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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 世界禁煙デー
2018-05-31 Thu 05:13
 きょう(31日)は“世界禁煙デー”です。僕自身は煙草を嗜みませんし、煙草を吸う人が周囲の吸わない人へ配慮するのは当然のことだと思っています。しかし、あたかも禁煙・嫌煙を錦の御旗として、問答無用で煙草を悪と決め付け、何が何でも煙草を排除しようとする“禁煙活動家”のほうが、煙草の煙よりもはるかに不愉快です。というわけで、あえて、こんな切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      キューバ・冶金工業組織化50年

 これは、2014年にキューバが発行した“チェ(・ゲバラ)による冶金工業組織化50年”の記念切手のうち、工業大臣として葉巻をくわえるゲバラと冶金工場が取り上げられています。

 もともと、医師であり、自らも喘息の持病を抱えていたゲバラには喫煙の習慣はなく、メキシコでフィデル・カストロらキューバの革命派と付き合うようになった際にも、健康上の理由から、彼らに禁煙を勧めていました。しかし、シエラ・マエストラ山中でのゲリラ生活を始めると、現地の農民の生活の知恵として葉巻が虫除けに利用されており、また、実際にその効果もあったため、チェを含むゲリラ全員に葉巻を吸う習慣が定着することになります。

 1959年の革命後、同年10月、農業改革局(INRA)の工業部長に就任。1961年2月24日に工業省が新設されると初代工業大臣に就任し、キューバの工業化を進めるべく奮闘しました。その一環として、彼はキューバの特産品をアピールする意図を込めて、写真撮影の際には積極的に葉巻姿で応じています。

 葉巻大国のキューバではさまざまな銘柄の葉巻が生産されていますが、そのうち、彼が最も愛好したのは“モンテクリスト”だったと言われています。

 モンテクリストは、アレクサンドル・デュマの小説『モンテクリスト伯』にちなんで命名されたブランドで、1935年にH・アップマン工場で製造が開始されました。

 H・アップマンは、1844年、ドイツ人のヘルマンおよびアウグストのアップマン兄弟が創業したブランド。キューバ産葉巻の中では最古参のひとつで、比較的軽めのミディアム・ライトの味わいが英国市場で人気を博し、世界的なブランドとして有名になりました。

 かのジョン・F・ケネディ米大統領も、1962年、キューバ製品の禁輸措置法案が議会を通過し、大統領として署名する前夜、報道官を内々に呼びつけ、「どんな手段を使ってでもいい。少なくともH・アップマンを1000本確保するように」と厳命。はたして、翌朝、ホワイトハウスに1500本のアップマンが集められたのを確認してから、法案に署名したといわれています。明らかな職権濫用ですが、逆に言えば、それほど、H・アップマンは魅力的な葉巻だったわけです。

 もっとも、ブランドとしてのH・アップマンの経営は必ずしも順調ではなく、1922年以降、業績の悪化により、何度か経営母体が変わっています。そのなかで、1935年にH・アップマンを買収したアロンソ・メネンデスが経営再建の切り札として売り出したのが、モンテクリストでした。

 なお、当時の葉巻工場では、単調な作業でスタッフの集中力が途切れるのを防ぐため、作業中にさまざまな物語を朗読するのが習慣で、1935年に売り出された新ブランドの葉巻の場合、製造過程で人気のあった読み聞かせの物語が『モンテクリスト伯』だったため、それが命名の由来となりました。ちなみに、モンテクリストとならんでキューバを代表する葉巻のひとつとされる“ロメオ・イ・フリエータ(ロミオとジュリエット)”もまた、同じ理由による命名です。また、モンテクリストのブランドのロゴは、『モンテクリスト伯』の著者、デュマの別の代表作『三銃士』をイメージしたデザインとなっています。

 メネンデスは、新ブランドの投入とあわせて、工場を近代化することで、経営を立て直し、モンテクリストをキューバ三大シガーのひとつといわれるまでに成長させました。現在では、“チェが愛好した葉巻”というイメージ戦略も当たって、モンテクリストはキューバ産葉巻輸出の約25%を占めるほどになっている。

 モンテクリストは代表的な銘柄のNo.1-5以外にも、キューバ産葉巻としては最大サイズの“A”から、小さめのペティコロナサイズ、ミニシガリロまで種類は豊富で、いずれも、やや濃厚で深みがあり、樹木やナッツを思わせる香ばしい香りが感じられるのが特徴です。

 なお、ゲバラが愛好した葉巻として、キューバを代表するブランドのコイーバを挙げている文献が散見されますが、これは、歴史的に無理があります。

 すなわち、革命後まもない時期、カストロは護衛のチーチョが吸っていた“ランセロス”をいたく気に入りましたが、この葉巻は、市販品ではなく、チーチョの友人だったエドアルド・リベラが個人的にブレンドしたものでした。そこで、1968年、カストロは新たに建設した葉巻工場“エル・ラギート”の責任者としてリベラを迎え、政府要人用ないしは外交的な贈答用の高級葉巻の生産を開始します。これが、コイーバのルーツとなりました。

 したがって、リベラの個人的なブレンドはともかく、1967年10月にボリビア山中で亡くなったゲバラが、1968年から生産が開始されたコイーバを嗜むことは時系列的にありえません。

 なお、現在制作中の拙著『チェ・ゲバラとキューバ革命』では、トレードマークともいうべき葉巻を咥えたゲバラの切手・絵葉書も、いろいろとご紹介しております。正式な刊行日等、同書についての詳細が決まりましたら、このブログでも随時ご案内いたしますので、よろしくお願いします。

 *オマケ
 現在開催中の世界切手展<WSC Israel 2018>の会場と、エルサレムの国際コンヴェンションセンターの一角で、イスラエルの写真家、イツィク・カマの写真展「わがキューバ」が開催されており、その先頭には、こんな写真が展示されていました。

      イスラエル・ゲバラ写真

 2日に帰国したら、ネジを巻いてゲバラ本の作業を進めるようにとの天の声を聞いた気分です。


★★★ 近刊予告! ★★★

 えにし書房より、拙著『チェ・ゲバラとキューバ革命』が7月刊行予定です!
 詳細につきましては、今後、このブログでも随時ご案内して参りますので、よろしくお願いします。

      ゲバラ本・仮書影

(画像は書影のイメージです。刊行時には若干の変更の可能性があります) 

 なお、当初、『チェ・ゲバラとキューバ革命』は、2018年5月末の刊行を予定しておりましたが、諸般の事情により、刊行予定が7月に変更になりました。あしからずご了承ください。


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