内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ヒゲとターバン
2006-08-28 Mon 01:45
 インドで、シーク教徒のデモが過激化し、警官隊との衝突で負傷者も出る騒ぎになったそうです。そもそものきっかけは、インド西部のジャイプールで、ガールフレンドとの関係をめぐるいざこざから、スィーク教徒の少年が拉致され、髪を無理やり切られる事件だったとか…。

 というわけで、今日はこんな切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

スィク教徒

 これは、今年(2006年)インド郵政が発行した“スィーク連隊”の切手で、ターバンにヒゲという、おなじみの姿のスィーク教徒の兵士が大きく取り上げられています。

 スィーク教は、西暦15世紀にナーナクがヒンドゥー教の改革運動として、イスラムをはじめ当時の西北インドに広まっていたさまざまな宗教思想を取り込んで起こした宗教です。

 髪の毛と鬚を切らず、頭にターバンを着用するスタイルは、第10代のグル(指導者)、ゴービンド・シングが現在の教団組織を確立したときに、守るべき掟の一つとして定めたもので、彼らの外見的な特徴となっています。なお、カレー店のイラストなどでは“ターバンを巻いたインド人”というキャラクターを時々見かけますが、これは、スィーク教徒の中に、官吏や軍人として登用されたり、海外で活躍したりするものが多く見られたことで、彼らの姿が外国人にとってのインド人のイメージにつながったものと考えられています。(ちなみに、インドで多数派を占めるヒンドゥー教徒でターバンをしている人はほとんどいません)

 スィーク教徒は、インド社会ではマイノリティですが、富裕で教育水準の高いものが多いため、その社会的な影響力は無視できないものがあります。このことが、1980年代以降の原理主義的なヒンドゥー・ナショナリズムの高揚の中で、ヒンドゥー教徒との間に摩擦を起こすことになり、1984年のインド政府軍によるゴールデン・テンプル(スィーク教の聖地)の襲撃事件と、その報復としての翌1985年のスィーク教過激派によるインディラ・ガンディー首相暗殺事件という悲劇をもたらしています。

 こうした状況の中で、スィーク教徒の中には、ヒンドゥー教徒の標的になることを恐れて、ターバンをつけず、髪やヒゲも短くする人も少なくないようです。とはいえ、そうした人たちは、あくまでも自発的な意思で髪を切っているわけで、拉致されて無理やり髪を切られるようなことがあれば、スィーク教徒たちが怒るのも無理はありません。

 インド政府は、現在、排他的なヒンドゥー・ナショナリズムの行き過ぎには神経を尖らせており、国民に対して、多民族・多宗教の共存を呼びかけています。今日ご紹介しているスィーク連隊の切手も、そうした文脈に沿って発行されたわけですが、今回のような事件が起こるところを見ると、問題の根はなかなか深いといえそうです。
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