FC2ブログ
内藤陽介 Yosuke NAITO
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
World Wide Weblog
 チャドの現職大統領が陣没
2021-04-21 Wed 02:21
 おととい(19日)、チャドの大統領選挙で7選が発表されたばかりのイドリス・デビ大統領が、きのう(20日)、同国北部における反政府勢力との前線で負傷し、亡くなりました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      チャド・1990年の政変1周年

 これは、1991年にチャドが発行した“自由と民主主義の日”の記念切手です。

 1960年にフランスから独立したチャドでは、南部出身のキリスト教徒、フランソワ・トンバルバイが初代大統領に就任しましたが、トンバルバイはチャド進歩党の一党独裁体制を敷き、強権支配を行ったため、1965年、南部ゲラ州で大規模な反乱が発生。1969年にはグクーニ・ウェディひきいる北部のムスリムがチャド民族解放戦線(FROLINAT)を組織して武装蜂起しました。さらに、1971年以降、隣国のリビアが北部国境地帯、アオゾウのウラン鉱脈をめぐって、FROLINATを支援し内戦に干渉します。

 1973年、チャド国軍はリビア軍に敗れ、アオゾウを失陥。リビアの圧力に屈し、領土奪還を事実上断念したトンバルバイは、国内の不満を抑え込むため、反対派の粛清やヴォドン(ヴードゥー)への改宗強制など、従来以上に強圧的な独裁政治を行いましたが、1975年4月13日、軍事クーデターにより失脚し、殺害されました。

 クーデター後、フェリックス・マルーム元参謀総長を議長とする最高軍事評議会が政権を掌握。一方、FROLINAT内部はグクーニ・ウェディ派とイッサン・ハブレ派に分裂し、内戦は3派の争いとなります。

 1978年1月、リビアの支援を受けたハブレ派がチャド北部を制圧すると、同年8月、マルーム政権は、ハブレを首相として政権内に取り込みましたが、翌1979年、マルーム派とハブレ派が衝突。このため、周辺諸国の調停により、マルームは辞任。シャワ暫定政権を経て、グクーニが大統領に就任し、ハブレは陸軍相として政権に加わるという妥協が成立しました。

 しかし、1980年3月、新政権内の主導権争いからハブレ派とグクーニ派の内戦が再燃。ここに、リビアが介入し、同年12月、リビアの支援を受けたグクーニ派が首都ンジャメナを制圧します。ところが、ウラン鉱脈を持つチャドにリビアが勢力を拡大することを懸念した米国のレーガン政権は、親リビア派のグクーニ政権を転覆させるべく、ハブレ派を水面下で支援。この結果、事態収拾のため、1981年11月、アフリカ統一機構の平和維持軍がチャドに派遣され、リビア軍が撤退すると、1982年6月にはハブレが大統領に就任しました。

 これに対して、リビアはハブレ政権を承認せず、1983年6月、グクーニ派を支援してチャド領内に再侵入したため、米仏とザイールは政府軍を支援して応戦。1984年9月にはフランスとリビアの間で休戦合意が成立し、北緯16度線以北はリビア軍の占領下に置かれます。

 ところが、この結果に不満のグクーニ派が、1986年、リビア軍を攻撃すると、同年12月、政府軍は16度線を越えて進軍し北部チャドを奪回。1987年9月に休戦が成立し、1994年、紛争地アオゾウの帰属は国際司法裁判所の裁定で最終的にチャド領とされました。

 この間、ハブレ政権は反政府勢力に対して、民族浄化など、広範な残虐行為を行い、ヒューマン・ライツ・ウォッチが2001年に発見した政治警察“文書管理・保安局”の文書によれば、1208人が殺されたり拘禁中に死亡したほか、1万1208人が人権侵害の被害を受けたとの記録が残されています。

 1987年の停戦後、ハブレ政権の圧政に対するチャド国民の不満は次第に鬱積していきましたが、1989年4月、ついに、大統領側近によるクーデター未遂事件が発生。この事件で、いったんスーダンに亡命を強いられた政権軍事顧問のイドリス・デビは、リビアの支援を受けて、反ハブレ派を糾合して愛国救済運動(MPS)を結成。1990年9月、MPSは首都ンジャメナに侵攻してハブレを追放し、デビみずから暫定大統領に就任します。そして、12月1日の選挙を経て、同4日、デビは正式に大統領に就任しました。今回ご紹介の切手は、この大統領選挙の実施から1周年を記念して発行されたものです。

 さて、大統領に就任したデビは、1996年、2001年の大統領選で再選するのですが、1996年3月末に施行のチャド憲法では、大統領の3選は禁止されていましたので、普通に考えれば、2001年の選挙にデビは出馬できないはずです。ところが、デビは、1990年12月の大統領就任は憲法施行以前なので、3選禁止の対象には含まれないと強弁。そのうえで、“2期目”の任期中の2004年5月には憲法を改正して大統領の再選規定を撤廃。これにより、2006年、2011年、2016年の選挙では政権側が露骨な選挙不正を行い、デビは当選を重ねます。さらに、2018年4月には再び憲法を改正して、3選禁止規定を復活させる一方、大統領の任期を1期6年としていました。

 2004年の再選規定撤廃後、デビとMPSによる腐敗や圧政が目立つようになると、クーデター未遂や軍幹部・国軍兵士の離反等が相次ぎ、2005年頃より反政府武装勢力の活動も活発化。2008年2月には、反政府勢力が一時的に首都のンジャメナを制圧しました。また、欧米諸国はデビをベラルーシのルカシェンコと同等の独裁者と見なしています。

 こうした中、今年(2021年)4月11日には、野党勢力がボイコットする中で大統領選挙が行われましたが、これに合わせて、リビアに逃れて活動していた反政府武装勢力の“チャド変革・調和戦線”が国境を越えてチャド領内に侵入。17日には変革・調和戦線の2つの部隊が首都ンジャメナを目指して南進している様子が確認されたため、英国政府がチャド在留の英国民に速やかな国外への退避を呼びかけ、ンジャメナの米国も職員に出国を命じていました。

 これに対して、チャドの国営メディアは、4月19日、デビの7選を発表するとともに、国軍が変革・調和路線の戦闘員少なくとも300人を殺害し、150人を拘束知ったことを発表。これを受けて、デビは前線を視察中(一部、前線で戦闘部隊を直接指揮している時に、との報道もあります)、反政府勢力の攻撃を受けて負傷。そのまま戦場で亡くなったとのことです。

 なお、今回のデビの陣没を受けて、チャド議会は解散され、今後、デビの息子のマハマト・デビ率いる軍事評議会が18ヵ月間、統治を行うことが発表されており、このままいくと、今後も、デビ一族による国政の私物化はそのまま維持されることになります。


★ 放送出演・講演・講座などのご案内★

 4月23日(金) 15:00~ 
 東京・浅草の東京都立産業貿易センター台東館で開催のスタンプショウ会場にて、拙著『切手でたどる郵便創業150年の歴史 vol.1 戦前編』の刊行記念トークを行います。入場無料・事前予約不要ですので、お気軽にご参加ください。なお、スタンプショウの詳細はこちらをご覧ください

 4月24日(土)  倉山塾東京支部特別講演
 靖国神社参拝と講演がセットになった有料イベント(参加費は3000円、高校生以下1000円)で、スケジュールは以下の通りです。
 14:15 集合 靖国神社 大村益次郎像前 → 参拝(昇殿参拝ではありません)後、講演会場へ移動
 15:00 講演会の受付開始
 15:30-17:00 内藤の講演(拙著『切手でたどる郵便創業150年の歴史 vol.1 戦前編』の内容が中心ですが、前日のスタンプショウとは内容が異なるので、両方ご参加いただいても問題ありません)
 * 終了後、懇親会の予定あり(別途予約が必要です)
 お申し込みなどの詳細はこちらへ。一人でも多くの方のご参加をお待ちしております。

 4月26日(月) 05:00~  
 文化放送の「おはよう寺ちゃん 活動中」に内藤がコメンテーターとして出演の予定です。番組は早朝5時から9時までの長時間放送ですが、僕の出番は07:48からになります。皆様、よろしくお願いします。

 5月15日(土)~ 武蔵野大学の生涯学習講座
 5月15日、22日、6月5日、19日、7月3日、17日の6回、下記のふたつの講座でお話しします。 
 13:00~14:30 「日本の郵便150年の歴史 その1 ―“大日本帝国”時代の郵便事情―」
 15:15~16:45 「東京五輪と切手ブームの時代 ―戦後昭和社会史の一断面―」
 対面授業、オンラインのライブ配信、タイム・フリーのウェブ配信の3通りの形式での受講が可能です。詳細については、武蔵野大学地域交流推進室宛にメール(lifelong★musashino-u.ac.jp スパム防止のため、アドレスの@は★に変えています)にてお問い合わせください。

★ 『切手でたどる郵便創業150年の歴史 vol.1 戦前編』 好評発売中! ★

      郵便創業150年の歴史ー1表紙 2530円(本体2300円+税)

 明治4年3月1日(1871年4月20日)にわが国の近代郵便が創業され、日本最初の切手が発行されて以来、150年間の歴史を豊富な図版とともにたどる3巻シリーズの第1巻。まずは、1945年の第二次大戦終戦までの時代を扱いました。今後、2021年11月刊行予定の第2巻では昭和時代(戦後)を、2022年3月刊行予定の第3巻では平成以降の時代を取り扱う予定です。

 ご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、本書の目次をご覧いただけるほか、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 
スポンサーサイト




別窓 | チャド | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑
<< アース・デイ | 郵便学者・内藤陽介のブログ |  郵便創業150年>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
copyright © 2006 郵便学者・内藤陽介のブログ all rights reserved. template by [ALT-DESIGN@clip].
/