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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ソロモン諸島の首都で焼討事件
2021-11-25 Thu 02:33
 南太平洋のソロモン諸島の首都ホニアラ(ガダルカナル島)で、きのう(24日)、マナセ・ソガヴァレ首相の退陣を求める大規模なデモが発生し、国会議事堂の敷地内の建物と隣接する警察署などが焼討被害に遭いました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      ソロモン諸島・独立20年

 これは、1998年7月7日、“独立20年”を記念してソロモン諸島が発行した切手シートで、切手部分には1993年に日本の北野建設が建てた国会議事堂が、シート下部のマージンには高等裁判所が描かれています。ちなみに、今回の焼討事件の写真(下の画像。11月24日付『ガーディアン』紙より)をみると、敷地内の建物が燃え、議事堂が黒煙に包まれているのがわかります。

      ホニアラ・黒煙に包まれる議事堂
 
 1978年に独立したソロモン諸島は、1983年に台湾と国交を樹立し、台湾もこれに応えてソロモン諸島に対してさまざまな支援を行ってきました。特に、農業に関しては伝統的な焼き畑農業からの脱皮を定着させるべく、台湾人による技術指導が行われたほか、養豚場では、在来種と台湾から持ち込まれた品種を掛け合わせた“SOLROC”(ソロモンのSOLと台湾=中華民国のROCが名前の由来)種のブタが生産され、両国友好のシンボルともなってきました。

 ところが、近年、中国が台湾を外交的に追い詰めるべく、ソロモン諸島への進出を急速に拡大。この結果、中国はソロモン諸島の輸出額の6割超を占め、貿易相手国として第1位となります。また、2017年には、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)がソロモン諸島に高速インターネットの敷設を提案。このときは、域内大国であるオーストラリアが直ちに対抗策を提案し、1億3700万豪ドル=約103億円を投じ、パプアニューギニアを含む海底インターネットケーブルを建設しましたが、その過程で、マナセ・ソガヴァレ(2000-01年、2006-07年、2014-17年、2019ー現在の4次に渡り首相)ひきいるソロモン諸島社会信用党が華為技術から巨額の政治献金が受け取っていた疑惑が浮上。さらに、ソガヴァレ本人も“複数の中国企業と親密な関係”にあることが明らかになりました。

 こうした中国の浸透工作が功を奏し、ソロモン諸島の政界では徐々に中国派が台頭。2019年4月、ソガヴァレが組織した連立政権の与党議員の一部は、半年以内に中国と国交を樹立しなければ不信任案を提出すると圧力をかけ、これを容れるかたちで、ソロモン諸島議会内には特別委員会が設けられ、中台いずれかの国との国交を樹立することのメリット・デメリットが審議されることになります。

 こうした状況に危機感を抱いたオーストラリアのモリソン首相は、6月3日、ソガヴァレと会談し、「太平洋島嶼国の平和的な独立と主権のための支援」を表明。今後10年間で2億5000万豪ドル(約188億円)の経済支援やソロモン諸島首相府の建築補助などを約束し、中国の浸透に対抗しようとします。また、米政府も、ソロモン諸島に対し、中国の資金拠出の約束には慎重に対応し、台湾との断交を強制されないよう注意が必要だと呼びかけていたほか、2019年9月に行われた現地の世論調査でも、国民の8-9割が台湾との外交関係の維持を支持しているとの結果が出ていました。

 しかし、2019年9月13日、議会特別委員会は、台湾との外交関係を絶ち、中国との国交樹立を勧告する答申書を政府に提出。同16日、ソロモン諸島政府は台湾と断交したうえで、同21日、中国と正式な国交を樹立します。さらに、翌22日、ソロモン諸島政府は、ガダルカナル北方、第二次世界大戦以前の英領ソロモン諸島の首府が置かれていたツラギと周辺の島々を”経済特区“として開発すべく、中国の複合企業、”中国森田“に75年間賃貸する契約を結びました。

 こうした中央政府の“暴走”に対して、ソロモン諸島各地では強い反発の声が上がりましたが、中でも、歴史的経緯から、ガダルカナルと中央政府と対立してきたマライタ州では、10月23日、州政府のダニエル・スイダニ主席がニュージーランドのラジオ放送局RNZの取材に応じ、「借金となる海外からの資金提供に関わりたくはない。これは、よく知られている中国からの資金提供による“債務の罠”に陥る可能性がある」と述べ、ツラギの賃貸契約と台湾との断交に真っ向から反対を表明。これに対して、ソガヴァレ政権はマライタ州に対して中国を受け入れるよう圧力をかけ続けていました。

 2020年に入ると、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、ソロモン諸島は中国をはじめ、過去に感染者が出た国からの入国を禁止するなどの制限措置をとっていましたが、親中路線を推し進めるソガヴァレ政権は、中国本土ではウイルス禍がほぼ終息したとする中国側の主張に追従して、8月31日、入国制限措置を緩和して、廣州からホニアラの直行便を受け入れました。

 ここにいたり、もともと、中国を信用せず、台湾との断交に反対していたマライタ州のスイダニ主席は猛反発し、ソロモン諸島からの独立の是非を問う住民投票の実施を主張し、ホニアラの中央政府との対立が続いていました。

 今回のデモは、そうした背景の下、中国との国交樹立に際して約束されていたインフラ整備が一向に進まないことを理由に、マライタ州出身者が中心になってソガヴァレ首相の退陣を求めて行われたものです。当初、ホニアラの国会議事堂前に集まった参加者は平和的な集会を行っていましたが、午後になって参加者の一部が審議中の議事堂内に侵入しようとしたことから騒擾が発生し、議事堂の敷地内の建物や警察署のほか、市内の中国人所有の建物が焼き討ちに遭っています。

 なお、ソロモン諸島をはじめ南太平洋における近年の中国の動きについては、拙著『日本人に忘れられたガダルカナル島の近現代史』でもまとめておりますので、機会がありましたら、ぜひお手に取ってご覧いただけると幸いです。


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