内藤陽介 Yosuke NAITO
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 英雄/テロリスト図鑑:カスパロフ
2007-05-10 Thu 10:28
 『SAPIO』5月23日号が発売になりました。僕が担当している連載「世界の『英雄/テロリスト』裏表切手大図鑑」では、今回は、先日、反プーチン・デモに参加して、“大衆煽動”の罪で逮捕されたチェスの元世界王者、ガルリ・キモビッチ・カスパロフを取り上げてみました。(画像はクリックで拡大されます)

カスパロフ

 1980年代から21世紀初頭にかけて“人類最強のチェス・プレイヤー”の名をほしいままにしたカスパロフですが、政治との関わりは、ソ連時代の1984年、20歳そこそこでソ連共産党への入党資格を与えられたことに始まります。その後、1987年にはコムソモール(共産主義青年同盟)の中央委員にもなったものの、1990年、共産党を脱党し、ロシア民主党の結成に参加。さらに、ソ連崩壊後の1993年6月には、リベラル派の政治ブロック“ロシアの選択”の結成にもかかわり、エリツィン政権を支える急進改革派として政治活動を展開します。

 カスパロフの思想信条は、ロシアを全体主義国家に戻してはならないというもので、当然のことながら、強権的なプーチン政権とは対立。2005年にチェスの世界から引退した後は、社会運動組織として市民連合戦線を組織し、政権批判の急先鋒となりました。そのせいか、2005年4月、モスクワでのイベントで、政治活動から身を引くよう要求する男に襲われるという事件も起きています。

 その後、カスパロフは、2007年3月にはサンクト・ペテルスブルクでの反プーチンデモに関わり、数千人の市民を動員する上で重要な役割を果たしたほか、4月14日にはモスクワでの反プーチンデモの先頭に立つなど、反プーチンの闘士として積極的な活動を展開。その結果、彼は4月15日には治安当局に身柄を拘束され、10時間後、1000ルーブル(約5000円)の罰金を払って釈放されています。

 現在のロシアでは、2006年3月に「大統領が、反ロシア的な姿勢を示す国外のテロリストやテロ組織を攻撃、殲滅することを軍に命じることができる」という反テロ法が施行されたことにくわえ、同年夏には、“反ロシア的”な言論活動や扇動を行った者を“過激派”として懲役刑に処すことも可能となりました。

 したがって、カスパロフのようにプーチン大統領を“モスクワのムッソリーニ”と痛罵し、現政権に対する批判活動を大っぴらに展開している人間は、ロシア政府から見れば、立派な“過激派”であり、テロリスト予備軍ということになるのでしょう。

 ちなみに、ご紹介している切手は、カスパロフが世界チャンピオンとなったことを受けて、1986年に北朝鮮が発行したもので、元チャンピオンのカルポフ(左)とカスパロフ(右)の試合の場面を描かれています。当時、北朝鮮を初め、外貨稼ぎを兼ねて、東側諸国はソ連との友好関係をうたいあげるため、若きソ連のチャンピオンをたたえる切手をこぞって発行していましたが、これもその1枚です。もっとも、カスパロフは現在では“独裁体制反対”の急先鋒になっていますから、北朝鮮当局もおそらく彼のことを好ましからざる人物と見ているんじゃないかと思います。

 PS そういえば、明日(5月11日)は、いまからちょうど10年前の1997年、IBMのコンピューターディープ・ブルーが史上はじめてチェス世界チャンピオンのガルリ・カスパロフを破った日だそうです。

 【いよいよ飛鳥美人の救出開始!】
 今日(5月10日)の午後、劣化の激しい高松塚古墳・西壁壁画“飛鳥美人”の取り外し作業が始まります。この壁画の発見当時の美しい姿を再現した「高松塚保存基金」の切手(1973年3月発行)と、当時の高松塚ブームならびに切手ブームについては、拙著『沖縄・高松塚の時代』をご覧ください。
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この記事のコメント
#621 「時代の変遷」
を感じます。
 当時は「宣伝に値する人間」と見なされ切手にもなったものの、現在では、「反体制派」と見なされ、切手はおろか投獄もあり得る1人の人間の変化。
 一度発行された切手は、その後の変化を予想していないだけに、時としてくっきりと「時代の一断面」を表していると改めて思いました。
 それにしても、北朝鮮切手の「節操のなさ」よ。
2007-05-10 Thu 18:54 | URL | muraki #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
 muraki様

 まぁ、北朝鮮には彼らなりの思考回路があるのですが、それが全世界的にみて客観性があるとはいいがたいということは事実ですよね。
2007-05-10 Thu 23:03 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
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