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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 台湾・高雄市長のリコール成立
2020-06-07 Sun 03:58
 台湾で、きのう(6日)、韓国瑜・高雄市長に対するリコール(解職請求)の賛否を問う住民投票が実施され、賛成票が90万票を超えてリコールが成立しました。台湾の市長がリコールで罷免されるのは韓氏が初めてです。というわけで、きょうはこの切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      台湾・左営蓮池(1961)

 これは、1961年に台湾が発行した観光宣伝切手のうち、高雄のランドマークである左営区の蓮池潭を取り上げた1枚です。

 蓮池潭はもともと“蓮潭”と呼ばれていた湖で、72ヘクタールの広さがありましたが、清代の1686年に池の一部を埋め立てて湖畔に孔子廟を建立し、池を廟宇の泮水として蓮を植えたため、現在のように“蓮池潭”と呼ばれるようになりました。なお、その後も、環潭道路の建設のために埋め立てられため、現在の池の面積は42ヘクタールになっています。

 切手の左側に見えるのは、1953年に建てられた4階建ての二つの楼閣、春秋閣(春閣と秋閣、それぞれ4階建て)で、“武聖關公(関羽)”が祀られています。また、画面中央には、半分は急な斜面、半分は緩やかな斜面という独特の形をした“半屏山”が描かれています。

 なお、現在、蓮池潭には、高雄のランドマークとなっている龍虎塔(1974年建立)や、高さ72メートルの玄天上帝像(1995年建立)などがありますが、いずれも、今回ご紹介の切手が発行された時点では存在しておらず、切手にも描かれていません。参考までに、2008年に現地を訪れた際に撮影した龍虎塔と玄天上帝像の写真も下に貼っておきます。

      高雄・龍虎塔
      高雄・玄天上帝像

 さて、今回のリコールが成立した韓市長は、1957年、台北県(現新北市)中和区生まれ。台北農産運銷公司総経理(台北市青果市場社長)、台北県議員、立法委員(国会議員)などを歴任した後、2018年11月、民進党の牙城と目されていた南部・高雄市の市長選に出馬し初当選を果たしました。国民党の親中派として知られ、2019年3月18日には、中国製品の加工貿易を念頭に、国民党が立法院に提出した「自由貿易経済特区条例」草案を支持する声明を他の国民党系県市長と共同で発表しています。

 ところで、韓市長は、就任当初、2020年の次期総統選には不出馬せず、市長としての任期を全うすると公約していましたが、熱心な支持者に押されるかたちで、当選からわずか半年後の2019年6月8日、国民党の公認候補を決める予備選挙への立候補を正式に表明。7月15日の予備選挙では“庶民総統”を掲げ、国民党の候補指名を獲得しました。

 この間、6月9日には、高雄市内で端午節のイベントに出席後、香港で発生した反送中デモに対する見解を求められた際に「よく知らない」と答えたことで批判を浴びたほか、6月30日にデング熱発症者が市内で確認された際にも市政府の初動の遅れが批判を受けていました。

 さらに、多発する市内の豪雨水害の発生直後に20時間ほど消息不明となったことで『神隠少女(日本のアニメ映画:千と千尋の神隠し)』と揶揄されるなど、市民からは、総統選不出馬の公約違反や失政の責任を問う声が上がるようになり、昨年6月末以降、一部では罷免のための署名運動が行われていました。

 こうした状況の下、2019年9月24日、市議会で定時閉会が可決されます。高雄市以外にも議会の定時閉会を定めている自治体はありますが、その場合でも、質疑順序についての抽選は実施するものの、質疑の人数を制限することは行われていません。ところが、高雄市では、市議会の定時(18時)閉会を目指す一環として、定数66に対して質疑に参加できる議員を2割以下の12人に限定したため、議会が猛反発。翌25日には、議員の権益を侵害しているとして行政法院への提訴に踏み切っています。

 このほかにも、国籍や性別をめぐる差別的な失言を繰り返していたこともあり、1月の総統選挙では再選を目指す蔡英文総統に惨敗。その後、市長に復職していましたが、香港問題やウイルス問題などの反中世論の高まりの中で、今回のリコール成立となりました。

 今後、台湾の公職人員選挙罷免法に基づき、正式な結果は投票終了後7日以内に選挙委員会によって公表されることになっており、韓氏は遅くとも12日までには市長職を解かれる見通しです。また、市長の“補欠選挙”は9月12日までに実施され、市長が決まるまでは行政院(内閣)から派遣される人が市長代理を務めることになっています。

 ちなみに、高雄の地名は、平埔族マカタオ族の言語で“竹林”を意味する集落“タアカウ社”がその起源で、もともと、漢字では“打狗(台湾語の発音はTáⁿ-káu, ターカウ)”と表記されていました。しかし、日本統治時代の1895年、“打狗”という文字が卑俗であるとして、台湾総督府が、内地の地名の中から、発音の近い“高雄”を選んで改称したという経緯があります。今回は、その原点に帰って、“中国の狗”とみなされた市長が打ちのめされたということになるんでしょうかね。
 

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