内藤陽介 Yosuke NAITO
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
World Wide Weblog
 ガザで最長・最深の地下トンネルを破壊
2018-04-16 Mon 17:57
 イスラエル国防軍(IDF)は、きのう(15日)、パレスチナ自治区ガザを起点にイスラエル領内数十メートルまで延びている地下トンネルを破壊したと発表しました。今回、破壊された地下トンネルは、これまで破壊した中で最も深く、最も長いトンネルだったそうです。というわけで、きょうはこんなモノを持ってきました。(以下、画像はクリックで拡大されます)

      パレスチナ自治政府・ジャバリヤ→アナブタ

 これは、2000年9月23日、ガザ地区のジャバリヤからイスラエル経由でヨルダン川西岸のアナブタ宛に差し出されたものの、名宛人不在で差出人戻しとなった書留便です。当時の郵便料金では、パレスチナ自治区相互間の基本料金は150フィルス、書留料金は500フィルスですので、このカバーに貼られている計650フィルスは料金としては合っています。なお、英委任統治時代の切手を描く150フィルス切手は、このカバーが差し出された時点では自治区域外の郵便物には無効とされていましたので、本来であれば、イスラエルを経由する時点でその分が料金不足とされる可能性もあったのですが、宛先が自治区の域内ということで大目に見られたようです。

 パレスチナ自治区内で飛び地の関係にあった西岸地区とガザ地区の間の郵便交換は、イスラエルとガザ地区の境界にあるメヴォ・アッザに設けられたイスラエル側の交換局を通じて行われることになっていました。ちなみに、今回のカバーの裏面には、メヴォ・アッザ局を経由したことを示すの楕円形の印が押されています。その画像を下に貼っておきます。

      パレスチナ自治政府・ジャバリヤ→アナブタ裏

 カバーの両面に押された郵便印をたどってみると、このカバーは、2000年9月13日にジャバリヤから差し出された後、翌14日にガザ中央局、18日に交換局のメヴォ・アッザ局を経て、19日、西岸地区のラーマッラーの集中区分局に持ち込まれました。そこから、21日、配達を担当するアナブタ局に運ばれたものの、名宛人不在だったため、24日にラーマッラーの集中区分局を経由して、27日にガザ中央局に戻されました。もちろん、この逓送路は合法的な正規のルートで、地下トンネルで運ばれたわけではありません。

 さて、1967年の第三次中東戦争以降、ガザ地区を支配下に置いたイスラエルは、治安上の理由から、ガザ地区との境界を管理し、出入りを厳重に制限するようになりました。また、1979年にエジプト・イスラエル和平が成立すると、エジプトはガザ地区との国境沿いにフィラデルフィア・ルートと呼ばれる緩衝地帯を設置。国境を封鎖し、わずかな正規の貿易目的以外の通行を禁止しました。

 こうした背景の下、1997年、フィラデルフィア・ルートの地下に、エジプトとガザ南部を結ぶ秘密の地下トンネルが掘られていることが発覚。その後、複数の地下トンネルが、ガザ地区への武器弾薬や麻薬などの非合法の品々の密輸入のみならず、ガザ内外の人の往来にも使われるようになります。

 さらに、2007年にイスラム原理主義組織のハマスがガザ地区を掌握すると、イスラエルによるガザ地区の封鎖はさらに厳しくなりましたが、これに対応して、地下トンネルは、食料、衣類、タバコ、酒、建築資材、必須医薬品、さらに車までも輸送する物流ルートとして機能するようになります。なお、車に関しては、当初は、トンネル経由で部品を密輸し、運び込んだ先で組み立てられていましたが、最近では、車がそのまま走行できる広さのトンネルもあると言われています。なお、地下トンネルは、あくまでも非合法の存在であるため、その実数を把握することは困難ですが、標準的なトンネルの建設費はおよそ10万ドルで、数百本が運営されていると言われています。

 ちなみに、パレスチナ自治区の切手と郵便については、拙著『パレスチナ現代史 岩のドームの郵便学』でもいろいろご説明しておりますので、機会がありましたら、ぜひお手にとってご覧いただけると幸いです。


★★★ トークイベントのご案内 ★★★

 4月21日(土)12:30より、東京・浅草で開催のスタンプショウ会場内で、5月刊行予定の拙著『チェ・ゲバラとキューバ革命』の事前プロモーションのトークイベントを行います。よろしかったら、ぜひ遊びに来てください。なお、詳細は主催者HPをご覧いただけると幸いです。

      ゲバラ本・仮書影

(画像は書影のイメージです。刊行時には若干の変更の可能性があります) 


★★ 内藤陽介の最新刊 『パレスチナ現代史 岩のドームの郵便学』 ★★

      パレスチナ現代史・表紙 本体2500円+税

 【出版元より】
 中東100 年の混迷を読み解く! 
 世界遺産、エルサレムの“岩のドーム”に関連した郵便資料分析という独自の視点から、複雑な情勢をわかりやすく解説。郵便学者による待望の通史!

 本書のご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。
スポンサーサイト

別窓 | パレスチナ自治政府 | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑
<< ボストン・マラソンで川内が優勝 | 郵便学者・内藤陽介のブログ |  世界の切手:東ドイツ>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
copyright © 2006 郵便学者・内藤陽介のブログ all rights reserved. template by [ALT-DESIGN@clip].
/