ゲヴァラとカミーロ・シエンフエゴスひきいる2部隊がマエストラ山脈の拠点を出発し、西へ向けて進軍を開始し、ラス・ビリャスの戦で勝利を収めた。さらに、12月30日には中部の大都市サンタ・クララで政府軍を敗走させました。

 こうして、1959年1月1日、バティスタがドミニカ共和国に亡命すると、翌2日、ゲヴァラとカミーロが首都ハバナに入城し、カストロは勝利宣言を行いました。

 革命後の1959年6月、ゲヴァラは通商大使としてアジア、アフリカ、東欧などを歴訪し、帰国後、農業改革機構工業部長および国立銀行総裁に就任。農地改革と企業の国有化を進めます。

 1961年4月、米国はプラヤ・ヒロン侵攻事件で革命に干渉しますが、ゲヴァラはカストロと共に侵攻軍を撃破し、5月、カストロはキューバ革命の社会主義革命化を宣言しました。

 同年10月、ゲヴァラは工業相に就任。米国による経済封鎖の影響もあり、キューバ経済は急速に悪化。これに対して、彼は「生産効率の低下は人々の献身的労働によって補える」とし、自らも休日はサトウキビの刈り入れなど肉体労働に従事しましたが、状況は好転しませんでした。

 当初、米国という共通の敵と対峙するソ連との関係強化を唱えていたゲヴァラでしたが、1962年のキューバ危機では、結局、ソ連はアメリカに妥協してキューバへの核ミサイル配備を中止。この“裏切り”に憤激した彼は、ソ連への批判を強め、1965年2月、通商交渉のため訪れていたアルジェリアでソ連の外交姿勢を“帝国主義的搾取の共犯者”と非難。このため、キューバ政府が「ゲヴァラを首脳陣から外さなければ物資の援助を削減する」との圧力をソ連から受けると、ゲヴァラは「別れの手紙」を残してキューバを離れました。

 キューバを離れたゲヴァラは、コンゴ動乱に馳せ参じ、約1年間、軍事政権に対抗する左翼反乱軍に参加します。しかし、反政府勢力首脳部の腐敗と堕落に幻滅した彼は、“世界革命”の理想を抱えてコンゴから撤退し、チェコスロヴァキアを経てラテンアメリカに戻り、1966年11月、独裁政権下のボリヴィアに潜入。革命に向けてのゲリラ活動を展開しました。

 しかし、先住民族が多数派を占めるボリヴィアでは、農地改革で土地を得た農民は保守化し、ゲヴァラら左翼ゲリラは余計なことをする“よそ者”という見方が強くありました。ゲヴァラは勢力を拡大できないまま、1967年10月8日、ボリビア政府軍に逮捕され、翌日、銃殺されます。最期の言葉は、銃殺をためらう政府軍兵士に対して発せられた「お前の目の前にいるのは英雄でも何でもないただの男だ。撃て!」でした。

 その後、ゲヴァラの遺体は、死亡の証拠として両手首を切り落とされた後、ボリヴィア山中に埋められましたが、没後30年にあたる1997年、掘り返され、キューバに返還されています。

 さて、『世界の切手コレクション』6月28日号の「世界の国々」では、ことし没後50周年を迎えるゲヴァラについての長文コラムのほか、特産品の葉巻、シエラ・マエストラ山脈の切手などもご紹介しております。機会がありましたら、ぜひ、書店などで実物を手に取ってご覧いただけると幸いです。

  なお、「世界の国々」の僕の担当回ですが、今回のキューバの次は、本日(5日)発売の7月12日号での南アフリカ共和国の特集になります。こちらについては、発行日の12日以降、このブログでもご紹介する予定です。 


 ★★★ 全日本切手展のご案内  ★★★ 

 7月15-17日(土ー月・祝) 東京・錦糸町のすみだ産業会館で全日本切手展(全日展)ならびにオーストラリア切手展が開催されます。詳細は、主催団体の一つである全日本郵趣連合のサイトのほか、全日本切手展のフェイスブック・サイト(どなたでもご覧になれます)にて、随時、情報をアップしていきますので、よろしくお願いいたします。

      全日展2017ポスター

 *画像は全日展実行委員会が制作したチラシです。クリックで拡大してご覧ください。

 ことしは、香港“返還”20周年ということで、内藤も昨年(2016年)、ニューヨークの世界切手展<NEW YORK 2016>で金賞を受賞した“A History of Hong Kong(香港の歴史)”をチャンピオンクラスに出品します。よろしかったら、ぜひ会場にてご覧ください。


 ★★★ NHKラジオ第1放送 “切手でひも解く世界の歴史”  ★★★ 

  6月29日(木)に放送の「切手でひも解く世界の歴史」の第5回は無事に終了しました。お聞きいただいた皆様、ありがとうございました。次回の放送は、大相撲があるため、少し間が開いて7月27日(木)16:05~の予定です。引き続き、よろしくお願いいたします。 

 なお、29日放送分につきましては、放送から1週間、こちらの“聴き逃し”サービスでお聴きいただけますので、ぜひご利用ください。

 ★★★ 内藤陽介 『朝鮮戦争』(えにし書房) 重版出来! ★★★ 

      朝鮮戦争表紙(実物からスキャン) 本体2000円+税

 【出版元より】
 「韓国/北朝鮮」の出発点を正しく知る!
 日本からの解放と、それに連なる朝鮮戦争の苦難の道のりを知らずして、隣国との関係改善はあり得ない。ハングルに訳された韓国現代史の著作もある著者が、日本の敗戦と朝鮮戦争の勃発から休戦までの経緯をポスタルメディア(郵便資料)という独自の切り口から詳細に解説。解放後も日本統治時代の切手や葉書が使われた郵便事情の実態、軍事郵便、北朝鮮のトホホ切手、記念切手発行の裏事情などがむしろ雄弁に歴史を物語る。退屈な通史より面白く、わかりやすい内容でありながら、朝鮮戦争の基本図書ともなりうる充実の内容。

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