内藤陽介 Yosuke NAITO
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 鉄道の日
2017-10-14 Sat 13:27
 きょう(14日)は“鉄道の日”です。というわけで、鉄道関連の切手の中から、新刊の拙著『パレスチナ現代史 岩のドームの郵便学』にからめて、この1枚を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      ヨルダン・破壊された鉄道

 これは、、1969年12月にヨルダンが発行した“聖地の悲劇”の切手のうち、第三次中東戦争で破壊されたヒジャーズ鉄道の線路を取り上げた1枚です。

 ヒジャーズ鉄道は、ダマスカス=メッカ間を結ぶ鉄道としてオスマン帝国によって計画され、1900年、ゲオルク・ジーメンスのドイツ銀行の出資を得て着工。1908年9月1日、スルターン、アブデュルハミト2世の即位記念日に合わせて、ダマスカス=メディナ間の約1300キロで本線が開通しました。ただし、最終的に、メディナ以南への路線は建設されず、当初の目的地であったメッカまでは到達しませんでした。また、本線に加え、途中のダルアーから東進して内陸のボスラ、同じく西進して地中海岸の港湾都市ハイファ、アッコンまで、さらにその間のアフラから南進してナーブルスまでを結ぶ支線と、ヨルダン南部のマアーンから紅海のアカバ湾にあるアカバの港へ出る支線がありました。

 今回ご紹介の切手は、第三次中東戦争でイスラエルがヨルダン川西岸を占領したことへの抗議の意を込めて発行されたものですから、切手に描かれている線路は、占領地域内のナーブルス周辺の風景ということになろうかと思います。

 かつての東地中海では、ダマスカスを拠点とした内陸交通が盛んでしたが、スエズ運河の開通以来、ハイファやベイルート経由の船便が交通・輸送手段として急速に台頭し、ダマスカスの地位は相対的に低下していました。このため、ダマスカスの経済界は鉄道の開通によってダマスカス経済が再浮上することへの期待を寄せていました。

 ところが、第一次世界大戦中、ヒジャーズ鉄道は、オスマン帝国軍の重要な兵站・物資供給ルートとなってみなされ、いわゆるアラブ叛乱により、アラブ・英連合軍により破壊されました。

 さらに、第一次大戦後、オスマン帝国が解体され、沿線に誕生した各政府がヒジャーズ鉄道の運営を担当することになったものの、トランスヨルダン以南のヒジャーズ王国域内は運営者がなく、そのまま自然消滅。さらに、ヨルダン川以西のハイファへまでの支線も、1948年の第一次中東戦争で破壊され廃線となりました。その意味では、今回ご紹介の切手に描かれた線路がナーブルス近郊のものであったとしても、第三次中東戦争の時点ではすでに鉄道としては機能しておらず、実質的には、線路が破壊されたことによるダメージもほとんどなかったということになりますな。

 その後、1960年代半ばにはヒジャーズ鉄道の再開が企図されたこともありましたが、1967年の第三次中東戦争(6日間戦争)で計画は頓挫。現在では、アンマンとダマスカスを結ぶヒジャーズ・ヨルダン鉄道のうちのアンマン=アル・ジーザ間の約30キロと、アンマンから南部への鉄道、特にマアーン近郊のリン酸塩の鉱山からアカバ湾に向かって走るアカバ鉄道が、旧ヒジャーズ鉄道を継承する鉄道として運行されるのみとなっています。 
 

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