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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手歳時記:タンチョウ
2021-11-30 Tue 00:31
 ご報告が遅くなりましたが、公益財団法人・通信文化協会の雑誌『通信文化』2021年11月号が発行されました。僕の連載「切手歳時記」は、今回は、毎年11月になると北海道の釧路湿原を中心にタンチョウの飛来が本格化することから、こんな切手を取り上げました。(画像はクリックで拡大されます)

      タンチョウ100円(1963)

 これは、1963年7月25日に発行されたタンチョウを描く100円切手(普通切手)です。

 中国古典では、単に“”と言えばタンチョウのことを意味し、古い時代の日本でも、鶴の種類を特に区別せず“たづ”とか“つる”と呼び、基本的にはタンチョウを指していたようです。日本の文献上で“丹頂”という語が確認できるのは、平安時代の1133年頃に編まれた『詩序集』に朱慶余(中唐の詩人)の「台州鄭員外郡斎双鶴詩」のなかから「丹頂已老、宜列籍於丹台一」が引用されているのが最初とされています。

 一方、丹頂の飛来する北海道のアイヌの間では、タンチョウは“葦原の神”を意味する“サロルンカムイ”と呼ばれていましたが、これに近いイメージなのが、江戸時代の1697年に人見必大が刊行した『本朝食鑑』で、「鶴は和名類聚抄にある葦鶴(あしたづ)で、俗称は丹頂である」という趣旨の記述があります。

 『本朝食鑑』は、日本の食物全般について、その性質や食べ方などを詳しく説明した書物なので、タンチョウについても食材としての関心から取り上げられています。

 江戸時代、鶴は“三鳥二魚”と呼ばれる五大珍味の一つに数えられた高級食材で、将軍家は冬場に江戸へ渡ってきた鶴を鷹狩りで仕留め、最初の獲物を“初鶴”として宮中に献上したほか、諸大名や公卿の間では贈答品として鶴肉が行き交っていました。鶴を生きた姿のまま塩漬けにした“塩鶴”は、松前藩など北方諸藩から江戸や上方にもたらされており、『西鶴置土産』には、歌舞伎役者の坂田藤十郎が大津で鶴を1羽、銀10枚で買い、日常的に吸い物にしていたという話が紹介されています。

 西鶴の時代の銀10枚はだいたい7両。単純な比較はできませんが、1両は現在の感覚で10万円くらいとされることが多いので、藤十郎は70万円の吸い物を普段から飲んでいたということになりましょうか。少し古い情報ですが、2009年に米国メディアが発表した「世界で最も高価な9種類の食べ物」では、神戸牛の“金箔”が一ポンド150ドルで6位にランクされていますが、それでも、当時の為替レートでざっくり計算して500グラムで1万4000円強ですから、文字通り、鶴肉は桁違いの高級食材だったことがわかります。

 なお、『本朝食鑑』によると、最も美味い(でそれゆえ効果で取引される)のは黒鶴で、次いで白鶴(全身純白で風切り羽だけが黒いソデグロヅル)、真鶴(マナヅル)が賞味されるものの、タンチョウの肉は肉は硬くてまずいので、食べる者は少ないのだとか。もっとも、中国の故事に倣ってタンチョウを仙人や不老長寿の象徴とみるなら、タンチョウの肉が拙いのも“良薬口に苦し”で仕方がないのかもしれませんが。

 * 昨日(29日)の文化放送「おはよう寺ちゃん」の僕の出番は、無事、終了いたしました。リスナーの皆様には、この場をお借りして御礼申し上げます。次回は来週月曜日・12月6日に登場の予定です。引き続きよろしくお付き合いください。


★ 放送出演・講演・講座などのご案内★

 12月6日(月) 05:00~  おはよう寺ちゃん
 文化放送の「おはよう寺ちゃん」に内藤がコメンテーターとして出演の予定です。番組は早朝5時から9時までの長時間放送ですが、僕の出番は07:48からになります。皆様、よろしくお願いします。

 武蔵野大学のWeb講座 2021年12月1日~2022年2月8日
 「日本の歴史を学びなおす― 近現代編その1 ― 黒船来航」

 12月1日から2月8日まで、計7.5時間(30分×15回)の講座です、お申し込みなどの詳細は、こちらをご覧ください。

 三鷹市生涯学習センター 「宗教と国際政治」 2022年1月10~23日
 国際紛争や諸外国のタイムリーな重大ニュースを取り上げ、その背後にある「宗教」をめぐる諸問題をじっくり解説する講座です。今回は、混迷続くアフガニスタンとその歴史に焦点を当ててお話します。お申し込みは12月11日(土)までで、ご応募多数の場合は抽選になります。詳細はこちらをご覧ください。


★ 『切手でたどる郵便創業150年の歴史 vol.2 戦後編』 11月20日刊行! ★

      切手でたどる郵便創業150年の歴史②表紙 2530円(本体2300円+税)

 明治4年3月1日(1871年4月20日)にわが国の近代郵便が創業され、日本最初の切手が発行されて以来、150年間の歴史を豊富な図版とともにたどる3巻シリーズの第2巻。まずは、1945年の第二次大戦終戦までの時代を扱った第1巻に続き、第二次大戦後の1946年から昭和末の1989年までを扱っています。なお、2022年3月刊行予定の第3巻では平成以降の時代を取り扱う予定です。

 * ご予約・ご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、本書の目次をご覧いただけるほか、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 

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 最近、拙著『切手でたどる郵便創業150年の歴史』をPDF化して、無料でダウンロードできるかのように装い、クレジットカード情報を盗み取ろうとする違法サイトの存在が確認されました。

 この種のサイトは多種多様な出版物を無許可で取り扱っているものと思われます。

 内藤および拙著の出版元・販売元ではこのような行為は一切認めておらず、フィッシング詐欺等に巻き込まれる可能性もありますので十分ご注意ください。
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