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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 表紙の切手
2019-02-25 Mon 01:59
 きょう(25日)は、拙著『チェ・ゲバラとキューバ革命』の奥付上の刊行日です。というわけで、プロフィール画像にも使っている表紙カバーで取り上げた切手についてご説明いたします。(画像はクリックで拡大されます)

      アイルランド・ゲバラ1A

 これは、2017年10月5日、アイルランドが発行した“チェ・ゲバラ没後50年”の記念切手のシート(初刷り)で、ジム・フィッツパトリックの制作した肖像画「英雄的ゲリラ」が取り上げられています。今回の拙著の表紙では、単片ではなく、シートの写真をトリミングして使いましたので、このブログでも景気よくシートをご紹介しました。

 ゲバラの曾祖父にあたるファン・アントニオ・ゲバラは、もともと、アルゼンチンで生活していました、19世紀半ばのゴールドラッシュ時代にカリフォルニアに移り、同地で祖父のロベルトが生まれます。ロベルトはカリフォルニアでメキシコ出身のアイルランド系女性、アナ・リンチと結婚し、1900年、ゲバラの父にあたるエルネスト・ゲバラ・リンチが生まれたという系図になりますので、ゲバラ本人はアイルランド系の血を引いていることになります。

 一方、ゲバラの肖像画として最も有名な「英雄的ゲリラ」を制作したジム・フィッツパトリックは、1946年、アイルランドのダブリン生まれ。ゴーマンストン・カレッジ在学中の1967年からグラフィック・アーティストとして活動していましたが、1967年10月、ゲバラの訃報を知ってゲバラの肖像ポスター制作を決意。翌1968年、左派色の強いドイツの雑誌『スターン』に掲載されていたアルベルト・コルダ撮影の「英雄的ゲリラ」をもとに、目線を少し上方に修正し(これにより、ゲバラの表情は、十字架の上で天上を見上げるキリストを連想させるものとなりました)、髪型も若干変更して、赤・黒2色のシルクスクリーンのポスターを制作しました。ポスターは初刷り1000部で、帽子の黄色い星はフィッツパトリックが自らマーカーを使って彩色したそうです。

 1000部のポスターは、当初、販売目的で英国全域に配布されましたが、すぐに、英国、アイルランド、フランス、オランダ、スペインなどの左翼活動家向けに原則として無償配布され、特に、フランスでは、折からの五月革命で大いに人気を博し、彼の作品が全世界に拡散していく大きな契機となりました。

 アイルランド郵政としては、ゲバラがアイルランド系の血筋であることに加え、20世紀のポップ・アートを代ひょする肖像画「英雄的ゲリラ」の作者、フィッツパトリックがアイルランド人であることから、ゲバラ没後50年の記念切手を発行したわけですが、この切手は、そのデザイン性の高さもあって、用意された12万2000シートはすぐに完売し、アイルランド郵政は、急遽、増刷しています。

 ちなみに、初刷りの切手と増刷分とでは、シートから切り離した単片の状態では肉眼での識別はほぼ不可能ですが、シートの状態であれば、初刷りの耳紙には1A、増刷分には1Bの表示があるので簡単に識別可能です。(下に、それぞれの耳紙部分を示しておきます)

      アイルランド・ゲバラ没後50年1-A(部分)

      アイルランド・ゲバラ没後50年1-B部分

 ところで、アイルランドが発行した“チェ・ゲバラ没後50年”の記念切手は大いに人気を博する一方で、少なからぬ人たちから強い反発を招いています。

 たとえば、アイルランド国内では、フィナ・ゲール党の上院議員、ニール・リッチモンドが、ゲバラをカンボジアのポル・ポトやルーマニアのニコラエ・チャウシェスクと比較したうえで「ゲバラは“階級の敵”と見なした何百人もの人を尋問し、投獄し、処刑した野蛮な男だ」、「彼は、(アイルランド国家の名を冠した切手に取り上げられるような)栄誉には最もふさわしくない人物だと、断固確信している」とアイルランド郵政を批難。また、亡命キューバ人コミュニティを擁するマイアミではこの切手に対する反発が特に強く、フロリダ州18区から選出されている米下院議員(共和党)で下院外交委員長のイリアナ・ロス=レイティネンもゲバラ切手には不快感をあらわにし、「(切手の発行は)ゲバラが“屠殺”した多くの人命に対するグロテスクな侮辱である」と激しく批難しています。

 さて、拙著『チェ・ゲバラとキューバ革命』では、このように、没後半世紀を経てなお毀誉褒貶が激しいゲバラについて、彼の生涯のみならず、彼の死後、「英雄的ゲリラ」が革命の聖像として神格化され、全世界に拡散していくプロセスについてもまとめています。機会がありましたら、ぜひお手にとってご覧いただけると幸いです。

 * 昨日(24日)、アクセスカウンターが202万PVを超えました。いつも閲覧していただいている皆様には、あらためてお礼申し上げます。 


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      チェ・ゲバラとキューバ革命 表紙カバー 本体3900円+税
 
 【出版元より】
 盟友フィデル・カストロのバティスタ政権下での登場の背景から、“エルネスト時代”の運命的な出会い、モーターサイクル・ダイアリーズの旅、カストロとの劇的な邂逅、キューバ革命の詳細と広島訪問を含めたゲバラの外遊、国連での伝説的な演説、最期までを郵便資料でたどる。冷戦期、世界各国でのゲバラ関連郵便資料を駆使することで、今まで知られて来なかったゲバラの全貌を明らかする。

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