内藤陽介 Yosuke NAITO
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 タイ前国王陛下の国葬
2017-10-27 Fri 04:02
 昨年、崩御されたタイのプミポン・アドゥンヤデート前国王陛下(以下、ラーマ9世)の国葬が、10月25-29日の日程で行われていますが、その主要行事となる火葬式が、きのう(26日)、行われ、御遺体が荼毘に付されました。というわけで、こんな切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      タイ・大勝利号

 これは、1974年9月9日にタイで発行された“国立博物館100周年”の記念切手のうち、歴代の国王・王族の葬儀に際して用いられてきた人力霊柩車“大勝利号”が取り上げられています。

 タイにおける博物館の歴史は、1859年、国王ラーマ4世が王宮内に自分への贈物を1ヵ所にまとめて収蔵したのが起源とされています。ただし、ラーマ4世の時代の収蔵施設は、プライベート・コレクションとしての性質が強く、一般公開を前提とした現在の博物館とはかなり趣が異なるものでした。

 これに対して、ラーマ4世崩御後の1874年、ラーマ5世は、父王の御物や一般の関心を集めそうな品々を展示・公開するための施設として、王宮内のサハタイ・サマコム館を利用して博物館を創設することとし、9月19日に博物館としての開館記念式典を行いました。現在のタイでは、これをもって、国立博物館の開館としており、今回ご紹介の切手もここから起算して100周年にあわせて発行されました。

 その後、展示施設が手狭になったため、1887年、ラーマ5世はサハタイ・サマコム館から副王宮殿(ワンナー)の礼拝堂として用いられていた建物に所蔵品を移すように命令。この施設は、当初、ワンナー博物館と呼ばれていましたが、1926年にバンコク博物館と改称され、1934年、文化省芸術局の管轄に置かれてバンコク国立博物館として拡充され、現在に至っています。

 なお、現在、タイの“国立博物館”は、バンコク国立博物館、バンコク国立美術館、王室御座船国立博物館、シン・ピーラシー記念国立博物館、王室象国立博物館、ガーンチャナーピセーク国立博物館の6中核組織を含め、バンコクなど中部に21、チェンマイなど北部に8、スリンなど東北部に7、プーケットなど南部に7の施設があり、文化省芸術局国立博物館部によって運営が担われています。

 今回ご紹介の切手に取り上げられた大勝利号は、ラーマ1世治世下の1795年、国王の父であるトンディーの遺体を、現在は王宮前広場になっている“トゥン・プラーメン”の火葬場に運ぶために作られ、以後、歴代のチャクリー王朝の国王の葬儀に際して用いられてきました。

 近年は、国王のみならず、1995年に亡くなったシーナカリンタラー=ボーロマラーチャチョンナニー王太后(ラーマ9世の母)や2011年に亡くなったペッチャラット(ラーマ6世とスワッタナー妃の娘)の葬儀の際にも用いられました。今回の国葬でも、ラーマ9世の御遺体を運ぶために使われるものと思われます。

 ちなみに、バンコクのチャクリー宮殿の北側、現在の王宮前広場は、もともと、国王と王族の葬儀場だった場所で、王が亡くなると須弥山に澄む神に戻るとのヒンドゥー神話に基づき、“須弥山の広場”を意味する“トゥン・プラーメン”と呼ばれていました。現在のように“サナーム・ルアン”と呼ばれるようになったのは、1855年、ラーマ4世が発した布告によるものです。

 なお、切手の英文説明は“Royal Chariot”となっていますが、欧米でいう“Chariot”の語は、一般に4輪の場合は“軽馬車”を意味する語ですから、馬ではなく人間が牽引する大勝利号の説明としては、欧米人には誤解を与えるかもしれません。


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