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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ワット・アルン前で尻を出し罰金
2017-12-02 Sat 18:20
 “暁の寺”として知られるバンコクの名刹、ワット・アルンを背景に、尻を出した姿で写真を撮影し、写真共有サイト“インスタグラム”に投稿した米国人の男2人が罰金の支払いを命じられたそうです。というわけで、きょうはこの切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      タイ・1905年シリーズ(5アット)

 これは、タイの1905年シリーズの5アット切手で、当時の国王ラーマ5世の肖像を描いたメダルをタイ人の子供2人が捧げ持ち、背後にワット・アルンが描かれています。メダルを捧げ持つ子供は裸に近い姿ですが、寺院の方には尻や股間は向けられていません。

 ワット・アルンはアユッタヤー王朝時代に建立されましたが、当初は、ワット・マコークと呼ばれる小さな寺にすぎませんでした。それが、トンブリー王朝時代の1779年、タークシン王の部将だったチャオプラヤー・チャクリーヴィエンチャンから戦利品として持ち帰ったエメラルド仏を祀る王室寺院となって一挙に寺格が上昇。その後、1782年にチャクリー王朝を開き、国王ラーマ1世となったチャオプラヤー・チャクリーは王都を対岸に移し、エメラルド仏も王宮内の寺院に移りましたが、続くラーマ2世の個人的な保護を受け、1820年、ヒンドゥーの暁の神、アルーナにちなんで、ワット・アルンラーチャターラームと改称されました。現在の名前になったのはラーマ4世の時代のことです。

 寺院のシンボルとなっている大仏塔は19世紀に入り、ラーマ2世の時代になってから建設が始まり、次のラーマ3世の時代になって完成しました。水面からの高さ75メートル。中心の大塔を4つの小塔が取り囲む構造は、須弥山(仏教の世界観で世界の中心にそびえる山)を表現したものだといわれており、大塔の表面は色鮮やかなタイルで覆いつくされています。

 今回ご紹介の切手は、1905年12月から使用されたもので、前シリーズの1899年シリーズ同様、ドイツ・ライプツィヒのギーゼッケ・ウント・デヴリエント社で製造されました。

 ちなみに、この切手は、ワット・アルンを取り上げた最初の切手というだけでなく、仏教関係の題材を取り上げた世界最初の切手です。1893年以降、タイは世界各国に対してタイ文字版『三蔵経』の配布を開始し、タイにも西洋キリスト教社会の『聖書』に匹敵する精神的支柱が存在することを示すとともに、自国の近代性をアピールしようとしていますが、この切手の発行も、こうしたタイの宣伝戦略の延長線上にあったとみなすことができます。

 さて、今回、罰金を科された米国人の2人組は、38歳と36歳の同性愛のカップルで、世界各地で尻を出した写真を撮影し、インスタグラムに投稿しています。

 タイでは仏教に対する冒瀆は犯罪として処罰の対象となるため、警察としては、当初、彼らの逮捕も視野に入れていたようです。ところが、警察が写真投稿の事実を確認した時点で、2人はカンボジアに出国していたため、処罰は難しいとみられていました。それが、先月28日になって、2人がバンコクの空港で再入国を試みたため、入管当局が身柄を拘束。そのうえで、警察は問題となった写真の撮影場所が寺院から離れていたため、仏教冒瀆罪での逮捕を断念し、代わりに、公共の場所でわいせつ行為をしたとして、2人にはそれぞれ5000バーツ(約1万7000円)の罰金を科すことで決着しました。

 当初、僕は2人が尻を出した写真を各地で撮影し、インスタグラムに投稿していると聞いて、ゲイの権利擁護・拡大のための活動家かと思ったのですが、警察の取調に対して、2人は「目立ちたかった」と供述しているそうですから、単なる愚か者ということなのでしょう。まぁ、同性愛が禁止されている国家で抗議の意思を示すために自らの尻を出すという活動家なら、そもそも、同性愛者に対しては寛容なタイを活動の場には選ばないでしょうし、そもそも、写真を公開した後に再入国なんてしないでしょうから…。

 なお、ワット・アルンとその切手については、切手紀行シリーズ拙著『タイ三都周郵記』でもいろいろとご紹介しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。


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