内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手でひも解く世界の歴史(6)
2017-07-27 Thu 04:42
 本日(27日)16:05から、NHKラジオ第1放送で、内藤が出演する「切手でひも解く世界の歴史」の第6回が放送される予定です。(番組の詳細はこちらをご覧ください)。今回は、8月4日の世界陸上開幕に先立ち、サニブラウン選手応援企画でガーナにスポットを当ててお話をする予定です(画像はクリックで拡大されます)

      ガーナ・ララバンガモスク

 これは、1970年にガーナで発行された“ララバンガ・モスク”の切手です。

 先日の日本選手権で100m、200mの2種目を制したサニブラウン・アブデル・ハキーム選手の氏名は、サニブラウンが姓で、アブデル・ハキームが名です。

 このうち、アブデル・ハキームというのはムスリムに多い名前で、直訳すると“賢いお方の下僕”という意味ですから、日本語風にいうと賢介さんとか賢太郎さんとか、そういう雰囲気になりましょうか。イスラムでは、唯一絶対なる神様、アッラーを讃えるアラビア語の形容詞が99あるのですが、その形容詞に~の下僕を意味するアブド(アブドゥル、アブデルなど発音にはヴァリエーションがあります)をつけた名前がよく見られます。アブドゥッラー(神の下僕)、アブドゥッラフマーン(慈悲深い方の下僕)などはその典型的なケースです。

 したがって、時々、“アブデル”の部分を除いて“サニブラウン・ハキーム選手”と紹介されることがありますが、これだと、名前の意味が全く違ってきてしまうわけです。

 いずれにせよ、サニブラウン選手本人がイスラム教徒なのかどうかは別として、お父さんでガーナ人のラティフさんは、息子の命名に際して、イスラムの文化的背景を意識していたことは間違いないでしょう。

 もっとも、西アフリカの国々ではムスリムが人口の多数派を占めている国も少なくないのですが(たとえば、拙著『マリ近現代史』で取り上げたマリなどは人口の90%がムスリムです)、ガーナの場合は、2010年の国勢調査によると、人口の71.2%がクリスチャン、17.6%がイスラム教徒、5.2%が伝統宗教という構成で、ムスリムは少数派です。

 もともと、ガーナの地には土着の伝統宗教があり、この地を治めていたアシャンティの王が持つ黄金の床几(玉座)には生ける者、死せる者、いまだ生まれぬ者を含めた王国の人々すべての魂が住まうとする信仰を持っていました。その名残は、現在でも、アディングラ(ガーナの最大民族であるアカン人の衣服などに用いられる伝統的なシンボル模様)等にも残っています。一方、キリスト教は、15世紀にヨーロッパ人がガーナ沿岸に到来したのに伴い、この地に伝わりましたが、英国が本格的に進出するようになった19世紀以降、主として、沿岸の都市部で急速に普及しました。

 これに対して、現在のガーナの地にサハラ交易の商人によってイスラムが伝えられたのは15世紀初めと考えられています。この時代のモスクとしては、今回ご紹介の切手に取り上げられたララバンガ・モスクが有名ですが、このモスクは、1421年、同国北部のララバンガ村に建立されたものです。

 モスクというと、一般には、ドーム型の玉ねぎ屋根のある建築を思い浮かべる人も多いと思いますが、ガーナを含む西アフリカでは、ララバンガ・モスクに見られるように、細長い四角錐を並べたようなスタイルのモノが少なくありません。これは、この地域では、雨や地震が少なく、木材も貴重品だったため、梁などを除いて木材の使用を最小限に抑え、日干し煉瓦を組み立て、その表面に土を塗って固めるという建築手法を用いていたためです。こうした建築は、耐久性に乏しく、民家などでも1年に1度くらいは壁を塗りなおす必要がありますから、それが何百年にもわたって残されてきたということはまさに驚くべきことです。

 ちなみに、現在のガーナ共和国は1957年にイギリスから独立しましたが、現在の国名は、かつて8-11世紀、サハラ越えの金と岩塩の隊商貿易の中継地として繁栄した黒人王国、ガーナ王国にちなんで命名されました。ただし、かつてのガーナ王国の領域は、現在の国名でいうとマリとモーリタニアにまたがる地域で、現在のガーナ共和国の領域とは全く重なっていませんので、注意が必要です。


 ★★★ NHKラジオ第1放送 “切手でひも解く世界の歴史”  次回は27日!★★★ 

 7月27日(木)16:05~  NHKラジオ第1放送で、内藤が出演する「切手でひも解く世界の歴史」の第6回が放送予定です。今回は、8月4日の世界陸上開幕に先立ち、サニブラウン選手応援企画でガーナにスポットを当ててお話をする予定です。みなさま、よろしくお願いします。なお、番組の詳細はこちらをご覧ください。

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