内藤陽介 Yosuke NAITO
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 アウシュヴィッツ跡地で“生者の行進”
2018-04-13 Fri 13:42
 ポーランド南部オシフィエンチムにあるナチス・ドイツのアウシュヴィッツ・ビルケナウ収容所跡地で、きのう(12日)、ホロコーストの犠牲者を悼み、毎年恒例の“生者の行進”が行われました。というわけで、きょうはこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      アウシュヴィッツ葉・タイプ2(地名印)

 これは、1943年2月9日、アウシュヴィッツ収容所の収容者がチェンストホヴァ宛に差し出した葉書で、タイプ2と呼ばれるフォーマットの葉書が使用されています。

 1939年9月、ポーランドに侵攻したナチス・ドイツは、1940年5月、ポーランド南部のオシフイエンチム(ドイツ語名アウシュヴィッツ)郊外の旧ポーランド軍兵営をアウシュヴィッツ第1強制収容所として、犯罪常習者とポーランド人政治犯の収容を始めました。その後、ブジェジンカ(ドイツ語名ビルケナウ)に第2、モノヴィツェ(ドイツ語名モノヴィッツ)に第3収容所が設置され、1945年1月にソ連軍が解放するまでの間に、100万人のユダヤ人と、25万人以上の非ユダヤ人が計3ヶ所の“アウシュヴィッツ強制収容所”で犠牲になりました。

 収容者には、当初、専用の封筒と便箋が支給され、外部への通信用に用いられていました。しかし、1941年6月の独ソ戦勃発を経て、1942年1月のヴァンゼー会議で「ユダヤ人問題の最終解決」が決定されると、アウシュヴィッツに移送されてくる収容者の数は激増。これに伴い、おそらく収容者に対して封筒と便箋を別々に支給する製造および管理コストを効率化するため、1942年に入ると、収容者には封筒と便箋に代えて、厚手の用紙を使った専用葉書が支給され、使用されるようになりました。

 収容者用の葉書には、当初、封筒のフォーマットをそのまま転用した文面を踏襲した“タイプ1”と呼ばれるものが使われていましたが、1943年になると、今回ご紹介のタイプ2の葉書が使用されるようになります。

 タイプ2の葉書は、収容所の銘が“Konz.-Lager Auschwitz”と省略形になっており、文字のフォントも変更されています。また、表面左側に印刷されている注意事項の文面では、封筒とタイプ1の葉書では収容者(複数形)を示す語として“Gefangenen”が用いられていたのに対して、タイプ2の葉書では“Häftlingen”の語が用いられています。ただし、これは文意を大きく変えるものではありません。

 内容的な変更としては、第1項のうち、封筒とタイプ1の葉書では、収容者宛の郵便物に同封できる切手が“12ペニヒのみ”とされているのに対して、タイプ2の葉書では“12ペニヒまたは6ペニヒ”に変更されており、収容者が葉書を差し出すことを想定した改定になっており、実際、この葉書にも6ペニヒ切手が発行されています。

 さて、“生者の行進”は、毎年、イスラエルのホロコース記念日(ヨム・ハショア。ユダヤ暦第1月27日)に、虐殺された人々を追悼するのみならず、“ユダヤの民の不死の魂について証言するため”に行われています。いまから30年前の1988年、ナチスによるユダヤ人虐殺はなかったと主張する人々に反論するために開始されたもので、当初は隔年開催で参加者もユダヤ人に限られていましたが、1995年から毎年開催となり、現在は、非ユダヤ人も参加しています。ちなみに、今年の行進には、ポーランドとイスラエルの派遣団を含む数千人が参加しました。

 なお、アウシュヴィッツ収容所とその郵便については、拙著『アウシュヴィッツの手紙』でも詳しくご説明しておりますので、機会がありましたら、ぜひお手にとってご覧いただけると幸いです。


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