内藤陽介 Yosuke NAITO
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 モスル解放
2017-07-10 Mon 11:05
 イラクのアバディ首相は、きのう(9日)、“イスラム国”を自称する過激派組織のダーイシュが同国最大の拠点としてきたモスルを訪れ、ダーイシュに勝利し、モスルを解放したと宣言しました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      イラク・モスルのミナレット

 これは、1967年にイラクが発行した観光宣伝の切手のうち、モスルのヌーリー・モスク(光のモスク)のミナレットを取り上げた1枚です。

 ヌーリー・モスクは、1172年、ザンギー朝・シリア地方のスルターンであったヌールッディーン・マフムードの命により、もともとこの地にあったモスクを改修・拡張するかたちで建立されました。モスクの名前は、ヌールッディーンに由来します。

 今回ご紹介の切手に取り上げられたミナレットはモスクの敷地の北西隅に位置しており、地中8.8m、高さ15.5mの直方体の基部の上に、高さ45mの円筒形のシャフト部が乗った構造です。円筒形のシャフト部の外壁には、鉛直方向に7パターンの異なる幾何学模様が並ぶように装飾煉瓦が貼られているため、外見上、7層の塔のように見えます。また、基部の東面にはアーチ状の入口があり、内部の螺旋階段を使って、頂上に上ることも可能です。

 このミナレットはすでに14世紀には傾いており、このため、“湾曲”を意味するアラビア語の“ハドバーゥ”の愛称でも親しまれています。その理由については、コーラン第17章に記されているムハンマドの天界飛翔の際、天馬にまたがったムハンマドに敬意を表してミナレットが自ら傾きそのままになったという伝承が伝えられていますが、実際には、外壁の煉瓦が昼夜の温度差で膨張と収縮を繰り返し、南東側が縮んだということのようです。

 親英王制下の1942年、イラク政府はヌーリー・モスクの大規模な改修を行い、モスク本体は“近代化”されてしまいましたが、バドバーゥはそのまま残されました。その後、調査により倒壊の危険があることが分かったため、1970年代には補修工事が行われましたが、その工事途中の1980年、イラン・イラク戦争が勃発。翌1981年に工事は完了したものの、イランの空爆によりモスルの街の下水設備が破壊され、モスクの排水機能が損害を受けたことで、バドバーゥはさらに傾くことになりました。

 2014年6月、モスルを占領したダーイシュは、当初、バドバーゥを破壊するとの声明を出しましたが、地元住民の激しい抵抗の前にこれを断念。7月4日には、ダーイシュの首領、アブー・バクル・バグダーディーがヌーリー・モスクの金曜礼拝に姿を現し、カリフ制の復活と、自らがカリフとなることを宣言しました。

 こうして、ダーイシュ支配下でも維持されるかに見えたヌーリー・モスクとバドバーゥでしたが、イラク政府軍によるモスル奪還作戦が展開されていく過程で、2017年6月21日、追い詰められたダーイシュはモスクとバドバーゥを破壊。その後、彼らの残党はモスルを脱出して、彼らが“首都”と位置付けるラッカなどで活動を継続しています。


 ★★★ 全日本切手展のご案内  ★★★ 

 7月15-17日(土ー月・祝) 東京・錦糸町のすみだ産業会館で全日本切手展(全日展)ならびにオーストラリア切手展が開催されます。詳細は、主催団体の一つである全日本郵趣連合のサイトのほか、全日本切手展のフェイスブック・サイト(どなたでもご覧になれます)にて、随時、情報をアップしていきますので、よろしくお願いいたします。

      全日展2017ポスター

 *画像は全日展実行委員会が制作したチラシです。クリックで拡大してご覧ください。

 ことしは、香港“返還”20周年ということで、内藤も昨年(2016年)、ニューヨークの世界切手展<NEW YORK 2016>で金賞を受賞した“A History of Hong Kong(香港の歴史)”をチャンピオンクラスに出品します。また、会期中、16日(日)15:30~、展示解説も行いますので、皆様よろしくお願いします。


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      朝鮮戦争表紙(実物からスキャン) 本体2000円+税

 【出版元より】
 「韓国/北朝鮮」の出発点を正しく知る!
 日本からの解放と、それに連なる朝鮮戦争の苦難の道のりを知らずして、隣国との関係改善はあり得ない。ハングルに訳された韓国現代史の著作もある著者が、日本の敗戦と朝鮮戦争の勃発から休戦までの経緯をポスタルメディア(郵便資料)という独自の切り口から詳細に解説。解放後も日本統治時代の切手や葉書が使われた郵便事情の実態、軍事郵便、北朝鮮のトホホ切手、記念切手発行の裏事情などがむしろ雄弁に歴史を物語る。退屈な通史より面白く、わかりやすい内容でありながら、朝鮮戦争の基本図書ともなりうる充実の内容。

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