内藤陽介 Yosuke NAITO
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 香港からタイへ
2007-07-02 Mon 07:42
 おかげさまで、「香港返還10周年記念・香港切手展 香港歴史漫郵記」は、昨日(1日)、無事に終了いたしました。会場に来て下さった方々には、この場を借りて改めてお礼申し上げます。

 さて、1冊で何年も食べられるベストセラー作家と違って、僕の場合は年に何冊か本を出さないと生活が成り立ちません。というわけで、早速、次回作の作業にとりかかっています。次回作は、磯風さんのブログでも書かれているように、タイを取り上げたものとなる予定です。というわけで、香港とタイの両方にからんだ1枚として、今日はこんな切手を持ってきてみました。(画像はクリックで拡大されます)

香港のタイ料理

 これは、香港で英領時代の1990年に発行された“世界の料理(International Cuisine)”と題する6種セットの1枚で、タイ料理としてプラー・プリアオワーン(魚の丸揚げに甘酢ソースをかけたもの)が取り上げられています。

 “世界の料理”切手では、このほか、フランス料理や日本の寿司、インド料理、それに勿論中華料理などを取り上げられています。その意図が、香港では世界のあらゆる料理が味わえることをアピールすることで、“グルメ天国”香港への外国人観光客を誘致しようという点にあるのは明らかです。

 ところで、香港における“食”の多様性ということは、そのまま、香港社会そのものの多様性を示すことになります。

 香港社会は中国系が98パーセントと圧倒的多数を占めているとはいえ、イギリス人をはじめとする欧米人、インド系(貿易商としてやってきたパル-シー教徒、グジャラート人、マルワル人、シンド人、軍事・警察要員としてやってきたシーク教徒など)、主としてメイドとして働いているフィリピン人などのエスニック・グループも社会的に無視できない存在です。これらの少数派と中国系との融和が香港社会にとって重要な課題であることはいうまでもありません。

 その真意はどうあれ、1990年代に入って、香港に“民主化”の置き土産を残していこうとしたイギリスの香港政庁は、民主主義の前提である多様な価値観の共存を、理念ではなく、よりリアルなかたちで人々に実感させるため、香港にもマイノリティのエスニック集団がいて、彼らの権利を十分に尊重する必要があることをさまざまな機会を通じてアピールしていましたが、“世界の料理切手”もまた、こうした文脈にそって、香港社会の多様性を“食”という側面から表現したものとみてよいでしょう。

 ちなみに、1997年7月以降の中国香港の切手においては、このように、さまざまなマイノリティ集団を含むという意味での社会の多様性が強調されることはほとんどなく、“中国の香港”という側面が強調されているような印象を受けます。この点については、拙著『香港歴史漫郵記』でも、いろいろと書いて見ましたので、よろしかったら、是非、ご一読いただけると幸いです。
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この記事のコメント
#784 カオスを含む多様性
 『香港歴史漫郵記』を拝読させていただいて感じたことですが、香港の場合、「イギリス」による「中国人」への「異民族支配」、「共産主義」に隣接する「資本主義」「自由港」、「東洋」における「西洋」との「接触点」など、「相異なる者同士の接点」としての役割があったように思います。
そのため、香港は良かれ悪しかれ両者の「カオス」にならざるを得ず、それが様々な「多様性」を生み出してきたのではないかと思います。
 そうした、相異なる者の要素であった「東洋対西洋」、「中国対イギリス」が消滅した場合、「東洋」と「中国」の論理で片づけられてしまい、「多様性」が重視されなくなってしまうのかもしれません。(これは、香港の今後の活力を占う上で、重要な問題になるのではないかと思ったりするのですが。)

 香港切手が、「中国切手の延長上」にいるよりも、アジアの多様性を盛り込んだ切手をばんばん出してくれた方が、収集家としては楽しいのですが。
2007-07-03 Tue 18:28 | URL | muraki #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
 muraki様
 香港の“中国化”を苦々しく思っている僕としては、今日のコメントのように、考えを同じうしてくれる人がいると嬉しくなります。
2007-07-05 Thu 09:23 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
#801 承認待ちコメント
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2007-07-10 Tue 20:32 | | #[ 内容変更] | ∧top | under∨
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