内藤陽介 Yosuke NAITO
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 イラク軍、キルクークに進軍
2017-10-16 Mon 13:11
 イラクからの独立を求める北部のクルド自治政府と、バグダードのイラク中央政府との対立が深まる中、きょう(16日)未明、イラク国営テレビはクルド自治政府が実効支配を続けているキルクークにイラク軍が進軍し、一部の地域を支配下に置いたと伝えました。というわけで、きょうはこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      オスマン帝国・キルクーク消

 これは、オスマン帝国支配下のキルクークで使用されたオスマン帝国の切手で、アラビア語表示のキルクークの角印が押されています。切手の向きとしては、正位から左に90度回転した格好ですが、今回は、消印の文字が正位に近くなるように、あえてこの向きで画像をアップしています。

 現在のイラク国家の枠組は、基本的に、旧オスマン帝国時代のモースル州・バグダード州・バスラ州(からクウェートを除いた地域)から構成されていますが、今回、イラク軍が進軍したキルクークは旧モースル州の州都、モースルの南東149キロの地点に位置しています。オスマン帝国の郵便局が開設されたのは、モースルと同時期の1863年です。

 もともと、クルド人とトルクメン人が中心の多民族都市で、1917年に近郊のババ・グルグルで油田が発見されたことがその後の発展の基礎となりました。

 1980年代、サッダーム・フセインはこの地域のアラブ化政策を進め、それまでキルクークに住んでいたクルド人やトルクメン人は強制的に移住させられたため、都市住民はスンナ派アラブが多数派を占めるようになりました。しかし、2003年のイラク戦争で、米軍の支援を受けたクルド民兵の“ペシュメルガ”がキルクークを解放。さらに、サッダーム政権の崩壊に伴い、クルド人主体の治安部隊がアラブ住民に対する組織的な民族浄化を行っています。

 その後、キルクークはイラク中央政府の管轄とされましたが、2006年に発足したクルド自治政府はキルクークはクルディスタン(自治区)の南部に含まれると主張しているだけでなく、クルド国家が独立した暁には、キルクークを首都にすべきと主張しています。特に、2014年、“イスラム国”を自称する過激派組織のダーイシュがイラク北部に勢力を拡大した際に、敗走したイラク国軍に代わり、ペシュメルガがキルクークを解放したこともあり、以後、キルクークはクルド側の実効支配下にありました。

 今年9月、クルド自治政府は、おなじくクルド人問題を抱える周辺諸国のみならず、米国や国連安保理の反対を押し切って、イラクからの分離・独立を問う住民投票を強行。独立派が圧倒的多数を占めるという結果になりました。これに対して、イラク中央政府は強く反発し、クルド自治区での国際便発着を阻止するなどの対抗措置を発動していました。また、15日には、イラク中央政府のアバディ首相は、自治政府がトルコの非合法武装組織、クルド労働者党(PKK)の部隊をキルクークに動員しているとして、「イラク中央政府に対する宣戦布告だ」と自治政府を強く非難していました。

 今回の進軍に関して、アバディ首相は「キルクーク市民の保護」が目的と強調していますが、一部報道では、イラク軍が既にキルクーク県の「広大な地域」を掌握したとも伝えられています。これに対して、クルド自治政府側はイラク軍が基地や油田を制圧しようとしていると反論し、キルクーク県知事は住民に防戦を呼びかけるなど、衝突が本格化することへの懸念が高まっています。


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