内藤陽介 Yosuke NAITO
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 第1回シオニスト会議から120年
2017-08-29 Tue 10:11
 スイスのバーゼルで、1897年8月29日に第1回シオニスト会議が開催されてから、ちょうど120周年になりました。というわけで、きょうはこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      イスラエル・シオニスト会議100年

 これは、1996年9月3日にイスラエルが発行した“第1回シオニスト会議100周年”の切手シートで、会議の会場となったバーゼルのコンサート・ホール“シュタットカジノ”が取り上げられています。第1回シオニスト会議は1897年8月29-31日の3日間で、シート上の表示も“1897-1997”となっているのですが、シートそのものは1996年の発行ですので、注意が必要です。

 さて、近代以前のヨーロッパでは、ユダヤ人・ユダヤ教徒(以下、便宜的に“ユダヤ人”と総称)は、キリスト教徒からさまざまな差別と圧迫を受けてきた一方で、一部は金融や医術などに長じた存在として、権力者の個人的な庇護をうけるという特殊な存在でした。

 1789年のフランス革命後、フランスでは“国民国家”の理念の下、ユダヤ人にも“フランス国民”として制度上はキリスト教徒と同等の権利・義務が与えられました。19世紀以降、国民国家の理念が他の西欧諸国にも拡散していくと、ユダヤ人社会は、積極的に西欧社会に同化しようとするグループと、西洋化によりユダヤ人としての伝統的な信仰や習慣が毀損されることに反発し、ユダヤ人の独自性を強調するグループに事実上分裂します。

 1860年代、ドイツ系ユダヤ人の社会主義者、モーゼス(ドイツ名モリッツ)・ヘスは、「ヨーロッパ社会でユダヤ人が同化できる可能性は全くなく、ユダヤ人は自分の民族性を否定することによって他の民族の軽蔑を招いている。ユダヤ人はパレスチナに自分たちの国家を持つべきである」と主張し、“政治的シオニズム”を提唱します。ここから派生するかたちで、“宗教的シオニズム(信仰の崩壊や周囲への同化から、ユダヤ民族の統一を守ろうとし、ユダヤ人が自らイスラエルヘの帰還を準備するとき、神の助けが期待されるとする主張。パレスチナの植民地化を要求するものの、時期尚早の国家建設は、神への冒涜と批判)”、“文化的シオニズム(ユダヤ国家の建設は当面は不可能なので、2-3の入植地に集中して移住するのがよいとする主張。パレスチナはユダヤ民族全体の精神的拠点と位置付け、東欧ユダヤ人の文化的独自性を強調し、その再生復活を重視)”等、シオニズム諸派が生まれました。

 こうしたなかで、19世紀後半にはロシア帝国の支配下でポグロム(流血を伴うユダヤ人迫害事件)が繰り返されていたことに加え、1894年にフランスで、ユダヤ系将校のアルフレッド・ドレフュスがドイツのスパイであるとして冤罪逮捕・投獄された“ドレフュス事件”が発生。最終的に、ドレフュスは無罪となりましたが、ユダヤ人に対して最も寛容とみられていたフランスで事件が起きたことに多くのユダヤ人社会に大きな衝撃を与えます。

 ジャーナリストとしてドレフュス事件を取材していたユダヤ系オーストリア人、テオドール・ヘルツルは、もともとはユダヤ人の西洋化に積極的な人物でしたが、事件を機に失われた祖国“イスラエル”を取り戻す政治的シオニズム運動の活動家に転身。1896年、ユダヤ人国家像と国家建設の詳細なプログラムを記した『ユダヤ人国家』を出版しました。

 そして、翌1897年、スイスのバーゼルに各国から200人を集めて第1回シオニスト会議を開催。ヘルツル本人は、ユダヤ人国家の建設地としては、必ずしも聖地エルサレムがあるパレスチナにこだわらず、アルゼンチンやウガンダも候補地として挙げていましたが、最終的に、①シオニズムはユダヤ民族のためにパレスチナの地に公法で認められた郷土(ホームランド)を建設することを目的とする、②その実現のための組織としてシオニスト機構(現・世界シオニスト機構)を創設することなどを謳った「バーゼル綱領」を採択。その目標を達成するため、“世界シオニスト機”が創設されました。

 当初、シオニストは、パレスチナの主権者であるオスマン帝国のスルターン、アブデュルハミト2世から許可を得てパレスチナへ入植することを計画していましたが、オスマン帝国側の反応が芳しくなかったため、小規模移住による“ホームランド”の形成に方針を転換。1901年に創設されたユダヤ民族基金創設、1903年にナサニエル・ロスチャイルドの資金援助で設立されたアングロ・パレスチナ銀行創設が土地買収のための資金を提供するというかたちで、入植が進められることになりました。

 さて、ことし(2017年)は、第1回シオニスト会議の開催(1897年)から120年、英国がパレスチナに“ユダヤ人の民族的郷土”を作ることを支持するとしたバルフォア宣言(1917年)から100年、イスラエル国家建国の根拠とされる国連のパレスチナ分割決議(1947年)から70年、中東現代史の原点ともいうべき第三次中東戦争(1967年)から50年という年回りになっています。

 これにあわせて、『本のメルマガ』の連載「岩のドームの郵便学」に加筆修正した書籍『パレスチナ現代史:岩のドームの郵便学』(仮題)の刊行に向けて、現在、制作作業を進めています。発売日などの詳細が決まりましたら、このブログでもご案内いたしますので、よろしくお願いいたします。 


 ★★★ NHK・BSプレミアム 「アーススキャナー」  ★★★ 

 8月30日(水)21:00-22:30 NHK・BSプレミアムで放送予定の「アーススキャナー~“空白地帯”の謎に迫る~」で、シーランド公国の切手について、内藤が少しお話しますので、よろしくお願いします。番組の詳細はこちらをご覧ください。

 ★★★ NHKラジオ第1放送 “切手でひも解く世界の歴史”  ★★★ 

 8月24日(木)に放送の「切手でひも解く世界の歴史」の第7回は無事に終了しました。お聞きいただいた皆様、ありがとうございました。次回の放送は、9月7日(木)16:05~の予定です。引き続き、よろしくお願いいたします。 

 なお、24日放送分につきましては、8月31日(木)19:00まで、こちらの“聴き逃し”サービスでお聴きいただけますので、ぜひご利用ください。


 ★★★ トークイベントのご案内  ★★★ 

      タウンミーティング in 福山

  2017年9月17日(日) 14:00~、広島県立ふくやま産業交流館で開催の「日本のこころタウンミ-ティング in 福山」に憲政史家の倉山満さんとトークイベントをやります。お近くの方は、ぜひ、ご参加ください。なお、イベントそのものの詳細は、こちらをご覧ください。
      
 ★★★ 内藤陽介 『朝鮮戦争』(えにし書房) 重版出来! ★★★ 

      朝鮮戦争表紙(実物からスキャン) 本体2000円+税

 【出版元より】
 「韓国/北朝鮮」の出発点を正しく知る!
 日本からの解放と、それに連なる朝鮮戦争の苦難の道のりを知らずして、隣国との関係改善はあり得ない。ハングルに訳された韓国現代史の著作もある著者が、日本の敗戦と朝鮮戦争の勃発から休戦までの経緯をポスタルメディア(郵便資料)という独自の切り口から詳細に解説。解放後も日本統治時代の切手や葉書が使われた郵便事情の実態、軍事郵便、北朝鮮のトホホ切手、記念切手発行の裏事情などがむしろ雄弁に歴史を物語る。退屈な通史より面白く、わかりやすい内容でありながら、朝鮮戦争の基本図書ともなりうる充実の内容。

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