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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手歳時記:天皇誕生日
2018-12-23 Sun 01:30
 ご報告が遅くなりましたが、公益財団法人・通信文化協会の雑誌『通信文化』2018年12月号ができあがりました。僕の連載「切手歳時記」は、平成最後の天皇誕生日にあわせて、この1点を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      立太子礼(明仁)小型シート

 これは、1952年12月23日に発行された“立太子礼記念”の小型シートです。

 天皇誕生日は、古くは“天長節”と言っていましたが、これは皇后誕生日の“地久節”とともに、『老子』第七章の「天長地久」に由来し、両陛下のご長寿をお祈りするという意味が込められていました。『老子』では「天長地久」に続けて「天地所以能長且久者、以其不自生、故能長生」とあり、天地が永久なのは、天地に自ら永久であろうとする意志がないからだと説明したうえで、“道”を知った聖人は無視無欲であると説いています。

 ところで、現実の君主が聖人であることは稀ですが、五経の『礼記』によれば、聖人が王となり、仁のある政治を行うときに現れるのが、霊獣の麒麟です。

 麒麟は、鳳凰、霊亀、應龍とともに中国の古代思想における“四霊”のひとつで、鹿の身体に、角の生えた狼の頭、牛の尾、馬の足と角を持つとされています。日本では、キリンビールのラベルのイメージが強いのではないでしょうか。なお、麒麟という語は、本来は、この霊獣の総称で、麒がオス、麟がメスです。

 今回ご紹介の小型シートには、麒麟を描いた5円および10円切手が収められています。

 立太子礼は、勅旨によって皇太子が天皇の後継者であることを内外に示すために行われる儀式で、皇位継承についての明確な規定のなかった明治以前には、皇位継承者の正式な発表の場として重要な意味を持っていました。明治以降は、天皇の長男が皇太子となることが制度として定められたため、儀礼的なお祝いとしての面が強調されています。

 1933年12月23日、昭和天皇の第一皇男子としてお生まれになった明仁親王(今上陛下)の立太子礼は、1947年に改正された「皇室典範」に基づき、当初、親王殿下が満18歳に達した1951年12月に行われる予定でしたが、当時のわが国は連合国の占領下で、立太子礼は予算規模71円の質素なものとして計画されていました。

 ところが、1951年5月、皇太后(貞明皇后=大正天皇の皇后)が崩御され、その諒闇中ということで立太子礼の儀式は一年延期。その間、1952年4月に講和条約が発効してわが国が独立を回復したことから、立太子礼は、同年11月10日、独立回復初の皇室の慶事として盛大に行われ、記念切手も発行されることになりました。

 立太子礼の記念切手については、当初、郵政省は肖像切手の発行を希望していましたが、宮内庁が首を縦に振らず、立太子礼の儀式の際、皇太子の証として天皇から授けられる秘法“壺切剣”が題材として選ばれます。しかし、剣は宮中の秘宝で、切手制作のために借り出して模写することが許されなかったため、郵政省は、1916年の裕仁親王(後の昭和天皇)の立太子礼を撮影した膨大な新聞写真の中から剣の写っているものを探し出し、宮内庁に確認のために照会しましたが、宮内庁側の説明によると、件の写真は合成したもので実物とは異なるとのこと。そこで、郵政省は文献資料を調査し、剣には海浦模様の蒔絵と麒麟の螺鈿が施されていること、正倉院御物、高御座、そして壺切剣の麒麟は基本的にはほぼ同じ形状であることを確認したうえで、正倉院御物を資料として切手のデザインを制作しました。

 このように、宮内庁との調整などに手間取ったこともあって、単片の記念切手は立太子礼当日の11月10日に発行されたものの、3種の切手を収めた小型シートは間に合わず、殿下18歳のお誕生日にあたる12月23日の発行となりました。


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この記事のコメント
#2474 皇后と皇太后
記事中に貞明皇太后(大正天皇の皇后)とありますが、正しくは貞明皇后ではないでしょうか。
2018-12-25 Tue 22:00 | URL | いわゐ將軍 #B7q/.fmY[ 内容変更] | ∧top | under∨
 いわゐ將軍様

 ご指摘ありがとうございます。
 皇太后(貞明皇后=大正天皇の皇后)に修正いたしました。
 今後ともよろしくご指導ください。
2019-01-11 Fri 14:21 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
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