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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手歳時記:五月の花束
2018-05-09 Wed 01:50
 公益財団法人・通信文化協会の雑誌『通信文化』2018年5月号ができあがりました。僕の連載「切手歳時記」は、今回はこの1点を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      日本国憲法施行・五月の花束

 これは、1947年5月3日に発行された“日本国憲法施行”の記念切手のうち、五月の花束を描いた1円切手です。

 日本国憲法の公布は1946年11月3日のことでしたが、新憲法関連の記念切手発行の具体的な計画が立案されるようになったのは、公布まであと2ヶ月弱となった9月中旬のことで、記念切手発行の概要が正式に決定された時には、すでに11月3日の公布まで残り1ヶ月をきった10月10日になっていました。当然のことながら、記念切手は新憲法の公布に間に合わせることはできず、翌年5月の施行にあわせて発行することとされ、図案の懸賞公募が行なわれます。

 なお、図案公募の際には、切手の記念銘は「改正憲法施行記念」とすることとされていました。これは、「日本国憲法」が戦前の「大日本帝国憲法」の改正によって成立したとの形式をとっていたことをふまえたものでしたが、実際に発行された切手では「日本国憲法施行記念」と改められています。

 公募の結果、1等には「議事堂に鳩を配して平和の表現を主張した図案」(中尾龍・広島)、2等には「花束」(堀本正親・奈良)、「議事堂と門扉」(大越英男・埼玉)、「幼児を抱いた婦人と議事堂」(釜谷市太郎・東京)が、それぞれ選ばれました。

 本来であれば、これら入選作品のうち、1等の中尾作品が切手に取り上げられるのが自然ですが、審査委員会の席上、中尾作品は、画材・構図とともに当時の封緘葉書の料額印面に似ているという理由で、一部委員から、切手図案として採用することに異議が唱えられ、1等でありながら不採用となってしまいます。

 このため、2等の3作品のうち、堀本作品と釜谷作品が切手図案に採用されることとなり、大越作品はポスター図案に採用ということで決着しました。ただし、堀本作品と釜谷作品は、いずれも、そのままでは縮写して切手の図案にするには不備な点があったため、切手の原画とするためには、逓信省(当時)の専門家が修正を施しています。

 このうち、花束を描く堀本作品の修正作業は加曾利鼎造が担当し、原作の左右にあった柱が取り除かれたほか、原作では必ずしも種類を特定できなかった花は、実際に5月に咲く花になっています。なお、新憲法の施行に相応しいものとして加曾利が選んだ花と、その花言葉は以下の通りです。

 カキツバタ:使命、音信
 フジ:歓迎
 ツツジ:節制
 スズラン:幸福の帰来
 ノバラ:希望
 (赤い)ツバキ:永続、または秀高にして驕りなきこと
 オリーブ:平和

 ところで、この切手の制作作業が進められていた時期は、戦後のインフレが急進していた時期で、切手発行直前の昭和22年4月には郵便料金の改正が予想されていました。

 このため、新憲法施行の記念切手も改正後の料金体系にあわせて制作できればよかったのですが、原画の修正作業が行われていた時点では、新料金についての具体的な見通しは立っていませんでした。

 そこで、苦肉の策として、最悪の場合には、記念切手を補助用の額面として使用することも想定して、議事堂と母子像の額面は50銭とし、花束は1円とされます。

 結局、4月の料金改正では、封書基本料金が30銭から1円20銭に、葉書が15銭から50銭に、それぞれ値上げされました。このため、議事堂と母子像の切手は葉書料金に対応したものとなりましたが、花束の1円切手は補助用として使用されることになりました。


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