内藤陽介 Yosuke NAITO
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 カシミール・プリンセス号事件
2007-08-21 Tue 11:16
 昨日(20日)、台湾の中華航空機が那覇空港で爆発炎上した事件にはビックリしました。まぁ、乗客・乗員165人全員が無事に脱出できたことは奇跡的な幸運といっても良いことですし、テロ事件ではないようなのでまずは一安心というところです。

 ところで、ニュースを聞きながら、台湾がらみで飛行機の爆発炎上ってのは何かなかったかなと思って考えてみたら、こんなネタを思い出しました。(画像はクリックで拡大されます。)

周恩来の帰国

 これは、1977年9月に発行された毛沢東没後1周年の追悼切手の1枚で、バンドン会議から帰国した周恩来を空港で出迎える毛沢東の写真が取り上げられています。何事もなかったかのようにニッコリ笑っている2人ですが、周恩来はこのときのインドネシア行きの途中、あやうく暗殺されかかっています。

 1950年代、中国共産党政権は、“中国”を代表する存在として着々とその国際的な地歩を固めていました。1954年にインドと共同で発せられた「平和五原則」は、内政不干渉の美名の下にチベットにおける共産党政府の苛烈な支配への批判を封じようとするものでしたが、当時の国際世論の大半は、無邪気にその美辞麗句を信じていました。また、同年7月、インドシナ戦争の停戦を決めたジュネーブ会議では、中国は自国の防衛のためにベトナムを南北に分割したうえでその北半部をアメリカに対する防波堤として確保することに成功しますが、国際社会は北ベトナムの犠牲には目をつぶり、中国主導の“平和”を賞賛しています。

 このように、中国の国際的なプレゼンスが高まっていくことに強い危機感を抱いた台湾は、中国に対抗すべく香港で合法・非合法を含めたあらゆる政治工作を展開します。このうち、非合法活動の代表例がカシミール・プリンセス号事件です。

 1955年4月、インドネシアのバンドンで開催される「第1回アジア・アフリカ会議」に出席する代表団のため、中国はインド国際航空の“カシミール・プリンセス号”をチャーターしました。当時の中国民航には中国本土からインドネシアに飛行できる民間航空機を保有していなかったからです。

 このため、北京を出発した代表団は、同月11日、香港でカシミール・プリンセス号に乗り換え、インドネシアに向けて出発することになっていました。そこで、中国国民党の特務機関は、香港の空港に勤めている中国人清掃員の一人を買収し、旅客機右翼の着陸装置の格納庫に発火装置を仕掛けて、事故に見せかけて周恩来を暗殺することを計画しました。

 しかし、計画を事前に察知した中国側は、虫垂炎の手術という理由で周恩来の出発を4月14日に延期。このため、カシミール・プリンセス号は報道記者5名(新華社の記者3名とポーランドとオーストリアの通信社の報道記者)と中国政府派遣団6名の乗客11名と乗員8名を乗せて、予定通り香港を出発。離陸から4時間後に南シナ海のボルネオ島沖の上空で爆発し、16名の死者が出るという惨事となりました。

 事件後、中国外交部は「事件はアメリカ合衆国と国民党特務が周恩来総理暗殺を目的として企てた謀略事件」との声明を発表。香港政庁に対しても、中国側が事前に注意を促していたにもかかわらず、事件を防げなかったことを非難し、事件の徹底究明を求めます。

 捜査の結果、事件にはアメリカ製のMK-7爆弾が使用されていたことが判明。また、容疑者として国民党に買収された中国人が特定されましたが、容疑者は台湾に逃亡。台湾側は容疑者の香港当局への身柄引き渡しを拒否しています。このため、香港政庁は香港で活動している台湾の特務を国外追放とし、事件の決着を図られました。

 なお、1950年代から1960年代にかけての香港は、国共両派によるさまざまな政治工作の舞台になっていますが、そのあたりの事情については、拙著『香港歴史漫郵記』でもいろいろとご説明しておりますので、ご興味をお持ちの方はご一読いただけると幸いです。
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この記事のコメント
#914 飛行場での出迎え
 なぜ毛沢東が周恩来を飛行場で出迎える切手が出来たのか。周恩来との二人三脚を物語ると共に、表面立てられない危機があったことが推測されるということですね。背景に写っている飛行機は中国民航のようですが、当時の写真そのものか少し気になります。(共産主義国の場合、都合の悪い部分を修正することもありますので。)
2007-08-23 Thu 12:41 | URL | muraki #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
 muraki様
 写真の修整ということでいえば、僕はむしろ、他に写っていた人物がいたのに、修正されているのかもしれない、とそっちの方に関心が向きますね。今度、時間がある時にでも、元ネタの写真を探してみます。
2007-08-27 Mon 12:03 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
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