内藤陽介 Yosuke NAITO
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
World Wide Weblog
 ハンガリー総選挙、与党が圧勝
2018-04-09 Mon 12:21
 ハンガリーで、昨日(8日)、総選挙が行われ、オルバーン・ヴィクトル首相率いる保守系与党“フィデス・ハンガリー市民連盟(以下、フィデス)”が、前回に続いて圧勝しました。というわけで、きょうは、この切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      ハンガリー・ナジ・イムレ(1996)

 これは、1996年にハンガリーで発行された“1956年革命(ハンガリー動乱)40周年”の記念切手のうち、ナジ・イムレを取り上げた1枚です。
 
 第一次大戦の敗戦により広大な国土を失ったハンガリーは、第二次大戦では、旧領土の回復を目指して枢軸陣営に加わり、ソ連と戦いました。

 しかし、結局、第二次大戦も敗戦に終わり、ハンガリーはソ連の占領下に置かれて王制が廃止。1949年にはソ連の衛星国として共産化され、スターリンの意向に忠実なラーコシ・マーチャーシュが首相兼ハンガリー勤労者党(共産党)書記長として、スターリン路線を推進することになりました。

 1953年にスターリンが亡くなると、後継のフルシチョフはスターリン批判を行い、スターリン時代の政策を修正し始めます。衛星国のハンガリーでは、ソ連の意向を受けてスターリン路線に批判的な改革派のナジ・イムレが首相となり、経済改革を進めようとしましたが、書記長の座に留まったラーコシは1955年にナジを追放。そのラーコシも1956年7月にソ連の圧力で権力の座を追われてしまいました。そして、後継書記長となったのが、ラーコシ以上に強硬なスターリン主義者のゲレー・エルネーでした。

 敗戦により心ならずもソ連の衛星国にさせられたハンガリーの人々はナジの失脚とスターリン主義者の復活に反発。首都ブダペストでは、1956年10月23日、市民の大規模デモが発生し、反ソ感情が高まるなか、ゲレー退陣を求めるデモ隊と警官隊との衝突を機に、大規模な暴動が発生し、ハンガリー全土に波及します。

 いわゆるハンガリー動乱(ハンガリーでは“1956年革命”と呼ばれています)です。

 動乱当初、ソ連は懐柔策としてナジの復権とゲレーの辞任を決め、ナジによる平和的な事態の収拾を期待していました。しかし、脱ソ連化を求める市民の声に押されたナジは複数政党制の導入と(=共産党一党独裁の否定)ハンガリーの中立国化(=ワルシャワ条約機構からの脱退)を打ち出す。このため、ソ連が軍事介入してハンガリーの“革命”を武力で鎮圧。ナジも逮捕されます。

 その後、ソ連の支援を受けたカーダール・ヤーノシュが実権を掌握しましたが、1957年半ばまでは共産党政権に対する散発的な武力抵抗やストライキが続きました。結局、一連の動乱は、1958年6月、事態の鎮静化を待って、ナジが処刑されたことでようやく終結。以後、1989年の民主化まで、ハンガリー社会主義労働者党(勤労者党から改称)による一党独裁体制が続きました。

 今回、総選挙で勝利を収めたフィデスは、共産政権末期の1988年3月、大学の寄宿自主研究施設であるビボー・イシュトヴァーン・コレギウムで“青年民主同盟”として結成されたのがルーツで、結成直後、官憲により解散を迫られています。強力な反共主義を掲げ、6月16日のナジ・イムレ首相処刑記念日、10月23日のハンガリー動乱記念日での非合法集会、ルーマニアのチャウシェスク政権によるハンガリー少数民族村の破壊抗議デモ、共産党政権によって進められたドナウ川景観地のダム建設反対運動、プラハの春へのソ連軍介入抗議デモなどに参加。1989年6月、名誉回復されたナジ元首相の葬儀が行われた際には、オルバーン(現首相)が、ソ連軍の駐留とハンガリー社会主義労働者党(共産党)による一党独裁を批判する演説を行い、一躍名を挙げました。

 民主化後、フィデスは雌伏10年を経て、1998年の総選挙では社会党有利とする事前予想を覆して勝利を収め、独立小農業者党やハンガリー民主フォーラムとの連立により、第一次オルバーン政権が誕生。2002年の総選挙でフィデスは敗北したため、いったん下野しますが、2010年4月の総選挙でフィデスが3分の2の議席数を確保する地すべり的勝利を収めると、オルバーンも8年ぶりに政権に復帰。現在まで、オルバーン政権が続いています。

 なお、フィデスに関しては、欧米の左派系のメディアで、“極右”、“反EU”などと報じられることも多いのですが、実際のフィデスの政策は、キリスト教民主主義・保守主義の中道保守というべきものがほとんどで、EU脱退を主張したことも一度もありません。

 * 昨日(8日)の拉致被害者全員奪還ツイキャスの内藤の出演回は、無事、終了いたしました。お聴きいただいた皆様ならびにスタッフの皆様、ありがとうございました。

 
★★ 内藤陽介の最新刊 『パレスチナ現代史 岩のドームの郵便学』 ★★

      パレスチナ現代史・表紙 本体2500円+税

 【出版元より】
 中東100 年の混迷を読み解く! 
 世界遺産、エルサレムの“岩のドーム”に関連した郵便資料分析という独自の視点から、複雑な情勢をわかりやすく解説。郵便学者による待望の通史!

 本書のご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。
スポンサーサイト

別窓 | ハンガリー | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑
<< シベリア抑留、銃殺刑判決を確認 | 郵便学者・内藤陽介のブログ |  花まつり>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
copyright © 2006 郵便学者・内藤陽介のブログ all rights reserved. template by [ALT-DESIGN@clip].
/