内藤陽介 Yosuke NAITO
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 香港経由パリ行き
2007-07-14 Sat 08:29
 今日(7月14日)はパリ祭の日です。10日前のアメリカ独立記念日のときは新刊の拙著『香港歴史漫郵記』にちなんで香港からアメリカ宛のカバーを紹介しましたので、今回も平仄を合わせてこんなモノを持ってきてみました。(画像はクリックで拡大されます)

香港スタンプレス

 これは、1848年、上海から香港を経由してパリまで送られたカバーです。

 1842年にアヘン戦争の講和条約として南京条約が結ばれると、広州・厦門・福州・寧波・上海の5ヶ所が開港地となり、各地に設けられた領事館内には郵便取扱所が置かれて、極東とヨーロッパを結ぶ本格的な郵便業務が行われるようになります。これらの郵便物の多くは、中継地点として香港を通過していました。

 これに伴い、イギリス本国も香港における郵便の管理を強化する必要に迫られ、1843年10月17日、それまで現地で暫定的に作られ、使われていた印に代えて、王冠と“香港にて支払済み(PAID AT HONG KONG)”の表示の入った印を本国で制作し、香港に向けて発送。この印は1844年以降、香港の郵便局で郵便物に押されるようになります。

 おなじく1844年には、香港政庁は中国各地の開港地に置かれていた郵便取扱所を硬式に認可し、この結果、中国各地のイギリスの郵便局から差し出された郵便物には、香港を通過する際に、料金が支払済みであることを示す印が押されることになりました。

 今回ご紹介のカバーはその実例です。裏面に押されている各種の印などから判断すると、このカバーは、差出の日付は不明ですが、上海から差し出された後、1848年11月29日に中継地の香港に到着し、そこで“香港にて支払済み”の印を押されています。その後、スエズを経て翌1849年1月19日にマルセイユに到着。さらに、パリまで運ばれたというわけです。

 もっとも、“支払済み”との表示とは裏腹に、このカバーは着払いで送られているため、英仏郵便交換条約(1843年、英仏両国が郵便物の交換と料金精算に関して取り決めた条約)に基づいて、2分の1オンスにつき30デシーム(1シリング相当)の料金が到着時に徴収されています。

 当時の最先端の情報伝達の手段であった郵便ネットワークの結節点として香港を育成しようとしていたイギリスにとっては、まずは、中国各地の開港地から差し出された郵便物が香港を経由する体制を構築するということが重要でしたから、その意味では、香港を通過時にはまだ料金が回収されていない郵便物であっても、きちんとチェックをしたという意味で事前に“支払済み”の印を押し、最終的に料金の精算を済ませればそれで十分と考えられたのかもしれません。

 なお、このカバーについては、拙著『香港歴史漫郵記』でもご紹介していますので、機会がありましたら、是非、ご一読いただけると幸いです。
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この記事のコメント
#821 考えてみれば
消印が受付印代わりというのは、今でもありますね。昨日着払い郵便小包みが来たのですが、やはりローラー印が押されていました。広義に考えれば、今日受け取った「選挙用郵便」(選挙候補者宣伝用で、一定数量内は無料配達)の「選挙」と入った機械印もそうした役目なのでしょうね。
 少し話が変わりますが、会社等でまとめて出すとき支払いをする、「料金後納郵便」のシステムもよく理解されていないかもしれません。この「料金後納郵便」が切手位置に印刷された封筒を、無料郵便になると勘違いして切手を貼らずに差し出したため、相手が不足料を取られたという話がありました。
 その意味で行けば、消印等はシステムの意味が分からないと無用な誤解を招きやすいかもしれません。
2007-07-14 Sat 20:38 | URL | muraki #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
 muraki様

 消印(郵便印)というのは公印で、証示機能があるということは、意外と一般の人は知りませんからねぇ。その辺をきちんとアピールしていれば、いつぞやの郵政民営化の議論もかなり違ったものになったかもしれません。
2007-07-20 Fri 23:48 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
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