内藤陽介 Yosuke NAITO
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
World Wide Weblog
 切手でひも解く世界の歴史(8)
2017-09-07 Thu 09:48
 本日(7日)16:05から、NHKラジオ第1放送で、内藤が出演する「切手でひも解く世界の歴史」の第8回が放送される予定です。(番組の詳細はこちらをご覧ください)。今回は、放送日が、1999年のパナマ運河返還を決めた新パナマ運河条約の調印(1977年9月7日)から40周年ということで、パナマにスポットを当てて、この切手もご紹介しながら、お話をする予定です(画像はクリックで拡大されます)

      パナマ・新条約調印の場面

 これは、1978年1月にパナマが発行した新パナマ運河条約調印の記念切手で、新パナマ条約締結の場面が取り上げられています。切手に取り上げられているのは、米州機構のオルフィラ事務総長をはさんで、左がカーター米大統領、右がトリホス・パナマ大統領です。

 大西洋と太平洋を結ぶパナマ地峡に運河を建設しようという計画のルーツは、古くは1534年、スペインのカルロス1世が調査を指示したことに求められます。

 19世紀になり、スエズ運河を設計したレセップスはパナマ運河の建設を計画し、実際に1880年1月1日に工事も開始しましたが、黄熱病の蔓延や工事の技術的問題、資金調達の面などから、1889年に計画は放棄されてしまいました。

 その後、1902年に米国がパナマ地峡での運河建設を決定。当時、パナマ地峡は自治権をもつコロンビア領でしたが、運河の地政学的重要性に注目した米国は、運河を自らの管轄下におくため、1903年1月22日、コロンビアとの間に、①コロンビアがレセップスの設立した新パナマ運河会社の運河建設権を米国に売却することを認めること、②運河地域の排他的管理権等を米国に付与すること、③米国は一時金1,000万ドル及び運河地域の年間使用料として25万ドルをコロンビアに支払うこと等を規定したヘイ・エルラン条約を結び、運河の管轄権を握ろうとします。

 しかし、コロンビア議会が条約を批准しなかったため、同年11月3日、米国はコロンビアの支配に不満を持っていたパナマ住民を扇動して独立を宣言させます。こうして発足したパナマ共和国を、米国は10日後の11月13日に承認し、5日後の11月18日にはパナマ運河条約を締結。運河の建設権と関連地区の永久租借権などを取得し工事に着手しました。

 これを受けて1903年に工事が始まると、運河関連地区(いわゆるカナル・ゾーンです)では、1904年6月24日、アンコン、クリストバル、ガトゥン、クレブラ、ラ・ボカに郵便局を開設。パナマ切手および米本国の切手に“CANAL ZONE”または“CANAL ZONE PANAMA”の文字を加刷した切手を使用しました。

 その後、3億ドル以上の資金と10年の歳月を投入し、運河は1914年8月15日に開通。運河収入はパナマに帰属するものの、運河地帯の施政権と運河の管理権は米国に帰属することになりました。さらに、運河地帯両岸の永久租借地には米軍施設がおかれ、南米における米国の軍事拠点として機能することになります。

 こうして、パナマ共和国は、事実上、米国の属国としてスタートしましたが、1956年にエジプトがスエズ運河を国有化すると、パナマでも運河の国有化要求が高まります。

 そうした中で、1964年1月、運河地帯でパナマ国旗を掲げようとした学生等20数名が死亡する事件が起こり、当時のチアリ政権は米国との外交関係を断絶。このため、外交関係再開とともに、新運河条約の交渉が開始され、1967年、ロブレス政権下で米国とパナマの新運河条約の草案が発表されました。

 しかし、1968年、軍事クーデターによってオマル・トリホスが権力を掌握。1970年、トリホスは民族主義を掲げ、国民の支持を背景に1967年の新運河条約草案を破棄するとともに、1972年には新憲法を制定して独裁体制を構築します。

 トリホス政権は運河地帯の主権を回復すべく、キューバのフィデル・カストロ政権にも接近するなどして米国に揺さぶりをかけるとともに、1973年の国連安全保障理事会では、パナマ運河の主権はパナマにあることを確認させ、パナマの主権を尊重した新条約の成立を勧告する決議案を提案させました。この決議案は米国の拒否権により否決されましたが、その後、1977年9月7日にトリホスは米国のカーター政権と、1999年の運河返還を決めた新パナマ運河条約を締結。
 
 これを受けて、1979年以降、運河と運河地帯は米国との共同統治となり、1999年末をもって、その主権は正式にパナマへ返還されました。


 ★★★ NHKラジオ第1放送 “切手でひも解く世界の歴史”  次回は7日!★★★ 

 9月7日(木)16:05~  NHKラジオ第1放送で、内藤が出演する「切手でひも解く世界の歴史」の第8回が放送予定です。今回は、1999年のパナマ運河返還を決めた新パナマ運河条約の調印(1977年9月7日)から40周年ということで、パナマにスポットを当ててお話をする予定ですので、よろしくお願いします。なお、番組の詳細はこちらをご覧ください。

 ★★★ トークイベントのご案内  ★★★ 

      タウンミーティング in 福山

  2017年9月17日(日) 14:00~、広島県立ふくやま産業交流館で開催の「日本のこころタウンミ-ティング in 福山」に憲政史家の倉山満さんとトークイベントをやります。お近くの方は、ぜひ、ご参加ください。なお、イベントそのものの詳細は、こちらをご覧ください。
      
 ★★★ 最新作 『パレスチナ現代史 岩のドームの郵便学』 近日発売!★★★ 

      パレスチナ現代史・表紙 本体2500円+税

 【出版元より】
 中東100 年の混迷を読み解く! 
 世界遺産、エルサレムの“岩のドーム”に関連した郵便資料分析という独自の視点から、複雑な情勢をわかりやすく解説。郵便学者による待望の通史!

 本書のご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。
スポンサーサイト

別窓 | パナマ | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑
<< バーブーダ島、壊滅的被害 | 郵便学者・内藤陽介のブログ |  泰国郵便学(50)>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
copyright © 2006 郵便学者・内藤陽介のブログ all rights reserved. template by [ALT-DESIGN@clip].
/