内藤陽介 Yosuke NAITO
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 誦め!
2006-12-02 Sat 00:52
 アラブ圏では初、カタールの首都ドーハで行われるアジア大会が開幕しました。というわけで、カタールの切手の中から、ちょっと面白いものを拾ってきてみました。(画像はクリックで拡大されます)

識字の日

 これは、1984年にカタールが発行した国際識字の日の切手で、黒板に「誦め(声に出して読め)」という意味のアラビア語を書いて識字教育を行っている場面が取り上げられています。

 「識字キャンペーンの切手で“誦め”という単語が出てくるのは当たり前じゃないか、それがどうした」といわれそうですが、実は、この“誦め”というアラビア語は、イスラムの預言者ムハンマド(マホメット)に対して神が下した最初の啓示の文言とされているものというのがミソです。

 たとえば、かつてイランは大天使ガブリエルが啓示を下したイメージを表現した切手を発行したことがあるのですが、この切手にも、しっかり、ガブリエルを表す翼の間に“誦め”というアラビア語が記されており、ここからコーランの歴史が始まったという認識が示されています。

 さて、イスラム教徒はコーランを神の言葉として理解していますが、それはコーランがアラビア語として完成されたものであるから、すなわち、人間には真似することのできない韻律を備えたものであるから、ということが根拠になっています。そもそも、コーラン(アラビア語ではアル・クルアーン)という言葉自体が「声に出して読まれるもの」という意味であって、コーランの真の魅力はアラビア語で朗誦してこそ味わうことができるというのが彼らの主張です。

 ちなみに、預言者ムハンマドは文字が読めなかったとされていますが、そのことはイスラム世界では肯定的にとらえられています。というのも、文字が読めないがゆえに、ムハンマドが密かにアンチョコを見てコーランの章句に相当する文言を唱えることは不可能であり、それゆえ、彼の口から発せられたコーランの章句は、まぎれもなく、神から下された啓示に他ならない、と彼らは理解しているからです。

 こうしたことを考えると、文字の読めない人に対しては、まず、“誦め”という単語の読み書きから覚えてもらおうというのも、イスラム教徒の発想としてはごくごく自然なものなのかもしれません。

 なお、この辺のコーランの話については、以前『コーランの新しい読み方』という本(表紙には切手を使っています)を友人との共訳で出版したことがありますので、機会があれば、ご覧いただけると幸いです。
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この記事のコメント
#428
ご無沙汰しております。先生のブログは日々拝読させていただいておりましたが、春から秋の長きに亘って個人的に忙しくて・・・
JAPEXは何とか時間を作り僅かな時間ですが参観させていただきました。
新しいご著書も興味深く拝読させていただいております。
さて、ご案内の「コーランの新しい読み方」ですが、一度書店で手にしたのですが購入を躊躇してしまいました。(ごめんなさい)
ムスリムでも研究者でもない私がどういう位置づけで読んだら良いのか?
ムスリムには以前から興味があったのですが、入門書という位置づけでよろしいのでしょうか?難しく考えすぎですかね。
話は違うのですが、「ソマリア」現在無政府状態の彼の国の郵便制度はおそらく崩壊しているのではないかと思われますが「郵趣」誌では少し前まで「ソマリア」の新切手が紹介されていました。
あれは、何だったのでしょうか?
「ソマリランド」のものもあったようですが。
ソマリアは01年のPhilaNipponにもブースを出していまして不思議なムスリム風の図案の結構きれいな切手を出していました。デザイナーは全て同じ人物でイタリアやヴァチカンのデザインも手がけているようです。
印刷は全てイタリア印刷局なので局のデザイナーだったのでしょうか。
とても高額な切手でしたが、その図案に惹かれて結構揃えたものでした。
輸入が止まったのかよくわかりませんが、ムスリム世界のアフリカ大陸における端っこに?位置するソマリア、先生なら何かご存知ではないかと書き込んでしまいました。
ご教示いただけたら幸いです。
2006-12-03 Sun 00:20 | URL | えびす #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
#429 「念じろ」
 ヒマネタです。内藤先生はウィザードリィというゲームをやったことはないでしょうか?1981年開発で1988年くらいまではわりと一般的でした。このなかでカント寺院で一度死亡したキャラクターを復活できるのですが、つぶやき、詠唱、念じろ、と訳されて儀式がすすんで復活できたり復活できなかったりしていました。この「念じろ」、というのが「誦め」にちかい感覚なのでしょうか。復活の確率は5割程度だったと思います。
2006-12-04 Mon 01:44 | URL | 岡本 哲 #mQop/nM.[ 内容変更] | ∧top | under∨
 皆様、コメントありがとうございます。

・えびす様
 ご無沙汰しております。
 拙訳『コーランの新しい読み方』は、フランス人にとっては入門書なのですが、日本人にとってはちょっと難解かもしれません。まぁ、図書館などで見かけたら、パラパラっとめくってやってください。
 ソマリアの郵便制度は現在、崩壊しており、正規の切手は発行されていないと思います。ただ、そういう状況になると、かならずや(元)政府関係者かなんかに渡りをつけて、ソマリアの名前で切手を発行する輩が出てきますからねぇ。困ったものです。

・岡本哲様
 恥ずかしながら、ゲームというものをほとんどやったことがないので、ご紹介いただいたモノは今度、どんなものなのか、調べてみます。
2006-12-05 Tue 21:14 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
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