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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 NIPPON字入り切手40年
2006-11-05 Sun 01:01
 早いもので、<JAPEX>も今日で最終日です。

 今回の<JAPEX>では、小判切手の特別展示や国際切手展の凱旋展示の影に隠れがちでしたが、万国郵便連合の規定に基づき、1966年に日本切手に“NIPPON”の表示が入ってから今年で40年という節目にあわせて企画した「ローマ字入り切手40年」の特別部門にも見ごたえのある作品が並んでいますので、是非、ご覧いただきたいところです。

 というわけで、今日はこんな1枚を持ってきてみました。(画像はクリックで拡大されます)

いせえび

 これは、1966年1月に発行された“お魚シリーズ”の第1集としてイセエビを取り上げたもので、“NIPPON”と表示された最初の切手です。以下、切手に“NIPPON”の文字が入るまでの経緯について、簡単にまとめておきましょう。

 1964年7月、万国郵便連合条約の新たな施行規則が締結され、その第178条第2項 により、切手類にはローマ字によって国名を表記することが義務づけられました。同条約の発効は1966年1月1日とされており、日本の国会も同年5月17日にこれを承認したため、1966年以降に発行される日本切手に関してもローマ字による国名表示が入ることが決まりました。

 ところが、日本の国名表示をローマ字でどのように表記するかという点については、容易には結論が出ませんでした。

 まず、郵政省が国会承認を得るために提出した条約の訳文を“ローマ字”ではなく“ローマ文字”としたことから、条文解釈の問題が発生します。すなわち、役所の用語では、“ローマ字”が、たとえば“NIPPON”のような、日本語のローマ字表記のことを意味しているのに対して、“ローマ文字”は、“JAPAN”ないしは“JAPON”のように外国人でも理解できる表示を意味しているというのです。

 この点については、まず、切手上の国名表記は“ローマ字”で表記されるということが確認されて解決しましたが、ついで、“日本”の読み方を“ニッポン”と“ニホン”のどちらかにするかという点で、議論が百出します。

 この点について、郵政省は文部省国語課に照会したものの、文部省側は“ニッポン”と“ニホン”の二通りの発音についての判断は全国民的な問題なので直ちに明確な回答はできないと返答。この問題については、その後も相当長期間にわたって慎重な姿勢をとり続けました。

 このため、場合によっては、1965年末発行の昭和41年用の年賀切手からローマ字の国名表示を入れることも検討していた郵政省としては、切手製造の必要から、独自の判断で国名表示を決めることを決定。郵務局管理課を中心に、国際業務係も加えて討議が行われた結果、①“NIHON”という表示だと“ニオン”と発音される可能性がある(たとえば、フランス語ではhの文字は読みません)、②“日本”の本来の発音は、“ニホン”と“ニッポン”の中間で“ニフォン”に近いといわれるので、“ニホン”にすると誤りのように聞こえる、③前年の東京オリンピックの際に“NIPPON”というという呼称が使われても、なんら支障がなかった、などの理由から、郵政省独自の立場として“NIPPON”を切手上の国名表示とすることが決定されます。

 この決定は、九月十日の閣議で郵政大臣(郡祐一)から報告されて閣議で了承されましたが、閣議後、首相の佐藤栄作は「国名のローマ字表示についてはいろいろなものがあるようだが、総理府の公式制度連絡調査会議で検討し、早急に正式結論を出してほしい」との異例のコメントを発表しました。

 実際、“日本”のローマ字表記を“NIPPON”としたことに対しては、各界から異論が続出し、当時の人気テレビ番組『時事放談』 でも、政治評論家の小汀利得が「そんな馬鹿な話ってあるもんじゃない、本来は当然ニホンと読むもので、時により発音しやすいようニッポンともなることがあるだけ、どちらが正しいどちらが間違いだと決めようとすること自体がおかしい。…(中略)…大体こんなことを命じる佐藤総理自体が馬鹿なんだ」と発言。現在のように、“ニッポン”という読み方が定着するまでには、相当の紆余曲折があったことをうかがわせます。

 さて、こうして誕生した“NIPPON”の表示が入った切手も発行から40年が経ち、歴史の洗礼を受けて、さまざまな面白いマテリアルが生まれています。今回の「ローマ字入り切手40年」の展示では、主として1960年代後半、高度成長期の日本で日常的に使われていた“なつかしの切手”を中心にした作品がズラリと並んでいます。会期も今日までですので、まだ、ご覧いただいていない方は、是非、会場までお運びいただけると幸いです。

 なお、“お魚シリーズ”についての詳細は、拙著『解説・戦後記念切手Ⅲ 切手バブルの時代』をご参照ください。
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