内藤陽介 Yosuke NAITO
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 英雄/テロリスト図鑑:ホメイニー
2007-03-14 Wed 06:41
 『SAPIO』3月28日号が発売になりました。僕が担当している連載「世界の『英雄/テロリスト』裏表切手大図鑑」では、今回は、イラン・イスラム革命の指導者ホメイニーを取り上げてみました。(画像はクリックで拡大されます)

ホメイニ

 この切手は、ホメイニーの死後、1989年12月13日に発行された追悼切手の1枚で、アメリカを後ろ盾にしたパーレビ王制によって祖国を追われるホメイニーの姿が描かれています。

 ルーホッラー・ホメイニーは、1900年5月17日(1902年9月24日説もあり)、イラン中部のホメインで生まれました。5歳のときに父親を亡くしましたが、エスファハーンやアラク、コムなどでの修業を経て、イスラムの法学・哲学・神秘主義などに通じた碩学として知られるようになり、シーア派イスラム法学の最高位、マルジャエ・タクリードとなりました。

 1963年、当時、親米政策を採っていた国王(いわゆるパーレビ国王です)は“白色革命”を発動します。“白色革命”というのは、赤色革命の対義語として、国王主導の大規模な社会変革を意味していましたが、その本質は開発独裁による上からの近代化・西洋化です。

 ホメイニーは白色革命を伝統的なイスラムの価値観に反するものと断じ、政府に対する抵抗運動として、白色革命の是非を問う国民投票へのボイコット、イラン暦の新年(イラン暦では春分の日が元日)の祝賀行事やアーシュラー(シーア派の伝統的な宗教行事)への不参加などを呼びかけたほか、モスクでの説教でも国王を罵倒しました。

 こうした活動が反国家的と取られて、1963年6月5日、彼は逮捕されますが、これに抗議する暴動がイラン全土で発生し、およそ400人が亡くなる騒動となります。その後、いったんは釈放されるものの政府批判は止めず、1964年11月、国王とアメリカを非難して国外追放処分を受けましたが、反国王の象徴的存在として、亡命後もシーア派法学の最高権威という立場でイラン国内での影響力を保ちます。

 1978年、そんな彼のことを誹謗中傷する記事がイランの日刊紙に掲載されると、宗教都市のコムで反国王デモが発生。これをきっかけに、開発独裁に対する国民の不満が爆発して反政府暴動が全土に広がり、1979年2月、王制は崩壊し、帰国したホメイニを迎えてイラン・イスラム共和国が樹立されました。

 彼は、亡くなる年の2月、小説『悪魔の詩』の作者、サルマン・ルシュディーと同書の発行、翻訳などに関わった者への死刑宣告を発し、西側社会から激しい非難を浴びています。

 イスラムの法理論からすれば、イスラム教徒はどの国にいようともイスラムの法に従うことが求められており、その意味で、イスラム教徒でありながらイスラムを冒涜したルシュディーの行為は死に値する大罪ということになるのですが、現代世界の“常識”では、ホメイニーの宣告は、国境を無視した言論弾圧としか認識されないのもやむを得ないでしょう。実際、日本語版翻訳者の五十嵐一をはじめ、『悪魔の詩』の外国語翻訳者に対するテロ事件が何軒か起きているのですから。

 その意味では、現在でも、ホメイニーはイラン国民にとっての革命のシンボルであると同時に、アメリカのいう“テロリスト国家”の象徴的な存在でもあるといってよさそうです。

 ところで、生前のホメイニーは、米ソの宇宙開発を評して「月でも火星でも好きなところへ行くが良い」といった趣旨の発言をしていますが、僕なんかは、先ごろ国産宇宙ロケットの打ち上げに成功して意気揚がるイラン国民に、このホメイニ発言をどう思うか、質問してみたい誘惑に駆られています。まぁ、「わが国のロケットは、月なり火星なりに行くためのものではなくって、核弾頭を積んで“敵国”めがけてぶっ放すためのモノなんだから良いんだよ」と即座に反論されるのがオチでしょうけれど。
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