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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 世界亀の日
2020-05-23 Sat 01:56
 きょう(23日)は“世界亀の日”です。というわけで、亀の切手の中からこの1枚を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      韓国・亀(1952年・500ウォン青)

 これは、朝鮮戦争中の1953年4月3日、韓国が発行した500ウォンの普通切手で、慶州・武烈王陵の亀趺(石碑を立てるための亀型の台座)が描かれています。

 中国の伝説では、龍の子として生まれた贔屓は、背に甲羅を持ち、亀に似た姿をしていますが、亀と違って、頭に角があります。重いものを好んで背負うとされていることから、石柱や石碑の土台の装飾に用いられ、古い時代には“贔屓趺”が盛んにつくられました。ちなみに、「贔屓の引き倒し」は、柱の土台にある贔屓を引っぱると柱が倒れることに由来しています。

 ところで、厳密にいうと、贔屓と亀は別のものなのですが、角のある贔屓は想像上の動物で誰もその姿を見たことがないため、次第に、角のないだけで姿がよく似た亀と混同され、次第に、贔屓趺ならぬ亀趺が作られるようになります。さらに、中国では、亀は万年の寿齢を保つ霊獣とされてきたことから、亀の背にある人物の業績を記した碑を載せることで、その碑が永遠に残ることを念じる意味合いが付与されたことで、いつしか、贔屓趺にかわり亀趺が定着することになりました。

 今回ご紹介の切手に取り上げられた切手には、もともと武烈王(在位654-61)の事績を記した碑が立てられていましたが、石碑の本体は現存していません。武烈王は新羅第29代の王で、660年、唐と連合して百済を滅ぼし、翌661年、やはり唐との連合により高句麗と戦うべく軍を北上させている途中で陣没した人物です。新羅による三国統一の基礎を築いたとして太宗の廟号を贈られ、現在の行政区域でいう慶尚北道慶州市西岳洞の王陵に葬られました。“滅共統一”を掲げて北朝鮮と戦っていた李承晩としては、自らも武烈王にあやかろうとしたのかもしれません。なお、武烈王陵の亀趺は甲羅の上の龍の彫刻が見事なことから、韓国の国宝第25号にも指定されています。

 ところで、1952年9月20日、韓国では、戦時インフレに対応して書状の基本料金が300ウォンから1000ウォンに、葉書料金が200ウォンから500ウォンに値上げされ、これに対応して、今回ご紹介の切手と同じデザインで赤色の500ウォン切手が発行されました。

 その一方で、韓国逓信部は、前年(1951)末の公告で、朝鮮戦争開戦以前に発行された切手・葉書類は、1952年以降は無効とすると発表していましたが、1952年の料金改定の際にも、新料金に対応した新たな葉書を調整する余裕はなく、米軍政下の1946年に日本の印刷局が製造した“解放葉書”の在庫を使用せざるを得ないのが現実でした。

 そこで、1952年12月25日、とりあえず、無効となった解放葉書の用紙をそのまま活用し、葉書の印面を“滅共統一”の文字で抹消するとともに、500ウォン切手と同じ亀趺のデザインで、紺色の500ウォンの印面を加刷した葉書が発行されます。さらに、翌1953年4月2日には、あらためて今回ご紹介の切手を発行し、解放葉書の印面に貼り付けたうえで郵便局の窓口から発行することになりました。

 なお、この切手を貼った葉書が世に出る前の2月15日には、韓国では戦時インフレ対策として、大統領緊急命令第13号が告示され、旧100ウォンを1ファン(圜)する(対ドル交換レートは旧ウォンからそのままスライドして、1ドル=60ファン)通貨改革が行われています。これにより、同月17日から25日までの9日間で新旧通貨の交換が行われ、1兆134億8300万ウォン相当の旧ウォン紙幣実物の回収と1070億5200万ウォン相当の支払指示により、合計1兆1205億3500万ウォンが市中から改修され、新通貨として76億5200万ファンの流通が開始されました。

 これに伴い、葉書の料金も旧500ウォンから5ファンに変更されましたが、旧ウォン表示の切手は旧100ウォンを1ファンに読みかえて使用が継続され、今回ご紹介の切手も、5ファン切手と読み替えて使われています。

 ちなみに、この辺りの事情については、拙著『朝鮮戦争』でもいろいろまとめておりますので、機会がありましたら、ぜひお手に取ってご覧いただけると幸いです。


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