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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手に見るソウルと韓国:1969年第2次経済開発5カ年計画
2019-02-06 Wed 10:46
 ご報告が遅くなりましたが、『東洋経済日報』1月18日号が発行されました。僕の月一連載「切手に見るソウルと韓国」は、今回は、ともかくも、2019年最初の掲載でしたので、干支にちなんで、こんなモノをご紹介しました。(画像はクリックで拡大されます)

      韓国・第2次経済開発特印

 これは、1969年5月20日に発行された“第2次経済開発”のキャンペーン切手とその初日印ですが、今回は、切手ではなく、豚の貯金箱が描かれたスタンプが主役です。

 日本では亥年の動物はイノシシですが、朝鮮半島では、中国同様、ブタです。

 朝鮮の伝統祭祀では神への供物としてはブタが用いられますが、あわせて、ブタには、神意を人々に伝え、物事を決定させる神通力があるとも考えられてきました。

 たとえば、高麗王朝を開いた太祖(在位918-43)の祖父、作帝健は西海龍王を悩ませていた老狐を退治し、その褒美として龍王の娘とブタを得ましたが、故郷に連れて帰ったブタは小屋に入ろうとしませんでした。そこで、ブタを放ち、ブタが落ち着いた松岳の南麓に落ち着いたのですが、ここが、孫の代になって高麗王朝の都、開城の元になったといわれています。

 また、漢字の“豚”の朝鮮語音、“トン”が金銭を意味する“トン”と同音であること、ブタは多産であることから、家に財産や福をもたらす守護神もしくは商売繁盛の財神ともみなされ、夢にブタが出てくるのは「服が来る」、「食べ物を得る」などの吉祥の暗示とされています。こうしたこともあって、新たな事業を起こすのは、陰暦正月の最初の亥の日が良いとの俗信もあります。ちなみに、ことしは、昨日の5日が陰暦元日なので、あす・7日の乙亥の日が最初の亥の日です。

 今回ご紹介の記念印に、ブタの貯金箱が描かれているのも、そうした事情を踏まえてのことでしょう。

 1965年、日本との国交正常化により、日本から総額8億ドル(無償3億ドル、政府借款2億ドル、民間借款3億ドル)の援助資金を得た韓国政府は、1967年、第2次経済開発5カ年計画を発動します。

 同計画の目玉のひとつは高速道路建設で、1968年には、ソウル=仁川間を結ぶ24キロの京仁高速道路が開通。以後、“全国の1日生活圏化(全国を1日で往復できるようにする)”を目標として、1970年6月にはソウルと釜山を結ぶ京釜高速道路も開通しました。切手の右上にも、歯車の中に高速道路のイメージが描かれています。

 切手の下部は貯金の窓口が描かれており、経済成長によって豊かになった国民に対して“勤勉貯蓄”に励むよう呼びかけるデザインです。ブタの貯金箱と工場を組み合わせた記念印のデザインも、国民の貯蓄が韓国の金融を強くし、産業建設につながるというイメージを表現したのでしょう。

 ところで、陰陽五行説では十干ごとに色がありますが、ことしの干支、己亥の己は黄色で、黄色が黄金を象徴することから、ことしは“黄金のブタ年”と考える韓国人も少なくないそうです。

 もっとも、前回、2007年の干支は丁亥で、丁はオレンジ色を意味するので、このときも“黄金のブタ年”という人がありました。

 “黄金のブタ年”に生まれた子は、うまれつき、財運と福に恵まれているとの俗信がありますがが、それが、丁亥なのか、己亥なのかは(俗信であるがゆえに)定かではありません。ただし、わが国で丙午の年に出生数が激減したことに見られるように、子供を作る夫婦の気分の問題というのは重要で、韓国では、丁亥の2007年の新生児は49万人で、前年の44万人を1割以上上回っています。このため、記録的な低出生率に悩む韓国では、今回もまた、子供の出産が例年より増えるのではないかと期待されています。

 ちなみに、古い伝承によれば、地下世界に住み、妖術を使うという“黄金のブタ”が、ある男の妻を拉致して自らの妻にしたことがありました。男は妻を探して地下世界を訪れ、豚を退治して妻を取り戻したが、妻は妊娠しており、黄金のブタの子を産みましたが、その子こそ、新羅末期の文人で朝鮮漢文学の祖ともされる崔致遠(858年生)だったといわれています。もっとも、崔致遠は朝鮮史に残る知の巨人ですが、新羅末期の乱世にあって志を進めることができずに官を辞し、晩年は海印寺に隠棲したと伝えられているので、“黄金のブタ”の子であっても、必ずしも財運に恵まれるとは限らないようですが…。


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