内藤陽介 Yosuke NAITO
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 試験の解説(3)
2005-07-24 Sun 09:29
 今回の試験では、問題用紙のスペースの関係から、切手と消印の部分しか出しませんでしたが、このブログではカバー(封筒)の全体像を示して説明します。

リション・レツィオン

第一次大戦中のイギリスの二枚舌外交の結果、イギリス委任統治下のパレスチナでは、在地のアラブ系住民とユダヤ系入植者の対立が絶えませんでした。特に、第二次大戦中、イギリスはマクドナルド白書を発してユダヤ系移民の受け入れを制限し、将来的にアラブ主導の独立国を作ることを約束するなどしたため、ユダヤ系は反発。一部の過激派は反英テロを繰り返すようになました。

 この結果、大戦で疲弊したイギリスは自力でパレスチナ問題を解決する意欲と能力を失い、1947年2月、問題の解決を国連にゆだねると一方的に宣言。このため、国連は同年5月、パレスチナ問題特別委員会を設立し、パレスチナにアラブ、ユダヤの2独立国を創設し、エルサレムとその周辺は国連の信託統治下に置くというパレスチナ分割案を発表。この分割案が、同年11月29日、国連決議第181号として採択されます。

 しかし、この分割案はユダヤ系に有利な土地の配分になっていたため、アラブ側は猛反発し、反ユダヤ暴動が頻発するようになります。こうして、国連決議に基づいてユダヤ国家の創設を既成事実化しようとするユダヤ系と、それを阻止しようとするアラブ系の間でテロの応報が繰り広げられ、パレスチナは事実上の内戦状態に突入していきました。

 さて、国連決議第181号の採択を受けて、ユダヤ系は新国家の樹立に向けて、テルアビブにユダヤ人居住区を統治するための臨時政府として“ユダヤ国民評議会”を樹立。ユダヤ国民評議会は、自らのプレゼンスを内外に示すため、暫定切手を発行し、郵便サービスの提供を開始します。

 ところで、ユダヤ国民評議会の郵政組織とは別に、アラブ側との戦闘で外界との連絡が途絶する可能性のあった地方のユダヤ人地区では、外部との通信を確保するため、独自の特殊な郵便制度を導入するところもありました。

 このカバーはその一つのサンプルで、テルアビブ南方のリション・レツィオン近郊のナハト・イェフーダからテルアビブ宛に差し出された装甲車郵便(アラブ側の襲撃に耐えられるよう、装甲車で郵便物を運ぶ制度)のカバーです。貼られている切手は、リション・レツィオンのローカル切手で、装甲車とユダヤ系の兵士を描いています。

 カバーの余白には、ユダヤの象徴であるダビデの星を挟んで、上下にシオニズムの父、テオドル・ヘルツルの『ユダヤ人国家』の一節と、国連決議第181号の文字が印刷されており、イスラエル国家建国直前の高揚した雰囲気が伝わってきます。

 こうした状況の中で、1948年5月14日、イギリスのパレスチナ委任統治期間が終了すると、ユダヤ国民評議会はイスラエルの建国を宣言。これに対して、イスラエルの建国を阻止しようとする周辺アラブ諸国が介入し、第一次中東戦争が勃発するのです。

 試験の問題では、切手と角型の消印部分のみを拡大して、この切手が発行されるに至った経緯や歴史的背景について説明してもらうことにしましたので、カバー余白の文言や、カバーの宛先などについての説明は不要です。

 さて、今回の試験では、5つの問題を出し、その中から2問を選んで解答してもらうことにしていましたが、切手がらみの問題は一昨日、昨日、そして今日の3問で、残りの2問は、とりあえず、切手とは無関係の歴史的背景を問う設問でした。こちらに関しては、わざわざ僕のブログを見なくとも、調べる手立てはいくらでもあると思いますので、解説は省略します。
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